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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。129
(……ジーナ!)美香はぎゅっと目を閉じた。どうすればこの状況を変えられるのか、全くわからなかった。ジーナが黙っていた時間は、わりに短かった。彼女がゆっくりと膝を曲げ、地面に腰を下げていくのを、耕太は見ていられずに思わず顔を反らした。少年は下品な笑い声を上げた。ジーナはまだ土下座とは言えない、両膝を地面につけた格好で、静かに少年を見上げた。「私が謝れば、あなたが正体を見抜いたあの二人を見逃してくれ
アンヌ さん作 [374] -
子供のセカイ。128
ただ音のした辺りから、大体の位置を把握しているのだろう。ジーナたちのいる前方から三人、さらに後方の六人がじりじりと近づき、美香と耕太は身動きの取れない状態に陥った。「なぜっ、……!」さっきまで味方のように振る舞っていたのに、と怒鳴りかけたジーナの口を、ハントは素早く手で塞いだ。その目が見開かれ、こめかみに汗が浮いているのを見て、ジーナはハッとなって黙った。少年は相変わらずニヤニヤしている。どこか
アンヌ さん作 [396] -
子供のセカイ。127
ハントの自嘲したような笑みが、ジーナには気にかかった。どんな事態になりつつあるのか。その言葉は、現状がかなり危険な状態に以降しつつあることを意味している。「覇王は一体何を企んでいるんだ?奴が様々な領域から集めた者たちは一体、何のためにここへ――、」言い淀んだジーナの言葉を、しかしハントはすでに聞いていなかった。いつの間にか治安部隊の若者たちの足は止まり、王子と猫とジーナは、危うく前を歩いていた若
アンヌ さん作 [381] -
子供のセカイ。126
妥協案としては、これがギリギリのラインだった。ハントが演技をしているだけで、実は覇王の味方をしている可能性や、ハントがジーナたちに協力したことがばれて、その結果覇王が治安部隊を壊滅させるような可能性を考慮すれば、互いを信じるにはまだ段階が早すぎた。話が決まると、ハントは一行が向かおうとしている方角を指差した。「あっちが、強制労働施設のある北の方角だ。ちなみにラディスパークの最果てに当たる。そして
アンヌ さん作 [365] -
黄昏と祈り
何億人もが踏み荒らした道に、私は座り込んだ。ただ風を待っていた。そうしたら少し動き出せそうで。気まぐれに風を待ってみた。風はやって来たが動く気はしなかった。ただ頬を撫ぜるやわらかな感触にほぅっと息をついた。世界は白く見えた。まっさらで、何もない大地。水晶のような光沢を放つ空。海さえも真白く、静かで。穏やかな退廃はこうして始まるのだろう。衰えてゆくこの肉体も、抱きかかえてしまえば驚くほど愛しく思え
アイ さん作 [394] -
子供のセカイ。125
しかしハントは納得したらしく、底意地の悪そうな顔で王子に言った。「ふーん。ならお前は、舞子様や覇王様がいないと真面目に働かないってことか?」「そうじゃな……いや、そうなる、のかな?」「どっちだ。」自分の中途半端な言い訳のせいで軽く頭が混乱し出した王子に代わって、今度はジーナが進み出た。「とにかく、どうなんだ。コルニア城はどこにある?」「教えない方がいいぜ、ハント。」先ほどハントを呼びに行った長髪
アンヌ さん作 [401] -
子供のセカイ。124
「オース。」若者たちは間延びした声で答えると、ジーナを王子の元へ歩かせ、二人と巨大な一匹の猫をゆるく円を描くように囲んで、ぞろぞろと通りを歩き出した。美香は真剣な表情でそれを見つめ、ゆっくりと立ち上がると、耕太と目配せした。少し距離を置いて、耕太は素早く足音を立てないように行列の後に続き、美香もそれに習った。歩きながら、ジーナは先頭にいるハントに声を掛けた。「残りの二人の場所を詮索したりしないの
アンヌ さん作 [443] -
子供のセカイ。123
緊張が一気に解けた王子は、奇妙に込み上げてくる笑いを堪えることができなかった。執拗にじゃれついてくる猫を片手で牽制しながら、必死に顔を手で覆って高ぶる感情を抑える。ともすれば笑いと同時に涙が出そうで、そのまま泣き出してしまうことが恐ろしかったのだ。王子は心の中で感謝した。(ありがとう…………耕太。)治安部隊には見えていないが、近くの民家の家壁に張りつくようにして、透明なままの姿の耕太と美香が立っ
アンヌ さん作 [382] -
子供のセカイ。122
ジーナは剣を動かそうと渾身の力を込めたが、剣はびくともしなかった。それどころか、背後から二人の若者に両腕を抑えられ、剣はハントに奪われた。王子は必死に囲みを抜けようと若者たちの腕に取りついているが、若者の一人が笑いながら足の裏でトン、と王子の肩を突くと、それだけで簡単に尻餅をついてしまい、絶望的な気分になった。治安部隊は強い。筋力が常人のそれではないのだ。若者たちはゆっくりと、時計回りに王子の周
アンヌ さん作 [349] -
子供のセカイ。121
その場にいた若者から報告を聞いたハントは、「ふーん」と一言呟くと、遠慮なくずかずかとジーナたちに近づいていった。ジーナはじろりとハントを見下ろした。そう、ジーナの方がわずかに身長が高いのだ。ハントはジーナの前に立つと、同じように腕を組んで仁王立ちになった。まったく同じポーズを取り、さらに不機嫌な表情まで真似して、ジーナを睨んで見せる。……馬鹿にしているようにしか見えない。当然ながら短気なジーナは
アンヌ さん作 [412]