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シラ さんの投稿された作品が8件見つかりました。
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Raven Curse 《序章―8》
ソラの意味深な口調に、僕は訝しげに眉根を寄せる。彼女は、溜息混じりに言葉を続けた。「あんたはこの現状を諦めてる。理不尽な世界だと内心思いながらも、それを嘆いても無駄だと分かってる。犯罪者の息子というだけで、誰もディア君の言葉に耳を貸してはくれないもんね」ソラは憐憫や憤慨を含むような声音で、淡々と言葉を紡ぐ。「だから、いっそこの現状を受け入れて、順応していこうと考えた。その方がどんなに気が楽か。苦
シラ さん作 [148] -
Raven Curse 《序章―7》
ソラの提案で、僕らは今、駅前のファミレスで、遅めの昼食を取っている。店内は明るく開放的で、清潔感のある、至って普通のファミレスだった。此処はソラのお気に入りらしく、今日のような悪天候の日はよく訪れるという。その理由は、家に近く、また、天気の悪い日は客足が少なく、居心地が良いかららしい。確かに先程から雨足が強くなったせいか、昼過ぎだというのに客は数えるほどしかいなかった。しかし、彼女が人の雑多で賑
シラ さん作 [191] -
Raven Curse 《序章―6》
それから一時の沈黙が訪れた。ソラはフェンスに背を預け、視線をアスファルトに落としている。それを横目に、僕は欠伸をしながら立ち上がった。湿気を孕んだ涼風が髪を撫で、心地よさを感じる。「さっきはごめんね。私、余計な事しちゃって…」沈黙を破ったのは、ソラの沈んだ声だった。「私が勝手に騒いで、あんたにまで迷惑掛けちゃって…。本当にごめんなさい!」彼女は急に頭を下げた。その唐突な行動に内心戸惑いを隠せない
シラ さん作 [180] -
Raven Curse 《序章 ― 5》
「いい加減にしなさいよ!あんたら授業中にまで、人の悪口言ってて恥ずかしくないの!?」彼女は凄まじい剣幕でまくし立てた。それは雷の如く教室内に轟き、生徒達は麻痺したように、体を強張らせる。しかし先生は動じた様子もなく、溜め息混じりに言った。「静かにしろソラ。授業中だぞ」「その授業は破綻してるじゃないですか、先生。下らない私語に夢中で、ほとんど皆先生の話なんて聞いてませんよ。そんなこと先生も気付いて
シラ さん作 [184] -
Raven Curse 《序章―4》
「えー、次にこの2式を連立させて―」チョークが黒板を叩く乾いた音と先生の凛とした声音が周囲に響き渡り、独特の調和を奏でている。だが、それを傾聴する生徒は少ない。教室の大半は、専ら私語の領域で占められていた。その内容は一律で、彼らの口調や仕種が、不穏な空気を醸し出している。「ねー、知ってる?先日転校して来た子――ほらあのディアって子、例の殺人事件の―」「うん私も聞いた。“あの女”の息子なんでしょ?
シラ さん作 [167] -
Raven Curse 《序章―3》
照明の白い光に包まれた室内で、僕はボーッと窓外の景色を眺めていた。幾重にも連なる重厚な雲が、天空を灰色に染め上げている。それは地上に影をもたらし、おおよそ朝に似つかわしくない陰鬱な空気を醸し出している。朝から嫌な天気だな…。窓から目を反らすと、対面に座る父が目に入る。父は新聞に目を通していた。その瞳は虚ろで、どこか沈んでいる。「では次のニュースです。深夜2時頃、○○の民家で妻が夫に刃物で刺され、
シラ さん作 [170] -
Raven Curse 《序章―2》
男の小さな呟きは、無機質に、そして、無慈悲に紡がれる。それはすぐさま闇に溶け、警官達の耳には届かない。だがその余韻は確実に、彼らへ死の警鐘を鳴らす。男の数メートル後方、2人の警官も、同時に視界の隅に光を捉える。しかし彼らの瞳に映るのは、写真立てに入れられた一枚の写真。そしてその傍らに添えられた花束の数々。ただそれだけだった。だから男の唐突な行動が、理解出来なかった。彼はその空間に左足を突き出し、
シラ さん作 [163] -
Raven Curse 《序章―1》
夜の帳に包まれた暗澹たる世界。深夜の街中を、一人の男が疾走している。時折通過する街灯の光が、男の容姿を照らし出す。その姿は異様だった。黒のジャンパーに映える夥しい血痕。手に持つ血濡れのナイフが、不気味な光沢を放っている。その男を、2人の警官が追い掛けている。彼等の怒号は周囲に響き渡り、夜の静寂を侵蝕している。それは男の耳朶を打ち――しかし、男は速度を緩めることはない。路地裏に駆け込むと、闇を切り
シラ さん作 [199]
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