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73 さんの投稿された作品が50件見つかりました。
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毒舌君主[二十三]
昭久が声の方を振り返ると由香里がいた。「…何してるの?昭久さん。」「…お前に関係ねぇーだろ。邪魔すんな」昭久は由香里から目をそらし、冷たく言い放つ。「…死ぬのは勝手だけど後片付けするやつの事も考えろ」「は?」予想外のセリフに昭久は顔をしかめる。「初めて会った時に昭久さんが私に言ったんだよ。何てひどい言い草なんだろうって思ったけど私はこの言葉に命を救われたんだよ」由香里は泣きそうなのをぐっとこらえ
73 さん作 [252] -
毒舌君主[二十二]
昭久がいなくなって半年が過ぎた。由香里と修も昭久という接点がなくなった以上、会うこともなかったし、みんなバラバラのいつもの生活に戻っていった。―昭久は最後の国にいた。水色のグラスと志保の写真と共に。志保が行きたいと言っていた国はすべてまわったはずだ。昭久は志保の写真に向かって、優しくほほ笑んだ。「…後、少しで全部終わる。待ってろよ、志保…」―数日後、昭久は自宅のあるマンションの屋上にいた。全てを
73 さん作 [248] -
毒舌君主[二十一]
「…俺が昭久によく会いにきてたのは、『ちゃんと生きてるか』不安だった。…確かめに…きてたんだ」修は由香里に向き直り、いつもの笑顔をつくった。「はーい、これでお話は全部終了。もう、どうしようもない男でしょ?由香里ちゃんはもっと普通の人と普通に恋愛した方がいいよ。そっちの方が絶対幸せ☆」由香里は、黙って修を見つめていた。「…じゃあね、由香里ちゃん」修は、いつもの様にヒラヒラ手を振りながらその場を後に
73 さん作 [238] -
毒舌君主[二十]
「…昭久が、よくここの屋上の上でボーってしてるでしょ?」修がおもむろに切り出す。由香里は静かに頷いた。「ここの屋上からね、志保が飛び降りた病院が見えるんだ…俺、怖かったんだ…いつかあいつ志保の後を追うんじゃないかって…実際、志保が自殺した数日後に昭久は自殺をはかった…」―志保が死んでからの昭久は正直みてられなかった。生きていく意味がわからないって感じで無気力で店も休んでた。ある日、心配で昭久の部
73 さん作 [254] -
毒舌君主[十九]
「…でもね、そんな二人もいつしかすれ違いはじめた」修の目はすごく哀しそうだった。「昭久は、志保のためになるべく病院の近くに部屋を借りて、店もその近くに開いた。だけどやっぱり忙しくて会えない日も多くなっていった。昭久は志保との約束を早く叶えてやろうって躍起になってた。それが裏目にでたんだ…」―あの日、病院に見舞いに行った昭久。志保は、体調が優れないせいもあり、昭久にやつあたりしてしまう。「…何しに
73 さん作 [255] -
毒舌君主[十八]
―昭久と志保の話をしようか修は静かに語りだした。「志保は気管支の病気でね。体が弱かったんだ。昭久と志保は幼なじみ。俺は高校ん時に昭久と友達になったから志保と知り合ったのもその時だな…」修は昔を懐かしむ様に目を細める。―志保はすごく綺麗な子だった。そりゃあ、もう驚くほど。でも見た目に反して、かなり毒舌だった。最初の頃、俺、『メガネ』って呼ばれてたからね。え、名前で読んでくれないの?みたいな。昭久に
73 さん作 [235] -
毒舌君主[十七]
由香里は約束の場所にいた。少し遅れて修がやってきた。「懐かしいね。初めて会った場所だ。」修は独り言の様につぶやいた。由香里は思い出していた。修と、そして昭久に出会ったあの日を。思わず由香里の顔に笑みがこぼれる。「…俺、由香里ちゃんに言ったでしょ?『昭久は無理だ』って。だけどさ、由香里ちゃんと一緒にいると昭久がすごく楽しそうだったんだよ。段々、昔みたいに笑う様になっていって……だからもう大丈夫かも
73 さん作 [227] -
毒舌君主[十六]
いつもの様に昭久さんの店に向かった私。でも、その日はいつもと様子が違ってた…。扉には貸店舗の文字。昭久さんの携帯にかけても繋がらない。私は不安な気持ちを無理矢理、落ち着かせながら修さんに電話をした。修さんは私の話を聞いても全く驚いた様子も見せず、「やっぱりな…」って哀しそうにつぶやいた。まるで昭久さんがいなくなるのが解っていたかの様に…修さんが「話しておかなきゃいけない事がある」っていつも聞いた
73 さん作 [296] -
毒舌君主[十五]
―あの日聞いた話。いったい志保さんはどういった人なのだろうかとか昭久さんとはどういった関係なのだろうかとか。聞きたくても聞けない日が続いた。私は変わらず昭久さんの店を手伝いにちょくちょく顔をだしていたし、この変わらない日常が幸せだった。だけど、終わりの日は近づいていた。嫌な予感はあったんだ。昔から遠足が雨で中止になったりだとか、彼氏に振られるとか。―嫌な予感だけよく当たる。「さわるな!」昭久さん
73 さん作 [257] -
毒舌君主[十四]
あの後、由香里は何も修に聞く事が出来なかった。由香里自身も頭が混乱していたし、修も口には出さなかったものの発する雰囲気からこれ以上話す気はないという意思を感じさせていたからだ。由香里の家の前でいつもの笑顔で「バイバイ、また明日ね」と修は手をふり、帰っていった。由香里はその後ろ姿をただ呆然と見つめる事しかできなかった。―数日後、気持ちが落ち着いてから客として由香里は昭久の店を訪れた。しかし、昭久は
73 さん作 [246]