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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。138
「ま、状況に応じて対応する。それが一番だな。」そういう奴が一番強いのだ。特にこういった動乱の時代には。自分で思っておいて、ハントは軽く鼻で笑った。(『動乱の時代』なんて、絶対にこの“子供のセカイ”にゃあ、訪れねぇと思っていたが……。)そういうものかもしれない。平和な時代を謳歌している時に、一体誰が好きこのんで戦争のことを考えるというのだろう。きっと死ぬ時がわからないのと同じように、温かくやわらか
アンヌ さん作 [392] -
子供のセカイ。137
「お前らを消すより、働かせた方が早く計画が進む。だから治安部隊のお兄さんたちに痛めつけてもらう程度の、軽い罰にしてあげたんだ。」「……お前たちがさっきから言っている、その『計画』とやらは一体何だ?覇王は何を企んでいる!」ジーナは鞭打つような鋭い声で詰問したが、少年は大して怯えはしなかった。牢の中にいる人間など、怖くもなんともないといった様子だ。少年は、「明日になればわかるんじゃないの?」と小馬鹿
アンヌ さん作 [419] -
子供のセカイ。136
後ろから強く肩を押されて、王子は壁に叩きつけられた。ずるずると壁づたいに座り込んだところを、ジーナが庇うように王子の脇ににじり寄り、叩きつけた張本人であるハントを凄まじい目つきで睨む。そこは牢のような場所だった。鉄格子がはまり、三方は壁に囲まれている。むき出しの地面には何もなく、ただ鉄格子についた扉の前に立った無表情のハントが、くるくると牢の鍵を回しながら二人を冷徹な目で見下ろしていた。さらに牢
アンヌ さん作 [400] -
子供のセカイ。135
美香と耕太しかいなくなった館は、がらん、としていて、急にさっきの何倍も広く感じられた。屋根の穴から差し込んだ光――月の光だろうか――が、埃だらけの床、巨人が足を置いたところだけ少しいびつに歪んだ床を、明々と照らし出している。美香は、不思議と寂しくなった。自分たちは今、誰かの想像を消したのだ。“真セカイ”の光の子供の誰かが思い描いていた夢を、跡形もなく消し去ってしまった。耕太は呑気な顔で寝ている。
アンヌ さん作 [394] -
子供のセカイ。134
「耕太、」耕太は巨人を見据えたまま小さく返した。「どうした。」「屋根の一部を壊して。」巨人がもう一歩を踏み出し、その衝撃で美香はソファーに倒れ込んだ。耕太は慌てて美香の服を掴んでその身をソファーの上に引っ張りあげた。ソファーの上で猫のようにうずくまった二人は、間近で顔をつき合わせて、互いの瞳をのぞきこんだ。どちらの目にも虚ろな闇が沈んでいたが、美香のそれは若干明るかった。さすがだな、と耕太は思わ
アンヌ さん作 [397] -
子供のセカイ。133
美香はふと部屋の隅の闇に目を凝らし、眉をひそめた。そこだけ妙に闇が濃いのだ。まるで夜の中にうずくまった山のように、こんもりとした暗闇が、じっとその成りを潜めている。美香はあることに気づいて、背筋がすっと冷たくなった。「それ」は、動いていた。すぅーと息を吸うと体が盛り上がり、ふーと息を吐くと沈む。その大きさは山と形容したように、とても尋常ではない大きさだった。「……ソファーだ、ラッキー。」一方、耕
アンヌ さん作 [404] -
ヒトの心
人の心をあらわす真実の泉に手をひたした時、その手が赤く染まったらどうしよう。傷ついていたらどうしよう。傷つけてしまっていたらどうしよう。そんな臆病に振り回されて、私は時々動揺している。手前勝手な考えだ。自分が嫌われるのが怖くて、きっと本当はただそれだけ。わかっていても、怖いものは怖かった。人の心はいつでも闇に包まれていて、滅多に本心には触れられないから。想像して、推測して、慮って、そうやって付き
アイ さん作 [414] -
子供のセカイ。132
さっき散々な目に遭わされた、あの意地の悪い金髪碧眼の魂の分け身も、どこか別の国の子供なのだろう。そう思うと妙な気持ちになった。世界は繋がっている。“真セカイ”では国境は容易には越えられないが、“子供のセカイ”にはそういった意味での境界はなく、すべての子供たちのために平等に存在している。「本当はとても素敵なところなんだわ。」呟いた美香の声は小さすぎて、耕太には聞き取れなかった。『可愛らしい』感じの
アンヌ さん作 [361] -
子供のセカイ。131
美香と耕太は走ることもなく、右側、つまりコルニア城があるという東側の民家の間の細道に、そっと足を踏み入れた。美香は恐怖に体が強張っていた。本当は走った方がいいことはわかっているのだが、耕太は歩くのに精一杯の様子だ。声を掛けたいが、声は透明になっていないはずだから、治安部隊から距離を置いた後でないとそれもできない。「……。!」耕太がふらりと倒れそうになり、美香は慌ててつないだ手を両手で掴んだ。耕太
アンヌ さん作 [387] -
子供のセカイ。130
下町の一角はパニックに陥っていた。ハントは、「全員逃がすな!そこに隠れてる奴らもだ!」と喚きながら、監査員奪取の手伝いをすべく、最初に猫の方へと向かった。美香と耕太は未だに透明なままの姿だった。耕太が我慢強く想像の力を維持しているらしい。美香は沸き上がってくる緊張と興奮を抑えるために、深く息を吐き出した。この好機を逃してはいけない。王子とジーナが捨て身で助けてくれたのに、ここで美香たちが捕まった
アンヌ さん作 [392]