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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。23
美香は足を使い慣れない王子を気遣いながら、煙の見える方角に向かって歩き出した。美香はふと気になっていたことを尋ねた。「領域のことについて聞きたいんだけど、」「うん?」「あの山にはあなたと同じように山姥(やまんば)のおばあさんも暮らしてたわよね?一人の想像につき一つの領域、というわけじゃないのね。」「そうだね。山姥さんも僕と同じような風景の場所とセットで想像されたから、どっちの要素も含んで一つの領
アンヌ さん作 [405] -
子供のセカイ。22
「こんなのおかしいわ。犠牲がなきゃ何もできない世界だなんて……。」しかし、王子は不思議そうに美香を見た。ゆっくりと口を開く。「これが普通だよ。なにも“子供のセカイ”だけが犠牲を必要とするわけじゃない。どこの世界だって、何かを成すには犠牲がつき物なんだ。」「そんなことない。“真セカイ”にはこんな法則はないもの。」「……君はまだ子供だから知らないだけさ。犠牲は要るんだよ。どんなことにも。」美香が反論
アンヌ さん作 [383] -
望むものは、自由
なぜこれほどまでに自由を渇望するのか解放されたくて解き放たれたくて自由になりたくてきっと監視のせいだすべての行動が見張られる世界モニター越しに見ている人の目「今日はアイツが」「知ってる?アイツさ」「ああ、アイツアイツ!」ウザイんだって○○とキスしたんだって眼鏡変えたんだって……ダサいやつに怖かった人の心は見えないから自分の評価が気になっていつも私を縛りつけるほら今日もまたうなじに走る緊張の痛み動
ココロ さん作 [479] -
子供のセカイ。21
やけに嬉しそうな様子の王子の手をほどきながら、美香は疑わしげに尋ねた。「一体どういうことなの?」「僕たちは領域(テリトリー)を一つ抜けたんだ。光の子供である君なら簡単にできることだけど、僕は……いや、実際できたんだ。きっと不可能じゃなかったんだ、最初から!」今にも踊り出しそうな様子の王子だが、美香には意味不明だった。ちゃんとあの時、“子供のセカイ”について老婆の話を聞くべきだったかもしれない。そ
アンヌ さん作 [423] -
子供のセカイ。20
目を開けると、月は地面と平行に空を飛んでいた。たまに降下し、また水平になり、ずっと繰り返しだ。どうやら美香がいた山は、そうやって段々が連なるそれなりに高い山だったらしい。とても一人では降りられなかった、と美香は思わずため息をついた。やがて地面が見えてきた。月はふわりと地面に落ちると、次の瞬間にはスッと離れていった。美香は自分がいつの間にか草の上に座り込んでいるのに気づいた。傍らに月と共に浮かんで
アンヌ さん作 [376] -
子供のセカイ。19
気づけば美香は王子に抱きかかえられて空に浮いていた。体の痛みはまるでなく、驚いてあちこち見てみると、傷どころか傷を負った跡さえも消えていた。「あ、ありがとう……。」王子のお陰に違いない。美香が呆然としながらもおずおずとお礼を言うと、王子は優しくにっこりと微笑んだ。「気にしないで。それより、君、とても綺麗な顔をしてるね。僕みたいに。」「…はぁ……?」「名前は何て言うの?」美香は呆気に取られてしばら
アンヌ さん作 [486] -
子供のセカイ。18
「う…、」目が覚めると、すぐに浮遊感が襲ってきた。そこは地面ではなかった。ガケの際、もろい枯れた木々の根が絡まりあった所に、美香は丸まって倒れていた。痛みが全身を支配していて、体がまったく動かなかった。気温はぐんと低くなっていた。闇がずいぶん濃くなっている。どのくらい気を失っていたのだろう。ミシ、と根が音を立て、美香は思わずぞっとした。目だけ動かして眼下を見下ろすと、十メートルほど下にまた枯れ木
アンヌ さん作 [558] -
子供のセカイ。17
30分ほども歩くと、美香はさすがにうんざりしてきた。地面が見えている場所をいちいち探しては、枝を避けて進むようになった。回りくどいやり方だが、実際に足を傷つけるよりはまだマシだ。美香は老婆の忠告どおり、絶えず空を見てはその『大きな月』とやらを探した。しかし、人の手のように覆い被さる枝のせいか、そんなものはちらとも見えてこない。「……。」空が群青色に染まり始めた。夜が近づいてきたのだろうか。ほとん
アンヌ さん作 [460] -
子供のセカイ。16
老婆は言った。「この小屋を出たら、すぐには山を降りずに、空を見上げて大きな月を探しんさい。その月に向かって、『助けて!』と叫ぶんじゃ。そうすれば助けがおりてくる。」美香はびっくりしてしまい、しばらく返事ができなかった。ここが山の一軒家だったという事実にも驚かされたが、月についての話はより奇妙だった。一体どういう事だろう。“子供のセカイ”とは、一体どのような世界なのか――。「おばあさん。」「うん?
アンヌ さん作 [425] -
子供のセカイ。15
老婆が塗る軟膏は、鼻がツンとするようなきついにおいがした。美香は傷口が痛むのを我慢して、ずっと唇を噛み締めていた。「よし、終わった。」老婆の温かい手にぽんっと肩を叩かれ、美香はようやく顔を上げた。涙は止まっていたが、まだ自分の状況をうまく老婆に説明する自信はなかった。「おばあさん……。」「なんじゃ。」「“子供のセカイ”から“闇の小道”に行くことは可能なの?」老婆はしばらく何も言わなかったが、やが
アンヌ さん作 [501]