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沖田 穂波 さんの投稿された作品が90件見つかりました。

 
  • 人斬りの花 30

    5-後 人斬りの花[あなたは,可哀想な人]人斬りにかけたこの言葉は,私が幼い頃の自分にかけた言葉でもありました。今の自分に納得がゆかず,毎日を苦に生きる。そんな人斬り(過去の自分)を,救い出したくなったのです。そのために私は,酔って全てを覚えていないふりをしました。この方が何かと効率が良いと思ったのです。しかし,人斬りと関わる内に,私は守られる立場となっていました。人斬りは言いました。『一生守り
    沖田 穂波 さん作 [403]
  • 人斬りの花 29

    5-中 人斬りの花どの位の時間が過ぎたでしょう,私は未だに父の遺体の側で泣いていました。『泣いて‥いるのですか?』その時,親切そうな若い男の声で,私はやっと我に返りました。『親を斬られたのですね。可哀想に‥。』『‥。』『おや?これは‥』若い男は,父の遺体から何かを見つけたようでした。盲目の私には,父がどの様な有り様で死んでいるのか見えませんでしたから,その人の言葉に,必死に耳を傾けていました。『
    沖田 穂波 さん作 [398]
  • 人斬りの花 28

    5-中 人斬りの花激しく雨の降る夜,父と町を歩いている時のことでした。その人斬りは,静かに私達の前に立ちふさがり,『石澤 章殿とお見受けする。武部嘉一郎の命により斬らせて頂く。』冷ややかに言いました。私は,ただ父の腕にしがみついていました。決して怖がっていたのではありません。父に,早く逃げて欲しかったのです。死ぬのは,私1人で充分でした。しかし,父は私の前に崩れ落ちました。斬られたのです。悲鳴も
    沖田 穂波 さん作 [384]
  • 人斬りの花 27

    死など怖くない。怖いのはあなたに,見離されることだけなのです。5-前 人斬りの花15年前のことです。母は,まだ3つの私を置きざりにして,家を出て行きました。目の見えない私は母の顔を知りませんが,優しく,良く面倒を見てくれて,とても大好きでした。しかし,そんな母を追い出してしまったのは,明らかに私のせいでした。何故母が出て行ったのかは,当時3つの私でさえ理解していました。その時私は目が悪く,何をす
    沖田 穂波 さん作 [437]
  • 人斬りの花 26

    4 恋志師匠の弔いが終わり2日が経ち,また元の長屋での生活が始まった。2人きりの長屋に,以前よりも重い空気が流れている。沈黙が続く。抄司郎は,その沈黙を破る様に立ち上がった。『椿さん。』未だ泣きじゃくる椿に,抄司郎はゆっくりと歩み寄り言った。『俺は,あなたを守り通します。これからも,ずっと。』椿は濡れた目で,抄司郎を見上げた。『今,決意しました。これが俺の,師匠の言う心のままなんです。』『し,し
    沖田 穂波 さん作 [460]
  • 人斬りの花 25

    3-12 香『もう遅い。わしは次期に死ぬ‥。だがあの子を,恨むのではないぞ‥。』ボロボロに斬り刻まれた体で,師匠ははっきりと言った。『お前が,必死に守ろうとしている人が斬られるのを,わしは,黙って見ておれなかったのだよ。』と,力無く微笑し,抄司郎の背後で泣きながらそのいきさつを見ている椿に目を移した。『あの子は,お前にとって,特別な子なのだろう?』『‥はい。』椿は抄司郎にとって,初めて心の底から
    沖田 穂波 さん作 [419]
  • 人斬りの花 24

    3-11 香抄司郎が椿のいる長屋の前までやっと戻ると,微かな血の香りが鼻を触った。― まさか‥!!急ぎ中へ入ると,部屋の床一面に血が散乱していた。ここで,斬り合があったらしい。部屋の隅に椿が血まみれになって倒れている。『‥椿さん!!』抄司郎は青くなって椿を抱き起こした。『‥抄司郎さん?』返り血を浴びてはいたが,どうやら気を失っていただけのようだ。抄司郎はほっと肩をなでおろした。『大変です!!』我
    沖田 穂波 さん作 [404]
  • 人斬りの花 23

    3-10 香 椿は師匠と共に,河原の長屋で抄司郎の帰りを待っていた。『椿さんは,抄司郎に惚れているね。』不意に師匠は言った。椿ははっと顔を赤らめた。『何ですか,急に。』『いや,抄司郎を待っているお前さんのお顔が,幸せそうだからよ。』椿は慌てて置いてあった手持ち鏡で自分を見た。その時,未だ消える事のない左頬の刀傷が目に止まり,そっと傷を手で隠した。『こんな顔じゃ,人を愛する資格なんて,ありませんよ
    沖田 穂波 さん作 [417]
  • 人斬りの花 22

    3-9 香†抄司郎は毎日町へ出る。武部の手下達の足取りを掴む為である。それらしい人物は幾度か見かけたが,幸い,椿の居る長屋の在処は知られていないらしい。手下は抄司郎に斬りかかって来ると言う訳でもなく,意外と平穏な日々を過ごしていた。抄司郎はふと,出店の前で足を止めた。そこには幾つもの,流行りものの髪飾りが売られている。その中の一つを手に取った。― 椿色。その鮮やかな色は他の物よりも美しさで秀でて
    沖田 穂波 さん作 [609]
  • 人斬りの花 21

    3-8 香師匠の長屋に身を隠してから,ひと月が過ぎた。幸い武部の手下は,まだ抄司郎達の居場所が掴めていないらしい。そんな時,以前再会した道場時代からの親友である,近藤 平太に呼び出された。平太は最近金回りが良い様で,抄司郎を強引に飲み屋に引っ張り込み,酒を振る舞った。『何だいきなり。お前から誘うなんて珍しいじゃないか。』抄司郎は振る舞われた酒に目を落としてから言った。昔から平太は,自分から飲みに
    沖田 穂波 さん作 [468]
 
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