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夢の字 さんの投稿された作品が61件見つかりました。
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Killing Night Freaks/Chap.2-2
「しかしまぁ、なんつーか……広い家だよな、正直。一人暮しだろ? マサト先輩」「ん、まあね。少なくともこの三週間、ご両親には一度もお会いしたことは無いよ」「どこの金持ちだよ……いくら一人っ子だからって、一戸建て丸々くれてやるなんて」「あ、違う違う。なんか自力で立てたらしいよ。いや、お金出しただけなんだけど」「……マジ?」「まぢ」「この4LDKを?」「この4LDKを」 海潮が、信じらんねえ、と天を仰
夢の字 さん作 [338] -
Killing Night Freaks/Chap.2『快気祝いに怪奇な回帰』-1
「生きてるって、楽しいか?」 白い。窓に掛けられ、陽光を透かす薄手のカーテンも。清潔に輝く真新しい天井も。ベッドもシーツも壁もチェストも、僕の視界に写る全てが、白い。だからだろうか。掛けられた言葉が、いやに白々しく聞こえるのは。一笑に付そうとして失敗し、は、と引き攣った笑い声が口から零れた。僅かに、冷笑の気配。……いいさ。幾らでも笑えば。「言いたいことが分からないな、海潮(みしお)」「色んな制約
夢の字 さん作 [365] -
Killing Night Freaks/EXTRACHAPTER/『はざまのうた』
樋泉杏華は苛立っていた。全身に怒気を漲らせ、夜の町を歩いていく。彼女の身体は血に濡れていて、体中から鉄錆にも似た臭いが発せられている。生き物の匂い。死んだものの臭い。存外嫌いではない。女性ということもあってか、元から血を見ることには慣れていた。最初はいくらかの嫌悪があった。恐怖も。だが慣れた。繰り返していくうちに薄れて消えた。 殺すこと。生きているものの活動を終わらせる。慣れてしまって、もう何
夢の字 さん作 [377] -
Killing Night Freaks/Chap.1-8
「ってそだ。名前くらい教えてよ。まだ聞いてないしら、お友達付き合いするなら知っておきたいんから」「誰と誰が友達ですって?」「君と僕。うぃあふれんず。どぅゆぅあんだすたん?」 返事は嘆息だった。地味に傷付く。英語苦手なんだからしょうがないだろー、なんて的外れに拗ねる。……うん、すんごくジト目で見られてる。視線が痛い。そして視線の主からもう一度嘆息をもらいました。ひぃ。「石原さとみ」「あっははははま
夢の字 さん作 [373] -
Killing Night Freaks/Chap.1-7
「うーん……」 しかし、僕の目的、か。実際の所なんなんだろう。特別への憧憬。平凡からの脱却。普通の生活では満たされない心の充足の為。有るには有るけど、具体的なビジョンが無い。厳密に、これと言った望みはないのだ。例えばそう、マラソンか何かで、進むべき道はわかっているのにゴールが見えてこないあの感覚。それによく似ている。「せっかく受験終わったばっかりだってのに。せめてあと二年待てない?」「誰が進路の
夢の字 さん作 [353] -
Killing Night Freaks/Chap.1-6
「超、能力……」 呆けたように、少女が繰り返した。いや、嘘なんだけど。そんな反応されると気まずい。痒くもない頬を掻こうとして左手を持ち上げ痛い。そういえば刺されてたんだった、なんて気付いたときには全身の傷が痛み始めていた。ヤバイ痛い。特に脇腹が物凄く。内蔵にまで届いてるんじゃないだろうかコレ。早めに病院行かないとなぁ。血とか凄い出てるし。「……ユーザー? じゃあ、やっぱり……」「ん?」「何でもな
夢の字 さん作 [332] -
Killing Night Freaks/Chap.1-5
起き上がったばかりの姿勢では到底避け切れるものでは無い。だから左腕を差し出した。ぞぶりとナイフが突き刺さる。冷たい感触。直ぐに熱くなる。熱に伴う痛みに思わず顔が歪み、けどそんな暇もないのだと思い直した。少女が両手にナイフを、瞳に憎悪を湛えて突っ込んで来る!「ッ!」 反射的に動かした左手に、黒塗りの刃が突き込まれる。そのまま腕を捻り持ち上げられた。がら空きになった胴体、そこに踊るように回る少女が
夢の字 さん作 [359] -
Killing Night Freaks/Chap.1-4
分厚い鉄で出来ている、屋上へと続くドア。触るとひやりとした感触を返してくる。鼓動は一層強く早く鳴り響き、前後感すら怪しい。深呼吸をして、酷く重いドアを、「…………っ」 開けた。 ごう、と耳元で風が鳴る。屋上に強く吹き付け、ドアの前で蟠っていた空気が抜ける音。揺らされた前髪の向こう、星々をちりばめた群青の夜空には煌々と輝く満月が有る。星月夜。幻想的な風景の、その中に――――「…………あ」 居た。
夢見月 さん作 [366] -
Killing Night Freaks/Chap.1-3
開いていた生徒昇降口のドアを開け、校舎の中に踏み込んだ。月の明かりの届かない宵闇はのっぺりとしていて、息が詰まるような重圧を感じさせる。心を落ち着けようと深く吸い込んだ空気は外とは打って変わって冷たく、まるで異世界に踏み込んだような錯覚を覚えさせた。 異世界。良いじゃないか。それこそが僕の望むものだ。此処ではない何処か。平坦に平凡な日々が続く退屈な場所ではない、興奮と熱狂に満ちた場所。強く、望
夢の字 さん作 [393] -
落花流水、23話。
その日の天気は、雪だった。鬱々とした曇天から降り注ぐ結晶は、その白色の下に全てを押し殺していく。音を。光を。俺の思いを。今しがた飛び降りた誰かの死体を。「おまたせ」 薄らと積もった雪を踏み締めながら、黒衣の少女が走り寄って来た。息が白い。それを見てふと、所謂イキモノでなくとも息は白いのだな、と場違いな思考が頭を掠めた。 少女が隣に並んだのを確認し、歩き出す。足元で俺と少女の体重を受け押し潰され
夢の字 さん作 [424]