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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。7
耕太は鋭い光を見た。太陽を反射してきらめく刃が、ものすごいスピードで眼前に迫ってくる…。ピタッ。「……っ!」ハッと息を吐いて、耕太は石段の上にがくりと膝をついた。覇王の剣は、耕太の鼻先ギリギリでピタリと止まっていた。「……うまく行ったか、舞子……。」見上げれば、覇王は空を仰いで嬉しそうに微笑んでいた。その顔は美しかったが、どこか残忍だった。覇王はニヤリと笑って耕太を見下ろす。「貴様、命拾いしたな
アンヌ さん作 [449] -
子供のセカイ 6
耕太は意外にしっかりしていた。自分が覇王に敵わないことをちゃんと理解した上で戦いに望んでいたのだ。本来の目的を見失っていなかった。「美香!今のうちに早く行け!」覇王の剣技をすれすれの所で避けながら耕太が叫ぶ。美香はびっくりして耕太を見つめたが、すぐに頷いた。「わかったわ!耕太、これっ!」先ほど盾を想像した小石を放り投げる。耕太はパシリと石をつかむと、「くらえ!」と、石をどろどろに溶けた大きな溶岩
アンヌ さん作 [430] -
叫ぶ意味
どんなに叫んだって通じない想いは心にそっと封じ込めるんじゃなくてあきらめるんじゃなくてただがむしゃらに最期まで伝わる必要なんてないんだ叫ぶことに意味があるんだ未来永劫に届きはしないけど克服することはできないけどあたしは一人だって孤独はいつも恐ろしくて耳をふさいでうずくまりたくなるけどでもその状態でも構わないから叫ぶことだけはやめないで悲しみを叫んだって痛みを叫んだって絶望を叫んだって人が寄って来
アイ さん作 [398] -
子供のセカイ。5
舞子は走っていた。速く、もっと速く!美香が気づく前に、よい場所を見つけなければ。舞子が“子供のセカイ”へ入るための入り口を作るのによい場所を――。「舞子ー!」舞子はハッと肩を縮めた。もう気づかれた!続いて耕太が叫ぶ声も聞こえる。二人分の足音が、こっちに向かって駆けてくる。舞子は山奥の神社へ続く石段を駆け上がった。ハァハァと息が切れる。何度も立ち止まって息を整えたが、この調子では見つかってしまう…
アンヌ さん作 [455] -
子供のセカイ。4
その日の帰り道は、美香たち姉妹に耕太がくっついてきた。「……何か用なの?」「は、別にいいだろ、一緒に帰ったって。」耕太は嫌そうに顔をしかめる美香の隣を平気で歩く。舞子は前をちょろちょろしては、道端にしゃがみこんで花をつんだり、石ころを蹴とばしたりしていた。「舞子、石を車道に置いたままにしないで。車が迷惑するでしょ。」「べー!」舞子は舌を出すと、タタッと走っていってしまう。美香はため息を吐いて石を
アンヌ さん作 [443] -
子供のセカイ。3
昼休み。坂下小学校の校庭はにぎやかな声に満ちていた。美香はただ一人、誰もいない大きな鉄棒に寄りかかって、グラウンドで遊ぶ三年生のグループを眺めていた。舞子を見つけるのは容易かった。みんなについて行こうと、必死で友達に話しかけてはにこにこしている、桜色の頬をした女の子だ。円陣バレーをしているのだが、すぐにドジをしてはみんなに笑われている。「よォ。」不意に声を掛けられ、美香はびくっとしてそちらを見た
アンヌ さん作 [468] -
子供のセカイ。2
お姉ちゃんはなんにもわかってないんだ。舞子は毛布の中で小さく呟いた。薄暗い部屋。窓からカーテンを透かして、街灯の光がぼんやりと入ってくる。美香は上のベッドで眠っていた。規則正しい寝息が聞こえる。美香は寝つきがいい。だが舞子は夜眠れない。いつだってそうだ。なんだって器用にこなして誉められるのはいつも美香の方。ドジな舞子は可愛がられはするが、決して誰かに頼られることはない。「……。」わたしの才能は、
アンヌ さん作 [490] -
子供のセカイ。
「それ」がやって来たことは、二階から聞こえてきた悲鳴ですぐにわかった。美香は風呂上がりで、ちょうどパジャマに着替え終えた所だった。天井から聞こえる妹の悲鳴、何かが這いずり回る物音。「また、あいつらだ!」思わず舌打ちすると、美香は洗面所を飛び出した。「あら、どうしたの?」階段の所で、お母さんがびっくりしてこっちを見ている。その脇には、獰猛な目つきをした一匹のライオン。美香は引っつかんできたドライヤ
アンヌ さん作 [611] -
愚痴愚痴タイム。
忘れられない記憶。嫌なのに、忘れたいのに。私の脳みそは意地悪で、そう思うたびに強く強く刻みつけて忘れさせまいとする。悲しみを背負って生きられるほど強くはなかった。人目をはばからずに生きられるほどたくましくはなかった。弱い自分。忘れたいのに、もう嫌なのに。何回頭をぶつけてみても、別の用事でいっぱいにしてみても。襲いかかってくる、私のこれまでの歴史、残酷な過去。今は過去の延長線上にあるから。過去をな
アイ さん作 [384] -
past
眼差しがとらえる過去綺麗な綺麗なオブラート私だけのものだから正確さは必要ない美しければそれでいい時には傷を癒すため時には前に進むために両手でやわらかく包み込んだ私だけの大切な思い出……周りからは違って見えたことだろうひどく醜く汚くてどうしようもなく哀れででもそれが何だって言うの?そんな他人は記憶から蹴り飛ばしてしまえばいい過去だけだから現在も未来も都合よく変えられたりしないけど過去だけはそれがで
アイ さん作 [333]