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高橋晶子 さんの投稿された作品が46件見つかりました。
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彼の恋人(最終話)
2年後、暁は仙台で遅れてきた青春を満喫していた。一浪して東北大理学部に入学し、研究漬けの一方で地元の女子大生にモテまくっている。桜庭の同級生とはほぼ疎遠となってしまった。恋愛禁止、志望校を滑って鬱屈としたあの時代に誰も戻りたくないからだ。ただ一人、親友の惇とは頻繁に連絡を取り合っている。惇とのメールのやり取りを通じて初めて、博文達の近況を知る事になる。2年生になって初めて惇からメールが届いた。仙
高橋晶子 さん作 [340] -
彼の恋人
3月下旬、博文達は奈良公園にいた。臨だけ進路が決まらず、後期で受けた奈良女子大に望みを賭けていたのだ。結果、全員の進路が決まったので、鹿と戯れている訳だ。みくも泉も鹿を餌に博文に誘われて、鹿の餌付けを楽しむ。ベンチで休んでいる孝政は、それぞれの進路をざっとおさらいする。「僕は彩子さんと祥恵ちゃんと同じ富山だけど、キャンパスはバラバラ。亜鶴は近畿の農学部で、關君は横浜国立、みくちゃんはお茶女で、野
高橋晶子 さん作 [284] -
彼の恋人
3月、桜庭学園は89人の卒業生を送り出した。この時になって、桜庭の有り難さに初めて気付く生徒が現れる。野暮ったい制服を通じて精神力を鍛え、恋愛禁止の青春は恋愛に年齢は関係ない事を学ばせたのだから。しかし、最後の最後まで皮肉をぶちまける者がいる。「ふー。これでこの可愛げのない制服とおさらば出来るよ。先生はみんな親身だったけど、保守的な価値観に囚われてるから尊敬したり感謝する義理はないわね!」「泉ち
高橋晶子 さん作 [118] -
彼の恋人
「大東亜帝国でないって事は、日東駒専クラス?」「ううん。そんなもんじゃないわよ。推薦で明治学院に進むのよ」「成成獨國武クラスじゃないか? 藩校のプライドとしては日東駒専に受かったと言える雰囲気じゃないから、よく腐らず藩校を意識して頑張ったもんだよ。後は夢に一歩一歩近付くだけだな」玄関から物音が聞こえる。克彦が買い物から帰宅したのだ。「ただいま……ん? みく、誰かお客さん入ってるのかい?」自分のス
高橋晶子 さん作 [125] -
彼の恋人
普段は穏和なみくが突然口調を荒らすので、博文はビクリとした。一見生真面目な暁が実は臆病者だと知り、みくは暁との絶縁を他校生に仄めかす程幻滅している――そうでなくても、自分の思う通りにならずに不貞腐れている連中とは絶縁する事にしているが。大学で何を学びたいか、センター試験の反省会ではろくに話していなかった。みくから話を振る。「私の所の連中は公立の子に負けたくないだけで、大学に受かる事が全てなの。そ
高橋晶子 さん作 [171] -
彼の恋人
1月末、学年末試験が終わり、大学受験は臨戦体制を整える。足早に帰宅する博文は外へ漏れる電子ピアノの調べにふと足を止める。真っ昼間にドビッシーの「月の光」である。克彦が定年後の暇潰しに電子ピアノを弾いているのではないかと思い、久し振りにみくの家に押し掛ける。しかし、応対に出たのはみくだった。「博文君は、今学校の試験が終わった所なの? 私のとこはセンターが終わってすぐ学年末試験があって、今週から自由
高橋晶子 さん作 [198] -
彼の恋人
既にセンター試験を終えていた博文、臨、孝政、彩子の4人は、夕方6時頃からファーストフード店で裕介と州和の到着を待っている。孝政は眠気と食欲を抑えながら店内の壁掛け時計に目を向ける。「7時10分前! そろそろ二人が来る頃かな?」噂をすれば影ありで、裕介と州和が店に到着した。何故かみくと暁も一緒に店に入って来たので、孝政の眠気は一気に吹き飛んでしまった。臨が暁の姿に反応する。「ギョーパン!?」暁は顔
高橋晶子 さん作 [270] -
彼の恋人
センター試験が始まった。小雪が舞い散る中、桜庭学園の特進クラスの生徒は教師達に見守られながら2日間の戦いに臨む。全ては、大学こそ思い通りの進路を歩むためだ。「今時の青春」を犠牲にしてきた3年間が報われるチャンスがセンター試験である。だから彼等の熱意は修学館や青海の生徒達に引けを取らないという自負がある。暁は高校生活を振り返り、感嘆を込めて言い切る。「皮肉なもんだよ。大学に受かりさえすれば、出身高
高橋晶子 さん作 [136] -
彼の恋人
冬休みが明け、青海高校に生徒の活気が戻ってきた。予備校に通い詰めたり、親戚付き合いで正月が終わったり、スキーやスノーボードを満喫したり、カウントダウンライヴで新年を迎えたり……それぞれの年末年始を過ごしたようだ。亜鶴達4人は、年が明けて初めて顔を揃える。亜鶴と彩子は予備校の講習会で博文達に会った時の出来事を祥恵と州和に話す。「博文ねぇ、佳純さんが夢に出て来て告られて、キスされる所で目が覚めたんだ
高橋晶子 さん作 [142] -
彼の恋人
雪がぱらつく早朝、博文はいつものように一番乗りで教室に入って来る。だが、博文の席にはいる筈のない人物が座っている。佳純だ。しかし、佳純は2ヶ月以上前に死んだ筈だ。博文は佳純に一声掛けてみる。「佳純さん?」博文の声にビクリと反応した。博文の方に顔を向け、開口一番で「おはよう!」と言い放つ。不思議な場面だ。2ヶ月程前まで夜の授業を受けていた佳純が早朝の教室に一人佇んでいるのだから。博文は呆然としてし
高橋晶子 さん作 [140]