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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。87
どうやら石舞台から降りなかったのは正解だったらしい。舞台の下で待機していたホシゾラが、慌てて美香の後ろに回りながら叫んだのだ。「舞台を降りちゃダメよ、美香!契約違反で、番人が外に出てきてしまうわ!」番人が悔しそうに唸ったのが、ホシゾラの言葉が正しいという証拠だった。ライオンによく似た形をした番人は、背中の翼をばっさばっさと羽ばたかせながら、赤い円の中をうろうろしている。どうやら、そこから出られな
アンヌ さん作 [348] -
子供のセカイ。86
ライオンがしゃべった……が、まあそれは良しとしよう。ここは“子供のセカイ”なのだ。光の子供が想像したものなら、何があってもおかしくない。それより、「久しぶり」だと笑われたことの方が、美香には驚きだった。美香にはライオンの知り合いなんていないし、こんな恐ろしげなものを想像したことさえない。(もしかして、私を騙そうとしているのかしら…?)ホシゾラの話から聞く限り、十分あり得る。こいつは覇王の手下なん
アンヌ さん作 [326] -
子供のセカイ。85
美香が呆然と見いっている間に、ホシゾラは部屋の四隅の松明に火を灯していった。闇に沈んでいた部屋が、ふわりとオレンジの光に包まれた。「美香、石舞台に登ってちょうだい。」美香は、小さな階段を登って、石舞台の上に立った。そこには何もなかった。ただ、ホシゾラの言った通り、血のようなもので描かれた、かすんだ赤黒い円が石舞台の真ん中辺りを広めに囲っている。「円の中には入らないで、少し距離を取って。……そう、
アンヌ さん作 [360] -
子供のセカイ。84
「番人はどうして入り口を開かなくなったの?犠牲を払えば開いてたんでしょ?そこに、覇王が関係しているの?」美香の推測は、あながち間違いではないらしかった。ホシゾラはこくりと頷いた。「覇王は番人を手なづけてしまったのよ。そして彼らに言い渡した。どんなことがあっても、決して扉を開いてはいけないと。」「じゃあ、私が犠牲を払っても意味ないんじゃ……?」「いいえ、意味はあるわ。あなたは光の子供だもの。私たち
アンヌ さん作 [343] -
子供のセカイ。83
「これから私たちは、“生け贄の祭壇”の中心部に向かうわ。そこには儀式を行うための部屋があって、丸い円が描かれた石の舞台があるの。あなたはそこに立って、私の合図を待ってちょうだい。」ホシゾラは淡々と説明した。美香はホシゾラに聞いた。「合図の後には、何をしたらいいんですか?」「……番人が現れるわ。あなたは、その番人と取り引きをしなければならない。うまく話をして、命を取られるようなことだけはしちゃダメ
アンヌ さん作 [346] -
子供のセカイ。82
それに、ジーナが一緒に来ることになれば、きっと美香が自ら危険に飛び込もうとするのを、黙って見過ごしたりしないだろう。美香は、そんな想いを持ってジーナに言った。しかしジーナには、それが、王子がこんな状態になってしまったことへの責め句に聞こえた。「……わかった。私は、王子と共にここで待とう。」ジーナは掠れた声で早口に言うと、部屋を出ていった。王子の所へ行ったのかもしれない。美香は、不意にその背中を追
アンヌ さん作 [344] -
子供のセカイ。81
ホシゾラは、美香の表情が和らいだのを見て、驚愕した。てっきり恐怖に顔が青ざめ、震え出すかと思っていたのだ。しかし、怯えを露にしたのは最初の一時だけで、すぐに美香は自分の心を取り戻した。(この子は、死を恐れないのかしら。)美香の年なら、ちょうど生と死について深く考え始める時期で、その恐怖に対してはもっとも敏感なはずだった。だが美香は、迷いながらも、確かに恐怖を乗り越えてみせた。まるで彼女の中に誰か
アンヌ さん作 [354] -
ネバーランドの終焉
桜の花が散る時に、一緒に消えておけばよかったんだ。そうすれば、今、こんな想いをしなくてすんだのに。あの家出の夜に、思いっきり泣き叫べばよかったんだ。そうすれば、今、泣くに泣けない気持ちを押し殺さずにすんだのに。世界は残酷だ。それをわかった上で生きている人間は、もっと残酷だ。残酷で、強い。強いから生きていける。寂しさを殺す術を知っているんだろう。傷つけられず、集団の中で、うまくやっていく自信がある
アイ さん作 [414] -
子供のセカイ。80
「私は、謝らなければいけないわ。本来なら私たちが、“闇の小道”から光の子供を助けなければならないのに。」覇王……。呟いたホシゾラの声に、隠しようのない憎悪がこもっていて、美香はやっぱり、と眉を寄せた。「覇王が入り口を塞いだことは、ジーナから聞きました。あなたたちのせいなんかじゃないわ。」ホシゾラの責任ではない。元凶はすべてあの恐ろしい男にあるのだ。美香の表情に影がさした。そして、それは覇王を生み
アンヌ さん作 [343] -
星への祈り
光を吸い込んで溶けた願いはあの星雲の中にあるのだろう地上に火を灯して本当の空良を失ったヒトはそれでも彼らにたくして祈ることをやめぬたくさん叶えてきたはずだったヒトは足を使わずして地面を動き空まで飛んでみせたというのに未だ叶えたいことがある願いがある祈りがあるあのいくばくかの星空になにが眠るというのか未だヒトを魅了してやまぬ小さな砂粒ほどの光がなんの証しになるというのか今日もヒトは空良を見上げて相
アイ さん作 [336]