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一月 さんの投稿された作品が32件見つかりました。

 
  • 花冠4

    旅人の話は尽きることなく、この地を離れたことがない少女にとっては、どれも夢物語のようだった。瞳を輝かせてさも嬉しそうに楽しそうに話を聞く少女を見て、旅人もまた時間を忘れて話続けた。そうしている間に日は西に傾き始め、母親が町から帰ってきた。少女に似て可憐で、優しげな女性だった。日が暮れかけていることを知り、慌てて旅人が立ち上がると、母子から泊まっていくように勧められた。「いや、それは申し訳ないので
    一月 さん作 [204]
  • 花冠3

     花柄のティーカップとポットをお盆に乗せて、少女が戻ってきた。 目の前に置かれた白い湯気の立つカップを手に取り、口を付ける。なんとも清々しいハーブの匂いが、鼻腔に広がった。 「この花冠とブーケは君が作ったのかい?」 旅人が尋ねると、少女は顔を綻ばせて、 「そうよ。可愛いでしょう?もうすぐ完成するの。そしたらこれを被って、ブーケを持って、白いドレスを着てお嫁に行くの」 少女の頬が薔薇色に染まり、若
    一月 さん作 [325]
  • 花冠2

     銃口の先には呆然と立ち尽くす少女がいた。両手にはいっぱいの花を抱えている。まるで花の化身のような可憐な少女だった。 少女の瞳に怯えの色が浮かんでいるのを見て、旅人はすぐに銃をしまった。 両手を挙げ、ひらひらしてみせると、ほほ笑みながらこう言った。 「失礼。狼でも飛び出してきたのかと思ってね。恐がらせて悪かった。ほら、もう何も持っていないから安心しておくれ」 旅人の態度に安心したらしく、少女は強
    一月 さん作 [213]
  • 花冠

     とある旅人が旅の途中で、白い花畑を見つけた。 前の町の人間から近道だよと教えられたのは、町外れの深い森の中を突っ切る細い道だった。 かつては近隣の町の交通の中心で、人通りも多かったが、新しく道路ができてからは、通る人もほとんどおらず草木が茂り、荒れた獣道同然となっていた。 新しい道路は、近隣の町をぐるりとつなぐ環状線になっており、遠くを目指す旅人にとってはこの旧道を通ったほうが都合がよかった。
    一月 さん作 [302]
  • 私的理論

    さすらう街の今日もどこかで誰かが呼吸を繰り返す小さな区画の中に一体いくつの夢が詰まっているのだろう人の出入りが激しいこの街では星を数えるよりも難しい欲望を美化して「夢」と呼ぶ欲望は人を滅ぼすが生きる糧ともなる欲をなくした人間はただ安らかに死を待てるしかしそれは散々欲に振り回されて苦界を生きてきた後に得ることのできるもの幸せは必ず不幸の後に来るだから今はまだ死なないで…この世の闇を見た者だけがささ
    一月 さん作 [204]
  • 目覚めなければあなたといれたの?あの夏の日はただの幻恋しい想い胸を焦がして二度と戻らない過去を見送る雪は大地を白く染めて凍てついた窓辺に息も凍るあなた以外の温もりなど欲しくはないそれならいっそ死をください近くにいた夏の青空は今は遠く白く濁っているあなたは今何をしてるの私は今でも想ってるよあの夏は遠い夢幻そんなこと言われなくても気付いてるだけどね信じたくもないから今まで見て見ない振りをしてきたの本
    一月 さん作 [277]
  • 多面体

    見えないものは仕方ないから無理に見ようとしなくていい見えないものは仕方ないから見えてる振りもしなくていい君に見える景色と僕に見える景色は違うから君に見えないものは僕が代わりに見てあげる僕に見えないものは君が代わりに見てほしいこの世に別々の人間として生まれてきた意味は僕にも本当のところはわからないけど君が僕に見えない景色を見ることができるから僕には見えない景色を知ることができるんだ君は君で僕は僕一
    一月 さん作 [214]
  • 旅路

    夢の続きは果てもなく夜空の光導いて朽ちかけた杖をつきながら未来への出口を探している照りだす朝日眩しくて僕の瞳を焼き尽くす黒く穴の空いた僕の目は月を探して涙するどこまで行けばどれだけ傷付けばささやかな安息を得られるのでしょうか闇は果てなく光は遠く人の温もりは忘れたままでいつか差し出されたその手を払い除けてここまで来た独りがこんなに辛いなんて想像もしなかったから募るのは後悔ばかり僕はどれほど愚かしい
    一月 さん作 [205]
  • 深淵

    時の狭間に零れた涙君は拾ってくれるだろうか僕は今でもこの岸辺から暗い水面を見つめている誰かが零した君の軌跡辿り僕はここまで来たんだ深い水面の底は見えないけど君が泣いているような気がしてあまりに深すぎて飛び込めずにいる僕は岸辺をうろうろと彷徨うだけで君の痛みなんて知ろうともしなかった君を追い込んだのは僕なのに今もまだ君を傷付けている後悔で歪んだ景色溢れた涙の一粒が水面に落ちて波紋を描く水の底まで届
    一月 さん作 [242]
  • 四季慕情

    花びら舞散る君の面影春は遠く夢と霞んで巡る季節僕は独りで青い空に願いを託した振り止まない雨濡れた窓硝子に光る雫白い花弁が窓を飾る君の髪飾りを思い出した幾つも幾つも時は巡り二人の残像も色褪せて朽ちるままの僕とは違い思い出は輝きを強めてくどうして君はいないのだろう隣にいることが当たり前で今は温もりが失せた二人掛けのソファ右側だけが冷えている花火が舞散る君の面影夏の気配が掻消していくどんな人でも君じゃ
    一月 さん作 [242]
 
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