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RIE さんの投稿された作品が16件見つかりました。
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人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-15]
「秀は、俺の兄貴」「……………………………………………はいっ?」「初めまして、龍太郎の双子の兄です」「……………………双子の兄?」「うん、そうだよ」「…………………」 依代はやおら龍太郎を指指すと、「この人の?」と聞き返した。「うん、そこの『ちぇけらっちょ?』って言ってそうな恐いお兄ちゃんの兄です」「…………?」 うわぁー、と依代は内心で声を上げた。 この顔と服装で『チェケラッチョ?』はないだ
RIE さん作 [188] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-14]
「いらっしゃい、依代さん」 そう言って出迎えてくれたのは、これまた田舎に不似合いな青年だった。 こちらもすらりとした長身だったが、龍太郎とは違って大人しい格好をしていた。シャツにジーンズといった軽装で、肩より長い、まっすぐな髪を一つに束ねている。銀縁眼鏡の奥で優しげな光を浮かべている目は、切長で整った形をしていた。すっと通った鼻に、弧を描く眉と、なかなかの美青年である。どこかの有名大学でエリート
RIE さん作 [208] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-13]
和洋を問わずに鉢植えに植わっている、サルビア、キキョウ、ダリア、ヒャクニチソウ、鳳仙花、立ち葵なんかも綺麗だった。 美しい庭に、依代は目を奪われた。「綺麗だろ?」 龍太郎が言った。「全部俺が世話してるんだぜ。枝切りから水やりから草取りまで、全部な」「うそ…植木職人がやったのかと思った」 依代は素直に驚いて言う。それほどに素晴らしい庭だったのだ。日の光を受けて庭全体が輝いて見える。こんなにも広
RIE さん作 [186] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-12]
― 恐ろしくその場に不似合いな男である。 山男はにかっといたずらっぽい笑顔を浮かべると、己の背後を親指で指して言った。「疲れただろ?ここめっちゃ山奥にあるからな。この俺ですら、登るのに苦労するぜ。まぁ立ち話もなんだからよ、とりあえず中に入れ。あ、そうだ自己紹介がまだだったな。俺は龍太郎だ。よろしくな」― この龍太郎とかいう男、案外お喋りであることがたった今判明した。 依代は未だに身構えながらも、
RIE さん作 [185] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-11]
ギギィ―……… 不意に錆びれた鉄が擦り合う様な音をたてて、門が開いた。 依代は驚いてわずかに後退した。― こんな山奥に建つ古い屋敷だ。ヤマンバかなんかが出てくるのだろうか…? しかし、門から出てきた者は、依代の想像を遥かに超えた。「おぉ、来たか来たか。そろそろ来るとは思ってはいたが、案外早かったな」― 随分とミーハーな山男がいたものだ。 ラップを踊ってそうな格好をしていた。ヨレヨレのジーンズを
RIE さん作 [190] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-10]
… 出来れば、いやというよりもむしろ入りたくない?「…ね、猫さぁ〜ん、そこの綺麗な毛並をした、黒猫さぁ〜ん…。悪いことはしないからさ、その帽子、返してくれるかなぁ〜?」 まさに猫なで声で言ってみるが、猫は目をチェシャ猫の様に細めると、家の中に入って行った。「……………………………………………」 ― 依代は絶望のあまり、地面に拳を打ち付けたい気分だった。と共に、怒りがこみあげてくる。「…あんの猫〜
RIE さん作 [172] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-9]
「っもう?何処に行く気だよ?」― 急な山道に、依代はすぐに息をきらした。 そんな依代を待つかの様に、猫は度々時々振り返っては尻尾を振る。「くそっ?なめやがって?」 依代は足を必死に動かした。 しばらくそんなおいかけっこを繰り返していると、不意に前方から一軒の大きな和風豪邸が見えてきた。石垣と屋根のついた門がそびえ立ち、家の屋根よりも高い木が、いくつも立っている。「…で、でかい?」 依代は唖然と
RIE さん作 [188] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-8]
「あぁ?あたしの帽子?」 依子代は声を上げて猫を捕まえようとしたが、猫は依代の腕をすり抜けて、こっちだよとでも言う風に尻尾を振る。「…っこんの?どいつもこいつも?????」 依代は荷物を掴むと、猫を追いかけた。 依子代が手を伸ばす度に、猫は憎らしいほど軽快に避ける。「んの?待て??」 そう叫ぶが、猫はからかう様に尻尾を振るだけで、待ってはくれない。 やがて猫は、山に向かって伸びている細道に走って
RIE さん作 [188] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-7]
不意に、背後から不思議な声が聞こえた。 振り向こうにも、体が動かない…。 最後に見たのは、誰かの腕に背後から包み込まれる所だった。「……っは?っふ、ふ、ふぅ…」 依代は飛び起き、肩で浅く息をついた。 背が汗でびっしょりだ。「…なんだったんだ、今のは?」 嫌な夢だ。やけにリアルな夢だった。 今でも香の匂いがしているようで、依代は身震いをし、大きく息を吸った。 そういえば、桜の木の下には死体が埋ま
RIE さん作 [191] -
人形千喜と依代 第一章☆糸操家(つらあやけ)[1-6]
― ここはどこだろう。金やら銀やら、何やらきらきらしい裟の様なモノが、いくつも舞っている。 鼻に香の匂いがつく「…夢、だよな?」 辺りを見回して、依代はぽつりと呟いた。―…来い ふいに、声が聞こえた。よく注意して聞かないと聞き落としてしまいそうなほど微かな声だった。 辺りを見回すが、誰もいない。「だ、誰だ?」―…来い。我の元へ…―…我を解き放て…―…時の流れから…―…我を、解き放て…「だ、誰な
RIE さん作 [166]
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