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riverさんの投稿された作品が37件見つかりました。
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摩天楼 その17
昨日もマーチはリリィの前に顔を出さなかった。これ以上彼女に会うつもりはなかった。付けられたことを怒っているわけではない。リリィがこの街に居ることが知られてしまったようだ。以前酒場の客としてやって来た人間が報酬目当てに情報を流したらしい。マーチがリリィの立場をすっかり忘れていた頃のことだ。迂濶だった。そのことが市長に知られれば、リリィが家に連れ戻されるのは勿論、計画にも支障が出るし、みんなただでは
river さん作 [355] -
摩天楼 その16
ゆりちゃんあなたがいなくなってしばらくたちましたいまどこでなにをしているの?ぶじでいるのならはやくあいたいですママはきがくるってしまいそうですラジオからか細い声が聴こえる。リリィの母親の声。「寂しいと思わないの?」ココが話しかける。リリィは寂しくなどなかった。ただひとつのことを除いてだが。彼女が周囲から逃げ出した理由もなかった。裕福な家庭で今まで何不自由なく生活してきたし、人付き合いも悪くなかっ
river さん作 [373] -
摩天楼 その14
ドアの向こうから聴こえる。すごい。このままいけば。ぜんぶ。ははは。ぐちゃぐちゃだ。何が何やらわからなかった。めちゃめちゃにしちゃって。しぬしぬ。ひひっ。きもちわりー。訳も解らず聞いていると突然ドアが開いてリリィの頭にぶち当たった。あたたた、と頭を押さえて見下ろす影を見上げる。マーチだった。「…何してるの?」リリィは少し鳥肌が立った。付けたことを後悔した。「こっちの台詞だ」マーチの様子はいつもとは
river さん作 [359] -
摩天楼 その14
マーチはリリィの行動範囲をほぼ把握していたが、リリィは彼が昼間どこに向かっているのか知らなかった。ココに聞いてもわからなかった。というか、彼女は知らないふりをしたのだ。ある朝、リリィはマーチの後を追った。気付かれないまま広場にやって来た。浮浪者の目を気にしながらリリィはマーチについて行く。マーチは歩くのが早かった。どこに行くのかしら。マーチがどんどん闇に近づいていくので心配になってきた。ふと目を
river さん作 [349] -
摩天楼 その13
酒場が賑わう頃にリリィは演奏を披露するようになった。彼女の容姿も相まって人々に可愛がられるようになり、ファンなんかも現れるようになった。一方街では市長が相変わらず青白い顔で大騒ぎしていた。からかうように偽の犯人が次々と名乗りを挙げ、ますます混乱した。人々はとっくにそんなことは忘れていた。リリィが市長の娘であることも。一番近くにいるマーチでさえ忘れている。時々リリィがマーチに笑いかけたりなんかする
river さん作 [328] -
摩天楼 その12
後日、マーチがヒオにそのことを話すと、ヒオは酒場に連れて来ることを提案した。ココの家である酒場にはピアノがある。廃車置き場のとは違って、鍵盤は揃っているし音色もずっと良い。マーチはリリィを酒場に誘った。「それはひょっとしてデートに誘ってる?」彼女は腕を組んでいぶかしげにマーチを睨んだ。全くそういう気は無い。まさか違うよ。マーチはきょとんとして言った。酒場には待ってましたと言わんばかりのヒオが座っ
river さん作 [363] -
摩天楼 その11
それから毎日マーチは顔を出した。リリィは彼がやって来る度に笑顔で迎えた。固い座席に疲れてしまったらクッションを敷いてあげた。食事も用意してあげた。そんなある夕方静かな街にピアノの音が響いた。廃車置き場からだった。そこから酒場は比較的近いのでピアノの音はわりとはっきり響く。入り始めた客と一緒にココも聴き入る。やさしい音。「なんて曲だったっけ、これ」「さぁ…音楽には疎いからなぁ」廃棄されていたピアノ
river さん作 [371] -
摩天楼 その10
ココは葡萄パンとパックのジュースをマーチにあげた。リリィの為のものであった。リリィはがらくた漁りをやめて車内に戻っていた。少し埃っぽくなっていた。リリィは少しうとうとしていたが、マーチが窓を叩くのに気付くと、はっと目を覚まして窓を開けた。マーチが差し出したパンを嬉しそうにがつがつ食べた。マーチはお嬢様の威勢のいい食べっぷりに見とれた。あっという間に全部食べ切ってしまった。「色々ありがとう」お嬢様
river さん作 [405] -
摩天楼 その9
リリィは退屈していた。マーチと別れてから全く車内から出ていない。廃車の中はタオルくらいしか無かった。リリィは欠伸をしながら廃車から出た。陽射しが眩しいので少し目眩がする。リリィは大きく伸びをして、廃車置き場を彷徨き始めた。色褪せた埃っぽい廃車が何台もある。タイヤが欠落したものやガラスが割れたものも見られる。廃車の森をさまよっていると、がらくたの山を見つけた。リリィはその山を漁ることにした。日が傾
river さん作 [376] -
摩天楼 その8
廃れた街の中心には広場がある。そこにも昔は店が立ち並んでいたが、今はどの店も閉まっており浮浪者の溜まり場になっていた。広場の隅には小さい通路がある。マーチは薄暗い通路を進むと行き止まりだった。床に大きな蓋だけがある。マーチは蓋を開け、穴の中に入った。穴の向こうはさらに暗くなっていた。蓋を閉め、マーチがレインコートのポケットからライトを取り出して灯りを付けると長い階段が現れた。階段は地下に続いてい
river さん作 [404]