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ティシュー さんの投稿された作品が17件見つかりました。

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  • 十字路とブルースと僕と俺 40

    ジョンとの思い出といえば、一番はじめに思い出すのがギターを弾いている姿やギターを教えてもらった事だが、逆に何気ない日常の事のほうが俺の心には深く残っていた。ジョンは比較的朝が早く、田舎に住む俺達家族とも生活のリズムが合っていた。朝飯前の田畑の作業にもジョンは積極的に加わって、一ヶ月もしないうちに一人前の働きぶりをみせた。初めて食べる日本食にもジョンは臆することなくチャレンジした。納豆の臭いは苦手
    ティシュー さん作 [221]
  • 十字路とブルースと僕と俺 39

    その後、ジョンは(なんて呼べばいいかと聞くと、こう呼んでくれと言われそれから俺も村の人達も"奴"のことをこう呼んだ)、俺達の村に二ヶ月ほど居ることになった。友達を探したいというジョンの意向と、金銭面的にも母国に帰ろうにも帰れないという状況とで、一番暑いであろう七月八月の二ヶ月間、ジョンは俺の村に居た。もちろん住居は俺の家ということになった。 俺の家に泊まった最初の晩、ジョンはいつまでも眠りにつけ
    ティシュー さん作 [217]
  • 十字路とブルースと僕と俺 38

    「まあそんなこったろうと思ったがの」と老人は独り言のように呟いた。「こやつは一体何者なんじゃろう?」「さあ…わかりません」「聞いてみるしかあるまいな」と老人は言って、また"奴"に滑らかな英語で話しかけ始めた。老人はいくつかの質問を"奴"にして、それをおれにもちゃんと通訳してくれた。名前や年齢、どこから来たのか、なぜ此処に来たのか、等々を"奴"から聞いておれにも教えてくれた。"奴"の歳は二十歳だっ
    ティシュー さん作 [296]
  • 十字路とブルースと僕と俺 37

    今日はいつにもまして暑いなぁ、と、老人はおれが出した麦茶を美味しそうに飲んで言った。"奴"はしばらく麦茶には手を付けず、子供のような無垢な瞳をぐるぐると動かしていた。居間にはおれと"奴"と老人の三人だけがいた。老人が流暢な英語で"奴"にむかって何かを言ったが、もちろんおれには何を言っているのかさっぱりわからなかった。老人の口から発せられたその英語は、老人の口から出たとは思えないほど滑らかで、まる
    ティシュー さん作 [297]
  • 十字路とブルースと僕と俺 36

    しばらくして"奴"はおれの家の居間にいた。なぜそうなったのかと聞かれたら、"奴"がそう望んだからと言って差し支えないと思う。事の顛末はこうだ。四辻の真ん中で竦み上がっていた"奴"に、一人の老人が近づいていった。老人はぼそぼそと"奴"に話しかける。それに"奴"のほうも受け答えをする。おれはただただそれを黙って見ていた。四辻のまわりに群がる村人達も同様だった。そしてしばらく二人は会話を交わし続け、老
    ティシュー さん作 [283]
  • 十字路とブルースと僕と俺 35

    "奴"が弾くブルースは村中の人々をまるで砂糖に群がる蟻のように吸い寄せた。腰の曲がった老人から生まれて間もない赤ん坊まで、老若男女を余すことなく吸い寄せていた。さほど広くない四辻は、初めて耳にする音楽に興味津々の村人達で溢れ返っていた。無論、おれもその輪の中にいた。演奏が終わり"奴"はギターをケースに戻し、周りを取り囲む群衆にやっと気付いた。小さな村とはいえ、四辻を取り囲むには充分な人間がそこに
    ティシュー さん作 [333]
  • 十字路とブルースと僕と俺 34

    "奴"は嬉しそうに、千切れそうなほど激しく腕を振り返してきた。おれは短くなった煙草を一回口へ戻し、もう一度同じように腕をかざし返した。それを見た"奴"は、殊更激しく腕を振りまくったかと思うと、突然<回れ右>をしてそっぽを向いてしまった。"奴"は四辻のほぼ中心で座り込んだ。何が何だかわからないおれを尻目に、奴は持っていたケースを開いて中からギターを取り出した。ボーーンッというアコースティックギター
    ティシュー さん作 [278]
  • 十字路とブルースと僕と俺 33

    師匠となる"奴"が初めて此処に姿を現したのは、青葉の香り漂う初夏の事だった。6月にしては気温が高く、ジリジリとした太陽の日差しが肌をヒリヒリと焦がすほどの暑さだった。清々しい空気と苦々しい煙草の煙をからだいっぱいに取り込み、一段落した農作業を一時中断して、至福の一服を楽しんでいる真っ最中の事だった。晴れ渡った大空を我が物顔で鷹が飛び回っていた。遅生まれのハルゼミが松林でゲーゲーと鳴いていた。いつ
    ティシュー さん作 [265]
  • 十字路とブルースと僕と俺 32

    ギターを手にして早30年。近頃になって、ようやく自分の思い通りのものが弾けるようになってきた。こんなに歳を取ってもまだギターを続けているとは、考えもしていなかった。大体、音楽なんてものには縁のない青春時代を過ごしてきた。ギターといえばテレビでみるギター漫談の時に使われている楽器…ぐらいにしか思っていなかった。ギターを始めたばかりの頃は、ちょっとしたお師匠さんがいた。そいつ(師匠なんだけど歳も近く
    ティシュー さん作 [298]
  • 十字路とブルースと僕と俺 31

    寒かった。からだの芯からキンキンに冷えた。自分の感覚では夏に駅の売店で売られている冷凍ミカンぐらい冷えていた。何分ぐらいいたのだろうか。定かではなかったが、途切れはしないにしろ、大体3〜4曲分のブルースを聴いていた。その間、十字路には誰一人として現れなかった。おれはガタガタとからだを震わせながら、ジッと十字路の中心を見ていた。右へ左へ、ギターケースを持ち替えては空いた方の手をポケットに突っ込んだ
    ティシュー さん作 [273]
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