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マリリン さんの投稿された作品が35件見つかりました。
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最後の審判 4
「ねぇ。あなたの家にはまだ着かないの?」理亜は、聖也に同じ質問を何度か繰り返した。 理亜は彼の家へ辿り着くことが、待遠しくてしかたがなかったのだ。そこは、まるで彼女が生まれる前から定められていた落ち着き場所のような気がして彼女にはならなかった。コスモスの野原を超え、雑木林を超え、小川が流れるクネクネとした小道を抜け、いい加減、理亜の足が疲れて棒のようになった頃、「あそこが僕の家だよ」と
マリリン さん作 [341] -
ある風景 ? マイナスのチェーン
フミは、自分の恋愛感情が正常ではないのではないかと苦悶した。「康は、私が依存している母親の身代わりだけなんじゃないかしら? 彼の自分に対する愛が真実かどうか、母親と比較しながら彼の行動の一挙手一投足を、私はいつも監視しているわ。」最近、ニュースで若者の犯罪が頻繁に報じられている。その若者達が育ってきた家庭環境になんらかの問題があったのではないかという説もある。犯罪者には、社会に対する根深い
マリリン さん作 [359] -
ある風景 ? 不倫
フミは康の背中に、彼の妻の顔がちらつくような気がしてならなかった。まだ会ったこともない女性の顔が…一方でフミと過ごした後の康が、どんな表情で妻のもとへ帰るのか、それを想像すると、彼女はいかにも複雑な心境にかられた。平然として妻に応対できるのであれば、それは彼の狡さや不誠実の証明のように思えたし、かと言って妻に悟られて、彼女をひどく傷付けるのはフミはなおさら嫌だった。 それでいて妻と一緒の休日の康
マリリン さん作 [466] -
ある風景 ? 不倫
フミが恋に落ちた青年の名は「康」といい、彼には妻子があった。 フミが何故、フリーではない男性をえらんだのか…それは父親の存在を否定している彼女にとって、やはり同じ男性である恋人にも否定的な態度が現れてしまい、現実に手に入れられる男性よりもむしろ、永遠に自分のものにはならない男性を、無意識に選んだのかもしれなかった。それでも康の胸に抱かれている時のフミは、幸せだった。生まれて初めて母親以外の人間で
マリリン さん作 [408] -
最後の審判 3
いつの間にか、理亜は近くの公園に来ていた。そして、その公園のベンチに、聖書を大事そうに抱えて座っている一人の青年に、理亜は唐突に話かけていた。「私は、どこにも行くあてがないの。 あなたの家に一緒に連れていってくれない?」こう言いながら理亜は、何故こんなことを、見ず知らずの青年に頼んだのか自分自身でも驚いていた。「いいですよ。でも僕の家はとても貧しいですよ。それでも良ければ一緒に行きましょう」少し
マリリン さん作 [365] -
ある風景 ? 家庭崩壊
フミは、母親依存症だった。その原因の一つとして、彼女の父親が、仕事一筋で全く家庭を省みようとしない男であったことが、考えられる。フミの母親は、そんな夫といつも口喧嘩が、絶えず、父親不在のような家庭で、次第に母親は、娘のフミにしか、生き甲斐を感じられず、異常な執着心を娘に持つようになっていった。フミ自身も、イジメにあった経験から、そんな母親に救いを求め、癒着の関係が、母子間でできあがってしまってい
マリリン さん作 [431] -
最後の審判 2
理亜は、這うようにして、寛の魔の手から、逃げまどう。台所へ、風呂場へ… 風呂場では、浴槽に顔を沈められて窒息しそうになりかけた。 やっとの思いで、家の外へ逃げ出した理亜は、フラフラと放心状態で、真夜中の街を、行くあてもなく彷徨いだした。 「何故、あそこまで、寛は激怒したのか?」理亜には、さっぱり理由がわからなかった。むしろ神への祈りこそが、唯一
マリリン さん作 [375] -
最後の審判
「こんな、塩水を、俺の顔に塗りたくりやがって。 お前の眼にもすり込んでやる〜!!」寛は、絶叫して、聖水の器を理亜に投げ付けた。それは、その夜の地獄の幕開けであった。理亜は、その日、後田神父からもらった聖水を、祭壇に飾り、夫である寛への祈りために、今まさに、彼に、聖水で十字をきったところだった。理亜は、夫への全くの愛情からした自分の行為が、何故、寛を激怒させたのか、理解できず茫然としていた。
マリリン さん作 [475] -
ある風景 ? 荒廃
世の中の大半の人間は、自分の利益しか考えていないように、フミには思えた。 その社会から、はじき出された者は、自ら命を断ったり、引きこもり、ニート、依存症、犯罪… あらゆる落後者の道を辿っていく。 社会での勝ち組、負け組。生きることに、一体、勝ち負けがあるのか? 自分が、幸福だと感じられれば、すなはち、それは、勝ちだとフミは、思う。人々は、マスコミに踊らされ、自らの煩悩に目が眩み、必死で、自分
マリリン さん作 [406] -
ある風景
フミは最近、すぐ「疲れたなぁ」と呟いてしまう。ニュースでは、気味の悪い事件の報道ばかり流れ、フミの周りの人たちも、それぞれの悩みやそれぞれの疲れのために、どこか皆、不機嫌な表情をしていた。 誰も他人のことを、考えられる余裕など持ちあわせていないように見えた。 例えば、フミが住んでいるような大都会では、ホームレスの人達が、駅で倒れていることなど、日常茶飯事で、誰も気に留める通行人はいなか
マリリン さん作 [362]