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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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想像の看守 ?
その夜は満月だった。暗闇の中、ほのかに照らし出された道を、裕一は足早に美術館へ向かって歩いていた。雅文と美里は30分ほど前に寝かしつけた。母親は12時過ぎにしか帰らないだろう。やがて、美術館の半開きになった自動ドアの前に立った時、裕一はふと、嫌な予感がした。いつもは優しく迎えてくれるドアの向こうの闇が、今日は入るなと警告している気がする。(……気のせいだろ。夜に来るのは今日が初めてじゃないし)そ
ユウ さん作 [369] -
哀しみの調べ
世界が時を進めたとき私は光から弾き出されたそうして初めて自分の無力を知った温かな居場所から引き離されてひとりぼっちになってしまった――自分がどれだけ幸せだったのかを初めて理解した悲しみに出会って幸福の味が懐かしく思い出されたこれからどうしよう……頭を抱えてうずくまる日々人とどう関わればいいのかわからない前は普通に笑えたのに笑顔さえもぎこちなくかたい仮面の下に凍りついたこれからどうしよう……明日は
アイ さん作 [368] -
ぼくらの愛
ぼくらの愛はこの程度か?こんな些細な出来事で、脆く崩れ去ってしまうものなのか?なぁ、聞こえるか?ぼくの心臓の鼓動。これ、君のために動いてるんだぜ?君はぼくに愛想をつかして出ていった。原因はわかってる。だけど、謝るつもりはない。だって君が悪いんだ。ぼくのせいじゃない。なぁ。君の心臓は誰のために動いているんだい?ぼくらの愛が悲鳴を上げる。遠く離れた二人の距離に引き裂かれて。痛い痛いって泣き喚く。ぼく
なかしき さん作 [452] -
板ばさみ
板ばさみって、けっこうつらい。君と一緒にいる時、君はいつもあの人の話をして。あなたと一緒にいる時、あなたはいつもあの子の話をして。――私なんて、真ん中に突っ立ってる透明人間だ。私を通して、二人はお互いのことを見ているだけ。誰が私を見てくれる?私の名を呼んでくれる?それを悟った時、両目から涙が溢れ出した……。
アイ さん作 [390] -
想像の看守 ?
電話が鳴った。カチャ。「……はい」 「あ、裕一ー?お母さんだけど、」「洗濯物なら入れた。雅文は迎えに行ったし、美里は帰って来てる」「あら、さすが裕一ね!やることが早いわ。お母さん助かっちゃう!」――アンタがやることだろ。「……母さん今日も遅い?」「うーん、それが、残業入っちゃってねぇ。悪いけど、夕飯の支度も」「買い物なら済んでるよ。わかった、了解」「ありがと!本当にいいお兄ちゃんねー」「……そろ
ユウ さん作 [366] -
それが日常、これも日常。
どーせいつか全部終わるなら、あたしが泣かなくてもいい話だよな?あー、くそ。鼻の輪郭に沿ってうぜぇモンがすべり落ちる。……世界が終わる前に、あたしが先に終わってやろうか?自分で勝手に思っておいて、自分で勝手に悲しくなる。――くそっ。今日も花がきれいだ。
よーこ さん作 [407] -
ひどく冷たい「生きる」ということ。
息ができない。胸が締め付けられるようで。不意に襲ってくる呼吸困難。――誰も助けてくれないの?体が沈んでいく。心も沈んでいく。ふと感じる冷たい視線。みんながあたしを見てる。「死ねよ」って顔してる。もう、涙さえ出てこない。このまま、消えることができるなら。それも、いいかもなぁ…。ぼんやりして思う。だけど。許されない。誰も許してはくれない。……あたし、これからも、生きなきゃ……。つらい。ひどく冷たい湖
よーこ さん作 [386] -
ここで生きる。
苦しくて、切なくて。胸がどうしようもなく痛くなっても、それでも生きていたいって思うから、私は今、ここにいる。誰かの意志じゃなく、でも誰かの為に、生きているんだ。涙が止まらない。どうして今まで気がつかなかったんだろう?まだ、間に合うかな?ちゃんと世界を生きられるかな?わからない。わからないけど、でも――。ここにいる。まだ、終わってしまったわけじゃない。だから、私は私になろう。朝が来るその数の分だけ
アイ さん作 [389] -
想像の看守 ?
「……は?」裕一は耳を疑った。じゃあこいつが、この美術館の管理者?まさか。「あ、その顔は信じてないなー?うーん……。近くに侵入者がいれば捕まえてみせて証拠にできるんだけどなぁ。」少年はそう言って辺りをキョロキョロし始めた。裕一は思わず身を固くする。そして思った。こいつマジでバカじゃねーの?「あ、そーいえば」その時、少年が裕一を勢いよく振り返ったので、裕一はびくっとなった。「キミ、名前はなんていう
ユウ さん作 [390] -
想像の看守 ?
闇から現れたのは、全身黒ずくめの少年だった。黒いコート、黒いズボン、黒い靴。男にしては長めの、肩くらいの長さの髪の毛も黒かった。ただ、腰に二重に巻いた太いベルトは茶色で、ベルトにはちょうどリレーのバトンを二つ繋げた分くらいの太さと長さの銀色のスティックがささっている。 十五、六歳くらいだろうか。年の割には細身で背も低い。顔は白く整っているが、目鼻立ちの感じが、どこか柔和な印象を受ける。しかし何よ
ユウ さん作 [384]