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翔 さんの投稿された作品が100件見つかりました。
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アニキ【4】(全7話)
「…すみません」俺は情けないくらいに、月並みな言葉しか言えなかった。――その日は長い一日だった。誰も口には出さないものの、俺には何となく距離を置いているのが分かった。俺は俺で、黙々と仕事をこなすことで、気まずさを必死に埋めようとしていた。気が付くと夕刻になっており、いつもの調子に戻ったアニキが俺のところにやって来た。「翔ちゃーん!今晩、コレッ、飲み行く?」そう言ってアニキはクイッと手首を返した。
翔 さん作 [900] -
アニキ【3】(全7話)
その瞬間、前にいたアニキの足が、俺の踏み出した右足の上にギュッと乗っかり、俺は声にならない声で「ア…」と叫んだ。同時にアニキは前に向かって歩き出し、取締役に対し深々と頭を下げた。「今回の件については、チームリーダーである私が全責任を負っており…ここにいるメンバーは…全く関知しておりません。この度は大変…申し訳ありませんでした」穏やかな口調ながらも、決意に満ちたアニキの迫力に圧倒され、身動き出来な
翔 さん作 [979] -
アニキ【2】(全7話)
アニキはいつも明るく、誰に対しても人なつこかったので、友達も大勢いた。俺はそんなアニキの性格を羨ましくも思ったし、尊敬もしていた。またアニキはこんなことも言っていた。「良くも悪くも人にレッテルを貼っちゃダメだ。人には、色んな一面があるんだから」――いい言葉だと思った。それ以来、俺は営業回りの時に、いくら嫌いな奴が相手でも、そいつの良い部分だけを一生懸命探すよう努力した。そんなアニキのことだから、
翔 さん作 [978] -
アニキ【1】(全7話)
薄汚れたオフィスの片隅で、古ぼけた業務用エアコンがカタカタ鳴っている。事務所には俺一人だけ。僅かに開いたブラインド越しには、夏の夕暮れの日差しが、淡く差し込んでいた。――土曜日だ。いい加減もう帰らなきゃ。俺は自分にそう言い聞かせながらも、平日たまった事務処理を終えると先程から中断していたデスクの中身の整理に再び取り掛かった。デスクの真下の引き出しを引っ張り出すと、ばらけたクリップや付箋がスチール
翔 さん作 [973] -
生きる
ぼくは生きるぼくを産んでくれたお母さんのためにぼくは生きるぼくを抱きしめてくれたお父さんのためにぼくは生きるぼくを優しく包んでくれたおじいちゃんおばあちゃんのためにぼくは生きるぼくと毎日遊んでくれた、犬のジョンのためにぼくは生きるいつも声をかけてくれた八百屋のおじさんのためにぼくは生きる真剣な目でぼくを叱ってくれた先生のためにぼくは生きるぼくをかばってくれた、ぼくの友達のためにぼくは生きるぼくの
まどか さん作 [744] -
ストローハットの想い出
アタシは上司に頼まれて、駅近くの取引先に届け物をすることになった。近道のつもりで入った路地の途中で道に迷ってしまい、行ったり来たりするうちに、見慣れないアーケード街に出た。そのアーケード街は平日の日中にも関わらず、大半の店がシャッターで閉ざされており、こと静寂さでは閑静な住宅地にも引けを取らなかった。数少ない営業中の店で、アタシは一軒の帽子屋を見つけた。薄明かりのついた店内には、品揃えは僅かで且
まどか さん作 [905] -
月のラブレター
――好きですたった4文字が言えなくて私は今夜もあの月を見つめるそしていつもと同じように震える指で月のキャンバスに向かって心にしまったままの4文字をなぞる貴方がいつか読んでくれることを待ちながら
まどか さん作 [646] -
ハーフムーン (62)【最終回】
ミユキは、そっと障子を閉めると、ようやくトイレへと向かった。ショウにも、そしてマモルにも、こちらから話し掛けることはしなかった。『ハーフムーン』の打ち上げは、まだ続いていた。中では、亀山がこう喋っていた。「いや〜それにしても、今回の映画は低予算でしたね〜。出演者は皆、何役もこなすし、抽選会の景品は出演者の私物だし、ミステリーツアーの場所は近くの無人島だし、飛行機はセスナ機だし」「セスナは操縦して
翔 さん作 [1,110] -
ハーフムーン (61)
ミユキは、明日香と運転手という組み合わせに少々面食らっていたが、視線はすでにマモルの側に集中していた。マモル自身に、居なくなった理由を問いただしたくて仕方が無かったからだ。マモルは誰かと喋っていた。鼻にタバコを刺して立っていた抽選会の男がフラフラ移動すると、陰に隠れていた人物が姿を現した。――それは紛れもなくショウだった。ショウとマモルは、周囲のお祭り騒ぎとは関係なく、真面目な表情で話していた。
翔 さん作 [948] -
ハーフムーン (60)
アルバイトがマスターに言った。「どうだい?今回マスターをやってみて。勉強になったか?」「はい社長!今回『スナックメラミン』そして『カフェパンデミック』のマスターを演じさせていただいて非常に勉強になりました。将来は本当のマスターになれるよう日々精進します」「ウム…よし。まずは、私が演じたように、ティッシュ配りから始めてくれ」二人のやり取りを一部始終見ていたミユキは“労使逆転”のその展開に、頭の整理
翔 さん作 [915]