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riverさんの投稿された作品が37件見つかりました。

 
  • 摩天楼 その7

    渡された札束を手に、マーチは困惑した。「私家出したの。これにいくら入ってると思う? 三百万よ。金庫から持ってきたのよ」リリィは札束の入ったボストンバッグをボンボン叩く。マーチは札束をリリィに差し出した。「なによ、要らないの?」「貰えないよこんなの」寡黙なマーチがはっきり言ったので目を丸くするリリィ。「どうして?」「…きみの家の金でしょ」マーチには金などどうでも良かった。渡された札束はリリィに返さ
    river さん作 [365]
  • 摩天楼 その6

    金髪のココは酒場の店主の娘である。酒場は町の人が多く訪れる。彼女はよく店を手伝うことがある。ヒオやジンザと出会ったのもこの店である。ココは洗い物をしながらラジオを聴いていた。手前にヒオが座っている。やはり市長の娘の話題だった。「ねぇこれって」思いついたようにココは口を開く。「昨日のあのこじゃない?」「やっぱり?」ヒオは飽きてきたようだ。「まだ車の中?」「さぁ。今朝からマーチにも会ってないしね」コ
    river さん作 [370]
  • 摩天楼 その5

    レインコートの青年は廃車置き場に向かい、少女のいる車を覗いた。後部座席に少女の姿がない。帰ってしまったのか。青年がドアに手をかけると、突然目の前に「わっ」と声を上げて少女が現れた。青年は驚いて尻餅をついた。少女が窓を開けてくすくす笑っている。青年はちょっと赤くなって立ち上がった。「貴方の車? ごめんなさいね。占領しちゃって」ゆうべは分からなかったが、少女の目は大きく、睫毛は長い。青年はゆっくり首
    river さん作 [373]
  • 摩天楼 その4

    そんな物騒な町にわざわざ入ってくる人は滅多にない。ましてや、若い女の子が入ってくるわけがない。次の日、世間では市長の話で持ちきりだった。市長の娘と金庫にあった現金が消えたらしい。ワイドショーや新聞でも大きく取り上げられて大騒ぎになっていた。娘は有名な女子校の生徒で、学校にもやはりマスコミは押し掛けた。会見に出てきた市長はいつもの威張ったような態度とは違い、真っ青な顔色だった。「ヒオ、ラジオ付けろ
    river さん作 [409]
  • 摩天楼 その3

    「…これは…何?」ニット帽はゆっくりと視線をレインコートに移す。「キミは誘拐でもしたのかい」「…まさか」レインコートが首をかしげた。全く心当たりがない。急に起こすのは可哀想だと思ってそのまま寝かせておくことにした。「誘拐にしてはかなり無防備だし、明日になれば帰っちゃうでしょ」金髪はそう言って割り箸を割った。レインコートも弁当を取ってボンネットの上で胡座をかいた。ご飯が冷たかった。「それにしても綺
    river さん作 [395]
  • 摩天楼 その2

    廃車置き場はビルの森の外れにある。人気は全く無い。灯りは月の光だけである。ニット帽は廃車のボンネットに座って拾ってきた弁当を食べ始めた。「なに、お二人さん、食べないのかい」相当空腹だったらしく、物凄いスピードで箸が進んでいる。「あたしの分食べないでよね」金髪は欠伸をしながら言った。レインコートは自分の廃車を一生懸命覗き込んでいた。車内に何か居るような気がするが暗くて分かりづらい。「あんたは本当に
    river さん作 [412]
  • 摩天楼 その1

    狭い夜空には指先で穴を空けたような月と街の光の筋しか見えない。積木を乱雑に積み上げ並べたような街だった。生き急ぐように車は過ぎ去る。三人の浮浪者が弁当屋の裏のごみ箱を漁っている。賞味期限の切れた弁当が幾つか出てきた。「悪くないな。天ぷらがあればなお良いんだけど」ニット帽の男が舌打ちした。「今日のはわりかしいいね」金髪を束ねた女が弁当を抱える。もう一人のレインコートの浮浪者は弁当には見向きもせずに
    river さん作 [395]
 
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