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アフリカさんの投稿された作品が9件見つかりました。
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略奪 終
美しい音だった。年代物のギターから生まれる濁りの無い歪みが自由を叫ぶ。私は、止まり木のいつもの場所に腰を降ろし愛梨が奏でるメロディを心に刻み込んだ。二度と聴けないかも知れない完璧なメロディを刻み込んだ。『貴女を愛してる』夢中で演奏する愛梨に囁くが、その囁きが愛梨に届く事は無い。しかし、そんな事は関係無かった。私達には時間が無いのだから。当然、もう暫くすれば警察が此所に来るだろう。逃げ切れる筈など無
アフリカさん作 [350] -
略奪 8
8)チンピラ。正に、その言葉が相応しい。一瞬でも愛梨が愛した男ならもっと凜としていて欲しかった。私は愛梨に聞き出した場所を頼りに奥村を捜し出していた。大音量の闇の中。頼んだカクテルの味など分かる筈もない。背向かいのボックスで下品な声で笑い両脇に派手な女を侍らした奥村に愛梨を束縛する権利など有るのかと自問自答する。何度考えても答えはNOにしか成らない。愛梨が味わっている屈辱を考えると許せる筈など無い
アフリカさん作 [311] -
略奪 7
7)『テキーラサンライズ?最近、良く顔出すね』止まり木に座るサラリーマン風の男が此方を見て微笑んだ。小さく頷いて覚えたてのカクテルを舐める。甘く爽やかな飲み口の中に隠れた情熱的な熱を感じる。『知ってる?ホテルのオリジナルカクテルに過ぎなかった飲み物を有名にしたのは…』男が自慢気に見詰める『某有名ミージシャンがツアー中に飲んでから、このカクテルだけを頼む様に成った。破天荒なミージシャンが愛した酒とし
アフリカさん作 [313] -
略奪 6
『何処に行ってたの?学校から連絡があったわよ。近頃どうしたの?何が不満なのよ!』帰宅するなり叱責される。『ウザい』呟いて自分の部屋に逃げ込んだ。ネットで愛梨が言っていた曲を探す。ヘッドフォンを掛けてボリュームを上げた。怒鳴り続けている母の声を遮断する。軽快なリズム。でも、哀しい音。不安や屈辱を埋める為に生まれた音楽。憂いを叫び、希望を願う。アイドルにあてがわれる現代のヒット曲には無いソウル。セール
アフリカさん作 [292] -
略奪 5
5)客が、ジワジワと増えて私は止まり木を立った。BARを出るとネオンの周りに羽虫が群れていた。小さな羽虫は何を求めて僅かな灯りに集まるのだろうそんな事を漫然と考えていると不意に肩を叩かれた。『制服のままで目立ってたよアンタ』愛梨がギターケースを抱えて微笑んだ。『愛梨さん。感動しました。言葉に出来ない感情が溢れて私…』『泣いてたね』『何だか全てが嘘に思えて信じるものを無くしたと言うか。元々、そんなも
アフリカさん作 [316] -
略奪 4
4)ロックグラス、ショットグラス、カクテルグラス…次々に磨かれ美しく光る透明なグラスがカウンターに並べられて行く。どれも無駄なデザインの無いシンプルなものばかりだ。不意に小さな疑問が浮かんで言葉にする。『ここは喫茶店?』男がグラス磨きながら小さく首を振る。確かに喫茶店にしては店内が暗すぎる事に今更ながら気付く。私は開店前のBARに飛び込んでいる。急に居場所が無くなり、ポケットの札を握り締めた。『別
アフリカさん作 [302] -
略奪 3
繁華街を抜けた頃には美佳の姿は無かった。カラカラに成った喉の辺りを掌で擦ると不快な汗が指先に絡みついた。ポケットに手を突っ込み裸の一萬円札数枚を握り締める。穢れた金を淳に貰った財布に入れる事が出来なかったからだが今と成ってはどうでも良かった。私は歩きながら、最初に目についたスティール製のドアを押し開いた。薄暗い店内。静かに流れているjazzが何故か心地よかった。『何を出しますか?』止まり木の一番奥
アフリカさん作 [318] -
略奪 2
2)翌日私は、淳を見つけるなりその右頬を張った。『最低の奴、アンタなんか死ねば良いのに』何度も練習した短い台詞だったが上手く言葉に成っているかは分からなかった。感情が溢れだした。涙が止まらなく成った。それでも私は淳の顔を睨み続けた。『淳、なんとか言いなさいよ』教室が静寂に包まれ私の嗚咽だけが響く中、メールの差出人の美佳が淳に詰め寄る。淳は反論せずに俯いたままだ。『黙ってないで、認めるなら謝りなよ』
アフリカさん作 [310] -
略奪?
?手首の傷痕を眺める。無意味な勲章。自分を取り戻す為の自傷行為。ただ、叫ぶ術を持たないだけとも言える。私は理由を見失っていた。愛する理由。愛される理由。生きる理由。誰に手を差し出されても、私にとっては全て偽善に満ちた戯れ言でしか無かった。上っ面だけの付き合い。恋人も家族も私の本質を見てはいない。私は此処に実在しているが誰も私を見ていないのなら存在としては無だ。私は鏡に写る自分と歪に盛上がった傷痕を
アフリカさん作 [313]
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