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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。32
これが最後の質問だ。そう心に決めて、美香は重い口を開いた。「……リリィ、殺したいほど叔母さんが憎かったの?」「……?憎かったよ?だって私をいじめるんだもん。」「……じゃあなぜ自分で戦わないの?王子を操ってこんな酷いことをさせて。胸が苦しくなったりしないの?罪悪感はないの?」リリィの答えは単純明快だった。「ないよ。だってこの人さっき自分で言ってたじゃない。自分は王子だから、魔女にやられちゃうんだっ
アンヌ さん作 [390] -
愛しい光
この光もあの光もあなたや私を慰めるためにあるのならもう光を恐れるようなことはしなくていいように思うんです照らし出すものは怖いけど自分の醜さを知ってしまうから怖いけど光はいつも温もりだから怖さの分だけ優しさに触れることができるでしょう?だから、ねえ光を恐れないで闇に逃げ込んだりしないできっとそれは勘違いだから闇のほうが穏やかなことは確かだけど闇が優しいことなんて一度だってあるわけないんだから何もな
アイ さん作 [458] -
子供のセカイ。31
「あ……、」ありがとう、と言うべきなんだろう。美香は王子のお陰で左腕を失わずに済んだのだ。しかし、実際に目の前で奇妙な姿勢でうつ伏せに横たわり、徐々に広がっていく血の池に沈んでいる魔女の死体を眺めていると、とてもそんなセリフは言えなかった。ただ吐き気が込み上げた。おぞましく、汚ならしい。全てすべてスベテ。魔女も王子も剣も火かき棒も美香自身さえも――。「美香ちゃん。」王子の心配そうな声でハッと顔を
アンヌ さん作 [390] -
子供のセカイ。30
美香が腹を押さえて体を丸めると、メガーテはその肩を踏みつけた。メガーテは可笑しそうな表情で、美香が混乱と痛みにあえぐのを見下ろした。「私を殺そうとしたのかい、小娘。」その奇妙に静かな声で、美香は急速に頭が冷えていった。冷静になった途端、怒りに我を忘れた自分が恐ろしく思えた。憎しみ。なんて怖い感情だろう。いくら“子供のセカイ”の住人とはいえ、美香は今、人を一人殺そうとしたのだ。「だが惜しかったね。
アンヌ さん作 [539] -
子供のセカイ。29
「なっ…!」震える手で切れた頬に触れ、指先に付着した赤い液体を見て、メガーテは髪を逆立たせた。「小娘が、一体何を…!」「……!!」美香は不意にわかった。ホッとすると同時に、どっと力が抜けるような事実だった。光の子供の能力は、ここでも失われてはいなかったのだ。想像の力。今まで試してみもしなかった事が悔やまれた。もしもっと早くに気づいていたら、山で大怪我を負うこともなかったろうに……。一方魔女は、美
アンヌ さん作 [461] -
子供のセカイ。28
「あ、あの……!」情けないほど震えた声しか出てこない。美香は懸命に説明しようとしたのだが――自分が何を説明しなければならないのか全くわからないことに気づき、愕然とした。恐らくはリリィの叔母さんであろうその女性は、何も言わずにつかつかと近寄ってきた。そして美香の前を通りすぎたかと思いきや、暖炉の脇に掛かっていた真鍮のお玉をひっつかむと、いきなり振り返って美香に向かって降り下ろした。「っ!」持ち前の
アンヌ さん作 [520] -
子供のセカイ。27
「……その叔母さんっていうのはどこにいるの?」珍しく不機嫌な様子の王子が聞くと、リリィはハッと肩を強張らせた。「いけない!早く準備してここから逃げなきゃ!今叔母さんは街に行ってて、もうすぐ帰ってくるの。」リリィが大急ぎで寝室の方へ駆けていくのを、王子は複雑そうな顔で見送った。美香はそれを見咎めてムッと眉を寄せる。「何よ。まだリリィが魔女なことに不満があるの?」「……領域を越える時、あの子の魔法の
アンヌ さん作 [412] -
子供のセカイ。26
(それにしても、これはどういうお話なのかしらね…。)美香が考えあぐねている間に、王子は女の子の横に膝をついて尋ねた。「何を作っているの?」「ん、傷薬!」「へえー、すごいねえ!」王子が感心して頷いている横に、美香も座り込んだ。「あなた、名前は何て言うの?」「リリィだよ。魔女っ子リリィ!」リリィは真っ直ぐに切り揃えた前髪の下の丸い瞳を、にっこりと細めながら言った。「「魔女!?」」美香と王子はすっとん
アンヌ さん作 [412] -
子供のセカイ。25
「君がここから出たいなら、連れ出してあげてもいいけどねえ。だけど、君は何か大事なものをなくすことになるよ?」女の子はきょとり、と目を丸くしたが、やがて精一杯真面目な顔をして大きく頷いた。「うん、わかった。何かをもらうなら何かをあげなきゃいけないもんね。」美香はびっくりしてしまった。こんな小さな子供でさえ「犠牲」の意味をちゃんと理解している。それに比べ自分は……。「うん。じゃあ、一緒に行こうか。…
アンヌ さん作 [415] -
子供のセカイ。24
林の中も野原と変わらず、さんさんと日の光が降り注いでいて美しかった。時折風にざわめく木の葉が、光を踊らせて草の生えた地面にまだら模様を織りなす。もくもくと煙が立ち昇る方角に向かうと、一軒の小さな家が見えてきた。レンガ造りの一階建てで、屋根には煙突が、丸い窓には曇りガラスがはまっている。家全体が錆びた赤色をしていて、レンガの隙間を何かの植物の蔦が這っていた。(可愛いおうち……。)十二歳の少女らしく
アンヌ さん作 [465]