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アンヌ さんの投稿された作品が334件見つかりました。
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子供のセカイ。103
ホシゾラは、“生け贄の祭壇”の出口の前に立っていた。入り口とは、ジーナが最初に美香と王子を抱えて入ってきた、前の領域とつながる場所のことであり、出口はラディスパークへ続く次の領域へとつながっている。ホシゾラの前には、以前と同じ衣服に身を包み、すっかり旅装を整えた美香、耕太、王子、ジーナの四人が立っていた。「体はもう本当に大丈夫ね?」母親のように聞いてくるホシゾラに、王子は苦笑して答えた。「ホシゾ
アンヌ さん作 [331] -
子供のセカイ。102
やがて王子は言った。「犠牲として消えるのは、目に見えるものだけじゃない。それはジーナの心に関わることかもしれないから……。」美香はしばらく王子の言葉の意味を考えていたが、結局よくわからなかった。だが、確かにその通りかもしれない。ジーナは今ここにはいないが、犠牲のことを彼女に直接聞いた所でまたはぐらかされてしまう気がした。ジーナは自分の痛みを容易に人には話さないタイプだから。「そうね……。わかった
アンヌ さん作 [354] -
子供のセカイ。101
――次の日。ジーナの承諾を得て、耕太の言う『道』を進む話は、あっさりと決まった。それどころか。「師匠!今日も剣の手ほどき、お願いします!」「……仕方ないな。行くぞ、耕太。」「押忍!」なぜか通常以上に仲良くなってしまったジーナと耕太を、王子は薄気味悪そうに見ていた。美香は呆れながらも、「ジーナって、人との仲良くなり方が男の子みたいね。」と、ぽつりと呟いた。ホシゾラから聞いた話によると、二人は昨日ず
アンヌ さん作 [350] -
子供のセカイ。100
食事を終えた後も議論は続き、王子の問診に来た医者をきっかけに、その場はお開きとなった。とりあえず結論は保留になったのだった。とは言っても、耕太の言う『道』に極端な警戒心を抱いているのはジーナだけだった。ホシゾラは少し不安そうだったが、美香は耕太の言葉を信じたし、王子は他に道がないのならと、妥協案にすがった。しかしジーナは、そもそも耕太自体を信用していない様子だった。話し合いが終わると同時にさっさ
アンヌ さん作 [397] -
子供のセカイ。99
「ふーん、なるほどなぁ……。」話をすべて聞き終わった後、耕太はあごに手を当てて呟いた。耕太が至極納得のいった、という顔をしているので、美香は不思議に思って聞いた。「何がなるほど、なの?」「いや、あいつの言ってたことは正しかったんだなぁ、と思って。『君達には道が必要だから作ってあげるよ』って、何のことかと思ったけど、そういうことか。」王子はぽかんとしている。ジーナは怪訝そうに眉を寄せ、ホシゾラは無
アンヌ さん作 [374] -
屋上に登る話。
ビルの屋上に登るのは人を見下したいからじゃない無謀に飛びたいからじゃない独りになりたいから蒼の中で風を浴びたいから両手を広げて霧のような雲を受けとめて高らかに声を張り上げて唄うんだたとえ世界のすべてを知っても怯えないように敗けないようにすべてに毅然と立ち向かえるように人にやさしくできるようにそんな想いを込めて唄うんだ涙が空に舞ってゆくやがてそれは光とかして空を羨む一人の少女の手のひらの中に愛の羽
アイ さん作 [340] -
子供のセカイ。98
「みんなも知ってるように、私は、舞子を連れ戻すために“子供のセカイ”にやって来たわ。そして舞子はラディスパークという場所にいる。耕太を助け出したからには、もう後はラディスパークに向かうだけ。王子が回復したら、すぐにでも出発するわ。」ジーナはパンの塊をごくんと飲み下すと、気がかりな様子で、美香にスプーンの先を向けた。「だが、ラディスパークはここからとてつもなく遠い場所にあるぞ。何百もの領域を越えな
アンヌ さん作 [329] -
子供のセカイ。97
耕太は不機嫌だった。なおかつ、さりげなく美香の後ろに隠れながら、王子とジーナの方をチラチラと伺っている。「お前の仲間ってあんなのばっかなのかよ。マシなのホシゾラさんだけじゃねえか?」「うーん…。王子があんな風なのは珍しいんだけど、ジーナはいつもあんな感じよ。それに今のはあんたが悪いわ。」美香は砂漠でジーナに胸ぐらをつかまれ、宙吊りにされたことなどを思い返しながら、複雑な顔で囁き返した。ジーナはと
アンヌ さん作 [329] -
子供のセカイ。96
「……ジーナと同じこと言うんだね。二人共気にしすぎだよ。それに、あれは僕の力不足が招いた結果だ。僕は、責めるんなら自分を責めなきゃいけない。」「そんなこと、」「いや、そうなんだ。特にこれからは、僕はみんなに迷惑をかけるわけにはいかないんだ。……美香ちゃんの想像の力は、犠牲となって消えてしまったんだろ?」美香はハッと口をつぐんだ。ホシゾラが、ばつが悪そうに目をそらす。きっと彼女からそのことを聞いた
アンヌ さん作 [337] -
わたくしごと。き。
うつ病が脳の故障なら私のはとっくに故障してる日々を送るのは億劫じゃない悲しみが影を落とすのはいつも夜自分を恥じて自分の生き方を恥じてだから電車は嫌いなのです私を思考の闇に突き落とすからチョコくさい息を吐いて今日もこの駅をやり過ごす前から突風が吹いて倒れそうになっても冷たい空気が身体中の血液を凍らせてもこの心臓が跳ね続ける限り呼吸を続けなければならないのはなんだかとてもむごいことで――わかってる、
アイ さん作 [392]