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沖田 穂波 さんの投稿された作品が90件見つかりました。

 
  • 人斬りの花 10

    2-5 椿抄司郎と女は角の一室に案内された。『この部屋は馴染みの客専用だから,自由に使うといいよ。』トシはそう言うと,親切な笑顔を見せて出て行った。†女の目は,覚めない。抄司郎は女の左頬の傷を見た。やはりどう見ても,四年前,自分がつけた傷だ。では何故,女は盲目ではないのだろう。一番の謎はそれだ。盲目などすぐに治るものではない。ましてや治る事など,ごくまれである。― 別人なのではないか。抄司郎は心
    沖田 穂波 さん作 [416]
  • 人斬りの花 9

    2-4 椿追っ手は全て片付いた。川原に大量の血が流れている。女はまだその場に座り込んでいた。何度立とうとしてもよろけてしまう。どうやら足を挫いたらしい。抄司郎は刀を鞘に収めると,女に背を向けて腰を屈めた。[おぶってやる。]と言う意味だ。『いえ,私は大丈夫ですから。』女は勿論断ったが,抄司郎は小さな溜め息をつくと半ば強引に女をおぶった。『その足では帰れないだろう。』『‥申し訳,御座いません。』女の
    沖田 穂波 さん作 [419]
  • 人斬りの花 8

    2-3 椿『お侍さん。』 女は短刀に手をかけたまま動かない抄司郎に声をかけた。『私を斬るのですか?』抄司郎は黙り込んだ。女の澄んだ視線が痛い。『斬るならば早く。じきに追っ手が来てしまいます。』と,女は抱えていた刀を抄司郎に渡した。死を恐れていないのか,顔色を何一つ変えない。『見つけたぞ!!人斬り野郎!』その時,堤の向こう側から数名の追っ手が現れたと思ったら,抄司郎と女は辺りを敵に囲まれた。『京右
    沖田 穂波 さん作 [412]
  • 人斬りの花 7

    2-2 椿抄司郎の時が止まった。女は落ちた刀を拾い上げ付いた血を丁寧に拭き取っている[可哀想な人。]女のこの言葉が何度も思い出された。― 自分は可哀想な人間なのだろうか?こんな事は,今まで考えたこともなかった。あまりに難しい問題に悩まされそうだ。『おい,そこに居るのは誰だ!?』京右衛門の仲間らしき人物の声で,抄司郎はやっと我に返った。『人斬りだ!!お前達,出はえ!!出はえ!!』絶命している京右衛
    沖田 穂波 さん作 [416]
  • 人斬りの花 6

    2-1 椿四年が過ぎ,抄司郎はこれまで何人もの人を斬った。それは,いつの間にか町の人々に[人斬り]として恐れられる程になっている。だが,何度剣を振るっても未だにあの刀傷の娘の消息は不明だった。『大海屋の京右衛門をひと月以内に斬れ。』尽きる事のない武部の命令がまたもや抄司郎を締め付ける。― 自分は何故人斬りとなったのだろう。抄司郎には常にこの疑問がつきまとった。武部が現れなければ,師匠の道場の跡取
    沖田 穂波 さん作 [480]
  • 人斬りの花 5

    1-5 出哀『お前,石澤の娘を斬らなかったそうだな。』武部がついさっき帰宅したばかりの抄司郎に言った。抄司郎はまだ返り血と雨に濡れた姿のままだ。『「斬らなかった。」のではなく,斬れなかったんですよ。』抄司郎は俯いた。ポタポタと血の入り混じった雨の雫が,地面に絶えず落ちる。武部はその汚れた地面を嫌らしそうに見てから,『私は‥親子共々斬れと言った筈だが‥。』と抄司郎を睨んだ。『娘は,盲目でした。』『
    沖田 穂波 さん作 [497]
  • 人斬りの花 4

    1-4 出哀『人を‥,斬れと言うのですか。』抄司郎がその事実を知ったのは,武部に雇われてからひと月程経ってからだった。いくら「負けなし」の抄司郎でもそれは道場試合での場合のみ。本物の刃を人に向けた事などなかったが,道場を潰すと脅され,引き受けざるをえなかった。†その日は激しく雨の降る夏半ばの事だった。抄司郎は今日,人を斬らなければならない。人を斬ると言う現実から今すぐ逃げ出したい心持ちがする。激
    沖田 穂波 さん作 [499]
  • 人斬りの花 3

    1-3 出哀抄司郎は14の時,武部嘉市郎(たけべ かいちろう)に人斬りとして雇われた。闇商業を密かに営んでいる武部は,自分の商業の邪魔になる者は全て消し去りたかった。それは,卑劣な事に,同じ商業仲間や,昔の同士,身内にまでに至る。その為には,当然腕の立つ剣客が要る。そんな時,鞍和抄司郎の噂を聞きつけたのだ。「鞍和の負けなし。」その噂に,武部は惹かれた。完璧主義者の武部は,勝つ事しか知らない抄司郎
    沖田 穂波 さん作 [505]
  • 人斬りの花 2

    1-2 出哀日は沈んだ。月明かり無しでは先が見えない程,辺りは闇に包まれている。人斬りの噂のせいで,出歩く者の姿は殆ど見当たらない。『松葉宗蔵殿とお見受けする。』抄司郎は,抜刀し,夜道を歩く男を呼び止めた。男は酒に酔っているらしく足元がおぼつかない。『な,何でェ貴様は!?物騒な物持ちやがって。俺に一体何の用だ!!』抜刀している抄司郎を見て怯えたように男は言った。『松葉で,間違いないのだな。』抄司
    沖田 穂波 さん作 [478]
  • 人斬りの花 1

    1-1 出哀『やだねぇ,また人斬りが出たそうだよ。』そう旅籠屋の女将が噂した。人斬り。それは,今,何人もの死者を出している。死んだ者は武士に商人と多彩だったが,皆,一太刀で即死だった。正体は不明。だが,よほど腕が立つ者だと言う事は,誰が見たって分かる。「夜道を歩けば 殺される。」そう囁かれる程,その人斬りは人々を恐怖に陥れていた。『あ,こらあんた,外を出歩くのは止めときな。時期に日が暮れる。人
    沖田 穂波 さん作 [619]
 
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