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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。

 
  • 子供のセカイ。39

    恐る恐る顔を上げると、女がへなへなと座り込んだ所だった。うつむいた女の尖った顎に沿って、ますます大量の涙が滑り落ちているのを見て、美香は思わず呆れた。この人、泣き上戸なのかしら…?「そうか……そうか、良かった……!」女は嬉しそうに笑った。笑いながら涙を流して、やがて両手に顔を埋めて「ううっ」と唸った。美香は困惑し、どうしよう、と迷ったが、とりあえずは地面にうつ伏せに横たわったままの王子の体を転が
    アンヌ さん作 [347]
  • 子供のセカイ。38

    美香は首を圧迫され、弱々しいあえぎ声を上げた。「な、にを…っ。」地面から足が三十センチくらい浮いている。美香は女の腕を引っ掻いたり足で蹴りつけたりして暴れたが、女はびくともしなかった。女の顔がゆっくりと近づいてきて、美香はその目の色に気づいてゾッとした。人を睨み殺せそうな激しい目付きだった。女は凄みのある低い声で囁いた。「……王子、とそう言ったのか?」「…っ。」「お前たちは先程の歌を知らないと言
    アンヌ さん作 [377]
  • 子供のセカイ。37

    女はすぐに美香たちの後方にある泉に近づいて小袋に水を入れると、王子を追い払って美香の服をまくり、腹に直接ひんやりとした水袋を押し付けた。「お前は?」ぐるりと百八十度王子の方に振り返った拍子に、女のフードがパサリと落ちた。黒髪に黒い目、それも漆を塗ったような濃い黒だった。顔立ちは東洋系で、大きな瞳に分厚い唇をしていたが、鼻は小さく、彫刻で彫ったような切れのある美しい顔立ちをしている。肌は浅黒く、よ
    アンヌ さん作 [346]
  • 子供のセカイ。36

    影がヤシの木の後ろからゆっくりと現れた。二人はまずその身長の高さに驚いた。裕に百七十センチは超えている。そして、ピンク色に見えたマントは、実はカーキ色だった。二人共リリィへの恐怖により目のレンズが歪んでいたらしい。マントに全身をすっぽりとくるみ、フードを被っていて、顔がよく見えない。ただ美香の読み通り、女だという点については間違いないようだ。男にはない繊細な鼻や顎のライン、肩幅の狭さからそのこと
    アンヌ さん作 [383]
  • 子供のセカイ。35

    しばらくそのままでいると、ザザッと砂を踏み荒らすような音が聞こえた。二人はびくりと身を固くし、振り返る。二人の背後にはヤシの木がいく本か生え、乾いた木肌が薄闇の中、微かに浮かび上がって見えた。その太い幹の後ろに、服の裾がはためいた。誰かいる。美香と王子はしっかりと抱き合い、同じ恐怖が背中を這い上がるのを互いに感じた。服の色は、心なしか、ピンクがかっているように見えたのだ。リリィのワンピースもピン
    アンヌ さん作 [369]
  • 僕の天使 君は天使

    君の背に羽が見えたこと僕はいつまでも忘れない救いようもない僕を救ってくれた君は名もなき小さな天使断り下手でいつも困った笑い顔で人に親切をし続けるから君は誰からも好かれたんだねこんな僕にまで目を留めて優しい息吹で僕の凍てついた心を溶かしてくれた寒くないように寄り添ってくれた不器用な優しさで笑いかけてくれたちゃんとねわかっていたんだよ感じていたんだよでも愚かな僕は君にまともにお礼を言うことさえしなか
    アイ さん作 [347]
  • わたしたちには歌がある

    飛んでみたい羽はなくとも潜ってみたいエラはなくとも走ってみたい速くはないけど歌いたい下手だけど音色を刻むのはどの動物にだってできるけどこんなにもはっきりした意味を乗せて歌えるのは人だけだから飛べなくても潜れなくても速く走れなくてもわたしたちには歌がある空気を震わせ弾ける言葉想いはふわりと風に乗って優しい音色がすべてを運ぶだからこんなにも綺麗なんだって泣きたくなるんだっていつか聞いたことがある気が
    アイ さん作 [325]
  • あたしは行く。

    苦しいほどの覚悟がこの胸を押すから叫び声を呑み込んで進むんだ他に行く道なんてないあたしはこの道しか知らないやがて道の先で出会うことになっても道の途中で別れる羽目になっても大丈夫よ怖くても死にたくなってもあたしは前へ進むからいつか知った真実この道の意味走り続ける意味老いに向かってるだけだとしても止まることなんて許されないからだったら思い切り走って明日を迎えに行きたいと思う時々振り返って優しい光に目
    アイ さん作 [365]
  • 子供のセカイ。34

    だいぶ時間が経ったと思っていたのに、まだ辺りは薄暗かった。しかし朝が近づいているのだろう。空は濃い群青色に澄み渡り、星は優しい光をわずかに放っている。美香は心配そうに顔を覗き込んでいる王子に気づき、固まった表情をほぐすようにぎこちなく笑った。「……王子。」「よかった、気がついた。いきなり倒れたからびっくりしたよ。大丈夫?」「ええ。ちょっと疲れただけ……。」そう言って起き上がりかけた美香の肩を王子
    アンヌ さん作 [410]
  • 子供のセカイ。33

    それからどうやって領域を越えたのか、あまりよく覚えていない。ただこの忌まわしい場所から早く離れたくて、美香は傷ついた体を駆使して想像の力を使いまくった。ぐったりとした王子の体を宙に浮かせたり、煙突のてっぺんまで直通の歩きやすい階段を作ったり……。そして気づいた。ここでは想像の力は無限の力ではないのだと。美香は力を使えば使うほど何も考えられなくなっていき、瞳が虚ろになっていくのが自分でもわかった。
    アンヌ さん作 [378]
 
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