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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。

 
  • 子供のセカイ。95

    しかし朝になってみたら、王子は順調に回復中だと聞かされ、さらに耕太の部屋へ迎えに来てみたら、この通り普通に元気な様子でいたのだ。確かに喜ばしいことなのだが、美香としてはちょっと納得がいかなかった。耕太は、なんてことない、というように、肩をすくめて答える。「オレが倒れてたのは、腹が減りすぎて死にそうだったから。昨日ホシゾラさんに飯食わせてもらったから、もう余裕だっつーの。」「でも、傷だらけだったじ
    アンヌ さん作 [371]
  • 子供のセカイ。94

    一気に場の空気が和み、王子はホッと息をついた。ひとしきり笑い終えると、ジーナは目尻の涙を拭いながら笑って言った。「じゃあ今まで、必死で痩せ我慢して隠してきたのか!それは……くくっ!悪いことをしたな……。」「全然悪く思っているように見えないんだけど。」ふて腐れた様子の王子にもう一度近づいて、ジーナはその頭をポンポンと撫でた。「いや、しかしよく頑張ったな。それは本当にすごいと思うぞ。」「……別に。ジ
    アンヌ さん作 [344]
  • 子供のセカイ。93

    ジーナはなんとか気持ちを鎮めながら、ここが“生け贄の祭壇”であること、気を失った美香と王子を担いで領域を渡ったこと、ホシゾラや医者に出会い、彼らに助けられたことなどを話した。そして美香が今、本来の目的を果たすために儀式場に行っていることを。しばらく黙って話を聞いていた王子は、やがてぽつりと言った。「ジーナが来てくれて嬉しいけど……あなたは、領域を越える時、犠牲として魔力を失ったんだね。」ジーナは
    アンヌ さん作 [352]
  • 子供のセカイ。92

    「……すまなかった。」ジーナは心から謝罪した。厚い毛布の上にだらりと力なく置かれている王子の白い手を取り、両手でぎゅうっと握り締めた。王子の腕には包帯が巻かれ、覆いきれていない部分からは生々しい刀傷が見えている。ジーナはその傷をいたわるようにそっとなぞった。痛みさえ感じないほど深い眠りにあるのか、王子はやはりぴくりとも動かなかった。泣きそうになっている自分に気づき、ジーナは王子の手の甲を額に押し
    アンヌ さん作 [294]
  • そんなある日。

    雨の中をくぐり抜けて虹の世界へとやって来たどうせなら君と来たかったどうせならあなたと来たかった確かな絆を結ぼうとぼくは一生懸命手を伸ばす気まぐれ日替わり気分次第君はそっぽを向いたりあなたは他の誰かに笑いかけたりで忙しい仕方ないからぼくは一人でここへやって来たとても退屈つまらない虹がどんなに美しくても君と一緒じゃなきゃ楽しくないあなたがいてくれないと始まらないでも逆を言うなら君と一緒なら楽しいんだ
    よーこ さん作 [371]
  • 子供のセカイ。91

    美香がホシゾラに手伝ってもらい、二人がかりで衰弱した耕太を運んでいる間、ジーナは何も知らずに、眠っている王子の傍らの椅子に腰かけていた。王子の部屋は、薬品独特の匂いに包まれていて、ジーナは思わず鼻にしわを寄せる。ここへ来る前に医者とすれ違い、少し話をした。頬のこけた眼鏡の男は、薄汚れた白衣を来ていて、あまり有能そうには見えなかった。王子の現状を厳しく問いただすジーナに対してさえ怯えていたし、しど
    アンヌ さん作 [383]
  • 水の気持ち

    水それは生命の源であったり空から落ちるしずくであったり海を作っていたりする何よりもやわらかくてこの手に乗せてはおけないけど指の隙間からこぼれたり瞳を清らかに覆ったりするそれが私は少しだけ好きだったりする水水はどんな気分だろうか何人にも阻まれない水誰にも救い上げてもらえない水すべてを押し流す水はどんな想いで存在しているのだろうか深い森の岩間から湧き出る澄んだ水はぷかぷかと浮かぶ空き缶やビニル袋を背
    アイ さん作 [327]
  • 子供のセカイ。90

    (あれ…?どうしたの、かしら…?)体に力が入らない。美香はライオンから離れようとして、逆にライオンにぶつかるように円の中に倒れ込んだ。後ろからホシゾラの悲鳴が聞こえた。ライオンが上からじっと美香を見下ろしているのがわかる。今や美香と番人を隔てるものは何もなかった。やろうと思えば、番人は美香の首の骨を噛み砕くこともできたし、その太い前足で頭を踏み潰すことだってできた。危険だとわかっているのに、体は
    アンヌ さん作 [353]
  • 子供のセカイ。89

    急に番人の目から、美香を圧倒するような力が消え、美香はホッと肩の力を抜いた。「ありがとう、ございます。」褒められたようなので、一応お礼を言っておく。番人はのそりと起き上がると、赤黒い円の淵ギリギリまで、美香の方に近づいてきた。「美香とやら、前へ来い。」「……。」「どうした、まだ我を恐れるか。せっかくそなたの言う条件とやらを呑んでやろうと思ったのに。」そこまで言われれば、近づくより他にない。だが、
    アンヌ さん作 [416]
  • 子供のセカイ。88

    美香の胸に、ふつふつと怒りが沸き上がった。「……あなたは、そんなことのために覇王と手を組んだっていうの?」声が震えないように必死で抑えた。番人はしばらく黙っていた。しかし、小娘の言うことにこれ以上怯む気もないらしく、退屈そうに床の上に寝そべりながら答える。「そうだ。さっきからそう言っているであろう。」「あげるわ。」主語も目的語もない台詞に、番人はいぶかしげに顔を歪めた。「なんだと?」「あげるって
    アンヌ さん作 [339]
 
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