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一月 さんの投稿された作品が32件見つかりました。

 
  • 月への階3

    山間の小さな町は、ひっそりと夜の闇に沈んでいた。完全に眠りについた世界を、青白い月光が優しく照らしている。紺碧の夜空に、白銀色に輝く階段が伸びていた。遠くから見るとそれは白い虹のようにも見えた。その階段を、一心に上り続ける少女がいた。淡いブルーのパジャマのままで、白い光の階段を一歩一歩、裸足で踏みしめていく。不思議なことに上れば上るほど、月はみるみる近づいてきた。でこぼことした表面がしだいに鮮明
    一月 さん作 [228]
  • 月への階2

    それはよく晴れた満月の夜だった。ふと真夜中に目が覚めた。開けっ放しの窓から、煌々と青白い月明かりが少女の顔を照らしていた。ひんやりとした外気が音もなく入り込んでくる。少女は窓を閉めようとして、思わず目を見開いた。階段が伸びている。しかも少女のいる窓辺から、真っすぐ月へ向かって。こんなことは初めてだ。いつもはだだっ広い場所にぽつんとあるだけなのに、こんな所に現れるなんて。階段は無言のまま、まるで少
    一月 さん作 [215]
  • 月への階(キザハシ)

    その少女には昔から不思議なモノが見えた。よく晴れた日に、何もない空間に目を凝らしてみると、空へと続く透明な階段が見えてくる。他の誰にも見えない。少女にしか見えない、不思議な階段。ある時少女は試しに階段を上ってみたことがある。プラスチックのような素材で出来ていて、意外に丈夫なのがわかった。しかし地上が透けて見える上、手摺りも何もないために、二階程の高さまで上ったところで足がすくんでしまい、それ以上
    一月 さん作 [220]
  • 遠恋

    今宵も君と恋をしよう目蓋の裏に暗闇を飼い、その中に浮かぶ白い月伏せた睫毛の隙間から、優しい夢想が空に舞う繋いだ手と手が離れぬ様に、堅く心で結び合わせて夜風に乗って、雲の彼方へ時折泣いてる君の涙は溢れてしまった愛の塊抱えきれない、愛しさ抱いて僕らは今宵も恋をする永遠に明けない恋をする
    一月 さん作 [358]
  • 花冠8

    「きっと誰もこなくなって寂しかったんだろうな。久しぶりにお客さんが来て嬉しかったんだと思うよ」マスターの言葉を思い出しながら、旅人は森の道を歩いていた。薄暗い道から急に開けた場所に出ると、真っ白な光のなかにあの花畑が揺れていた。旅人はおもむろに花畑の中程まで分け入っていった。そこは昨日、少女が立っていた場所だった。花々に埋もれて、小さな墓石が3つ並んでいる。積もっていた枯葉などを払ってきれいにし
    一月 さん作 [223]
  • 追憶

    晴れ渡る空に追憶を見てる君のかすかな歌声が聞こえた夜も更けて外は雨霧の先灯る虹かんざしの煌めきが僕の喉を掻こうとも煙る里錆の臭い鼻を突くそれら全てが君を遠ざける疎ましい…僕に力があったなら全て消し去ってみせるのに…荒ぶれて町の隅充ちるのは血の臭い君恋し夏の暮れあの日には戻れない…
    一月 さん作 [221]
  • 花冠7

    まだ新しい道路ができる前までは、皆あの森を抜ける道を通って隣の町まで行っていた。故に、森で暮らす一家とはほとんどの町人が顔見知りだったのである。人が好きで、よく疲れた旅人などが通りかかると無償で宿を貸し、手厚くもてなしていたという。十年ほど前、一人娘が隣町に嫁に行くことが決まり、娘は毎日家の前に咲く花をせっせと摘んでは、花冠とブーケを作っていた。通りかかった人が声をかけると、恋人のことやその家族
    一月 さん作 [220]
  • 花冠6

    旅人は町へ戻るとすぐ、街角にある年季の入った洒落た珈琲店に入った。カウンターに座り、お絞りを持ってきた店員にウィンナーコーヒーを注文する。すると、カウンターの中にいたマスターが旅人に気付き、声をかけてきた。「おや、あんた昨日の旅人さんじゃないか。まだこの町にいたのかい?」町外れのあの道を教えてくれたのは、このマスターである。旅人は昨日もこの店を訪れていた。「いえ、一旦はあの道を通ったんですが、ど
    一月 さん作 [308]
  • 花冠6

    4人で囲んだテーブルは、一晩のうちに数年分の時を重ねて、灰色に変色していた。煉瓦やその破片が散らばる中、昨日と同じ場所にそれは置かれていた。旅人がそっと手に取ると、すっかり枯れはてた花冠はカサリと音を立てて、崩れ去った。旅人は朽ちかけた椅子に座り、変わり果てた景色を眺めながら、しばらくの間考え込んでいた。だが、どんなに考えても夢とは思えない。かといってこの状況の説明もできない。それからまたしばら
    一月 さん作 [195]
  • 花冠5

    翌朝、耳元で草がさわさわと風にそよぐ音で目が覚めた。うっすらと目を開けると、透き通る青空が広がっていた。寝る前は確かに天井だったはずだ。勢い良く体を起こし、辺りを見回して旅人は愕然とした。旅人が泊まった家は、一晩の内に崩れ落ちて廃墟と化していた。屋根が崩れ落ちて、ぽっかりと穴の開いた天井から青空がのぞいている。傾いた家の重圧でガラスが砕け散っている窓からは、庭の白い花畑が見える。床も所々朽ちて抜
    一月 さん作 [192]
 
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