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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。112
それにしても、広場の中央に突然やって来た美香たちに対して、誰も不審そうな目を向けないのは不思議なことだった。広場にいる人々は、てんで好き勝手に振る舞い、自分たちで楽しんでいる。美香はしばらく首を巡らした後、一人の中高年くらいの女性に目をつけた。「おばさん」という人種は、たいてい困っている人に対して親切なものだ、と美香は勝手に思っていた。「あの、すみません……。」クレープを売る店の前にいたその人は
アンヌ さん作 [387] -
子供のセカイ。111
必死で自分に言い聞かせてみても、胸の痛みは消えなかった。嫌われている、と悟ることは、とても悲しくて、むごい。「美香。」耕太は背を向けていたから顔は見えなかった。しかしその口調は一筋の笑いも含まず、どこまでも真摯だった。「今は、ごちゃごちゃ考えるのはやめようぜ。まずは本物の舞子に会わなきゃさ。そん時にまた色々細かいことを相談すればいいだろ。」いかにも耕太らしい意見だった。耕太はいつも前向きだ。悪く
アンヌ さん作 [423] -
子供のセカイ。110
舞子にはふわふわと夢見がちなところがあった。何か新しいものを想像することが大好きだったし、だからこそ美香が止めるのも聞かずに、しょっちゅう“子供のセカイ”を開いていた。ただ、舞子は特殊な力を持っている。舞子の“子供のセカイ”は現実になるのだ。大人は見ることも触ることもできない。子供は見ることができるが、触ることはできない。この原則をくつがえし、子供限定だが触れるようにしてしまったのが舞子の力だっ
アンヌ さん作 [445] -
子供のセカイ。109
それにしても、舞子はなぜ急に泣き出したのだろう。なぜあんなにも怯えた顔をしているのだろう。美香が近づくほど、舞子の声はますます大きく、ますますヒステリックになっていった。美香は舞子の目の前に立った。小さな舞子を黙って見下ろす。舞子はTシャツのすそを、手が白くなるほどぎゅうっと強く握り締めていた。唇がぶるぶると震えている。大粒の涙が、ぼたぼたとあごの先を伝い落ちては石畳に染みを作った。「舞子。」美
アンヌ さん作 [353] -
子供のセカイ。108
「だが、その子供はなぜそんなことができるんだ?領域を無視してラディスパークへ直結する『道』を作るなど、支配者にだってできるかどうか……。」ジーナはハッと何かに思い当たった顔をすると、素早く周囲を見回した。そのジーナの様子に、一同に緊張が流れるが、相変わらず広場は騒がしかった。何も起こる様子はない。目を光らせたまま黙り込んだジーナに、美香は恐る恐る声をかけた。「どうしたの、ジーナ。何か気づいたの?
アンヌ さん作 [361] -
子供のセカイ。107
そのまま金色のリボンに導かれ、四人はあっという間に数百もの領域を飛び越えた。どのくらい飛んだだろう。体が風を切る感覚や、耳鳴りにさえいい加減慣れるかという頃、ようやくリボンは引く力を失い、四人はもみくちゃになった状態で領域をつなぐ透明の壁を抜け、固い地面に投げ出された。「きゃっ!」「おわっ!」石畳の上に叩きつけられそうになった美香を、素早く体勢を整えたジーナが横抱きに抱き止め、難を逃れた。「平気
アンヌ さん作 [434] -
子供のセカイ。106
このままここにいては全員やられてしまう。危機感を抱いたジーナは、一度“生け贄の祭壇”に戻ろうと、王子の体を引っ張った。しかし彼はジーナに制止をかけると、青い顔で瞳だけをぎらつかせて耕太を見た。「君が言い出した『道』だろう…!早くその『道』を見つけるんだ、手遅れになる前に……。」「そんな言い方、」「いや、王子の言う通りだ。ここは耕太だけが頼りなんだ。」ジーナは美香に言い聞かせ、同時に耕太に鋭い視線
アンヌ さん作 [346] -
子供のセカイ。105
『道』の手がかりを持つ耕太を先頭に、美香、王子、ジーナの順に、舞子救出を目指す彼らは次々と“生け贄の祭壇”を出ていった。ホシゾラは手を振って見送った。透明の壁を通り抜けて全員の姿が見えなくなると、一気に心細くなった。漠然とした寂寥が胸の内を覆っていく。ホシゾラは深く、肺の奥から押し出すようにして息を吐くと、遠い目で雲行きの怪しい空を見上げた。「……幸運を。」呟いた声は頼りなく空気を震わせ、湿気を
アンヌ さん作 [350] -
子供のセカイ。104
「耕太。」ホシゾラは悪戯っぽく笑うと、耕太を手招いた。耕太はぎくっとしたが、ニヤニヤする美香に肩を押されて、仕方なく前に出る。美香としては、耕太がどんな行動を取るのか見ものだった。小学校のお別れパーティーでも、いつもわざとひょうきんに振る舞ってみんなを笑わせていた耕太だ。彼が湿っぽいことは苦手だということは十分わかっていた。ホシゾラは王子の時と同じように、耕太の髪を優しく撫でた。耕太は気恥ずかし
アンヌ さん作 [410] -
わーるど・えんど
世界の果てまでゆけたならきみと二人になれただろうか他の誰にも邪魔されず二人の世界を築けただろうか社会から離れては生きられない呟いて、白い息を吐く大人たちきみは見ていたそんな大人たちをただじっと賢そうな瞳を煌めかせて見つめていたあたしはそんなきみを見てたから飽きもせずに、ずっとずっと見つめてたからだからあたしも現実を知った社会から離れては生きられないのだと世界に果てなどないのだと世界地図は完成して
よーこ さん作 [380]