トップページ >> アンヌ さんの一覧
アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
-
子供のセカイ。70
耕太。美香は、今まですっかり忘れていたことに愕然とした。罪悪感が手足の中を気味悪く這う。美香は言い訳をするように叫んだ。耕太がまだ闇の中に閉じ込められたままなの!それに舞子も助けなきゃいけない。だからちっとも大丈夫なんかじゃ――。「大丈夫よ。目を開けて。」美香。ハッと目を見開く。そこには石でできた高い天井があった。「……あ…… 、」「気がついたようね。」静かな声が石造りの部屋にこもって響いた。美
アンヌ さん作 [375] -
子供のセカイ。69
美香は怖くなってジーナにすがりついた。「王子は生きてるよね?このまま死んだりしないでしょう!?」「…一刻も早い手当てが、必要だ。」ジーナはそれだけ言うと、背に回していた布袋をおろし、また以前のように軟膏の入った小箱を取り出した。内心、王子の体質に舌打ちをしたい気分だった。魔法に弱い王子は、美香のようには助けられない。手遅れにならないといいが……。しかし美香にわざわざそれを告げて不安にさせるほど馬
アンヌ さん作 [362] -
海の少年
お前のその悲しみも痛みもすべて波がこの海が洗い連れ去ってくれるから。海の見える町に住む少年はそう言って私を慰めた。海のように穏やかなこえで。塩の香りの染み着いた腕で私を包み込み、頭を撫でてくれた。ああ、本当だ。海が何もかも癒すというのは本当なんだ……。海に抱かれた私はそう思って泣いた。私も海になったかのようだった。
アイ さん作 [340] -
彗星のように
彗星のように飛んだ誰の願いも飛び越えて黒のカーテンを引き裂いて青白い蝋燭の炎のように燃え立ちながら脇目も振らず静寂を身の内に秘めただ一心に叶えたかったのは君の願いただそれだけだから僕は今を飛ぶ明日には叶うように過去を塗り替えれるように君の涙をこれ以上見なくてすむようにだから彗星のように、僕は今、この広い闇空の中を飛んでいる。
アイ さん作 [331] -
幸先
君の産声激しく命を泣き叫んでただわけもわからずにこれから起こるであろう君の身にふりかかるであろう鳥肌の立つような災難と羽毛のようにやわらかな温もりどちらを危惧して泣いたのかただ死へと進む一方の道をどれだけ優しく孤独に歩いてゆくのかそんなことは今はどうでもよくてただ君の寝顔を眺めながら生まれてきてくれてありがとう……
アイ さん作 [309] -
あなたの嘘
あなたが嘘をやめないのはあなた自身を守るためあなたが嘘をやめないのは周りのみんなを守るためあれあれ不思議でわでわそれは紛れもない真実だということになりませんか?
アイ さん作 [329] -
忘れないための詩
一人がいなくなっても空間は埋まるいつかいつか何事もなかったかのようにあの子の空白は埋まるだろうか多くの涙をかき集めてしばらくは無人のままぽっかりと空いていた空間ぴたりと張られた水の膜のような空間やがて陽の光に干上がった時誰も叫ぶことなく優しく優しく埋まるのだろうか……
アイ さん作 [316] -
子供のセカイ。68
「…なっ!お、お前は、」白衣の男が続きを言い終わる前に、ジーナは男の頭をすごい力で殴り飛ばした。さっきまで男が美香の頭を殴っていたひ弱なパンチとは大違いの一撃だった。ジーナは、凄まじい表情で倒れ伏した男を睨み下げた。「下衆が。子供に手をあげるなど……恥を知れ。」意識のない男の脇腹にさらに蹴りを入れると、ジーナは美香の元へ駆け寄った。美香はぐったりと地面に座り込み、頭を押さえてうずくまっていた。痺
アンヌ さん作 [331] -
子供のセカイ。67
美香は呼吸が苦しくなった。視界が涙で滲んだ。どうしよう。どうしてこんなことに……。胸が一杯になって、強く強く王子の体を抱き締めて肩口に顔を押し付ける。痛いはずなのに、王子は目を覚まさなかった。ざり、と音がして、美香はハッと顔を上げた。いつの間にか美香たちの背後に、見知らぬ白衣の男が立っていた。丸眼鏡が太陽をきらりと反射し、その奥の瞳は見えない。その男は明らかに先の奴らとは雰囲気が異なっていた。七
アンヌ さん作 [344] -
子供のセカイ。66
暴力は時として人を狂わせる。特に大人数で無抵抗な一人を囲む場合はなおさらだ。男たちは快感に酔っていた。痛みに声を上げる王子の体を、これでもか、これでもかと踏みつける。柔い少年の骨がボキッと嫌な音を立てて折れた時、王子は叫んだ。悲痛な叫び声は、男たちをますます暴力へと駆り立てた。男たちは夢中なあまり気づかなかった。美香を拘束していた男が何かを見て、悲鳴を上げて逃げ出したことも、迫ってくる巨大なもの
アンヌ さん作 [341]