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何者 さんの投稿された作品が69件見つかりました。
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鬼牛の鳴く島 9
「徳本さんは?徳本さんがいないぞ!」辺りを見回しても、コンクリートの壁と、床の上に不自然に置かれたいすのほかには何も見あたらない。すると、カツン、カツンという足音と共に、一人の女が牢屋の前に現れた。とても美しい、長い黒髪を持っているが、見たこともない、不気味な面を付けている。「おい!なんだお前!なんで俺たちを…」縄で手足を縛られながらも、女の正面まで芋虫のように這っていった井上が、鉄格子に身体を
那須 さん作 [430] -
鬼牛の鳴く島 8
「なんか怖い…」由香が拓海の腕をつかんだ。それを見たかすみも、「怖い」と言って拓海にしがみついた。「とにかく明かりの方に行ってみよう…人がいるはずだ。」徳本の言葉で、6人は再び歩き始めた。港からさらに10分ほど歩くと、明かりのついた民家が何件か現れた。話し声も聞こえる。その内の一軒を訪ねることにした。「ごめんくださーい。」徳本が元気よく呼びかけたが、反応はない。「すいませーん。」やはり反応はない
那須 さん作 [365] -
鬼牛の鳴く島 7
船は荒波に揺られながらもなんとかその島にたどり着くことに成功した。船着き場はなかった。無理矢理海岸に乗り上げた感じだ。「帰りはどうするんです?こんなに乗り上げちゃって…」拓海が不安そうに尋ねる。「全員で力一杯押せ。何とかなる。」本当に何とかなると思っているのだろうか。徳本の笑顔は心なしかひきつっている。「せめて電話があれば…そうだ!おまえら携帯持ってねぇのか!?」徳本の言葉に5人はハッとした。す
那須 さん作 [387] -
鬼牛の鳴く島 6
「おかしい…」徳本が呟いた。五人が静かに顔を上げ、徳本の方を見た。「奇跡的に嵐も弱くなってくれたんだが…一向に本島に近づいてねぇんだ…」「どういうことですか?近づいてないって…」三上が大きく揺れる、立つのもやっとな船内を何とか徳本の隣まで歩くと、徳本の顔をのぞき込んだ。「もう本島が見えてもいい頃なんだよ。この嵐だ…方向を間違えたのかもしれねぇが、きちんとレーダーやコンパスは作動してる。それに…」
那須 さん作 [370] -
鬼牛の鳴く島 5
クルーザーで本島へ向け引き返すも、雨足は一向に弱まらず、さらにここに来て風も強くなり、海は大荒れとなった。船は荒波の中を木の葉のように漂い、時折打ちつける波の音が船内に鈍く響いた。「勘弁してくれよ!ちゃんと着くんだろうなぁ!おい!」井上が誰にともなく怒鳴り声をあげた。由香は恐怖で泣きだし、かすみも頭を抱えてうずくまってしまった。三上と拓海ももはや放心状態で、彼らの運命は操舵室の船長、徳本卓にゆだ
那須 さん作 [382] -
鬼牛の鳴く島 4
眠れぬ夜を過ごした三上と井上をよそに、残りの三人のテンションは最高潮だった。今日は昨日とは打って変わって快晴。クルーザーでの島巡り一日目は予定通り順調に行きそうだ。「ねぇ三上君と井上君テンション低くない?」「確かに。なんかあったの?」乗り場に向かう車内、後部座席の右端ででうなだれる井上と、助手席でただ外を眺めているだけの三上に対し、佐伯かすみと風間由香が二人の顔をのぞき込むようにして言った。「ど
那須 さん作 [400] -
鬼牛の鳴く島 3
やがて目が慣れてくると、物音の正体が暗闇にぼんやりと浮かび上がった…また井上だ。「まだ寝てないのか?」三上の声に一瞬驚いたような仕草を見せた井上だが、三上の顔を見ると、小声で「あぁ。三上、これ見ろよ…」井上はそう言って、部屋の隅の棚の上に置かれていた小さなノートを差し出した。どうやらそれはこの部屋に泊まった客達の為の日記のようなものらしい…ぼろ旅館のくせにこんなところだけ小洒落た事を…案の定日記
那須 さん作 [413] -
機人-715-
黒く輝く機人の胸板には、ゆっくりと歩み寄る博士の光悦に満ちた顔が写し出されていた。「おお…715…我が息子よ…」天賀博士は、715のその冷たい体に頬ずりするように抱きつき、自らの研究の成果に酔いしれた。その時だった。「博士!!離れてください!」一人の作業員が管理室のドアから身を乗り出し叫んだ。「なんだ…離れろだと?我が息子から?」「回路が正常に繋がれていません!人工頭脳に異常が…早く!」作業員の
ラミレス さん作 [340] -
機人-715-
「ばかやろぅ!」研究所内に天賀博士の声が響きわたった。一瞬の静寂の後、研究員達はすぐに仕事を再開した。いつもの事だ。「一歩間違えれば全て台無しなんだ!715はそれほどデリケートな新型機人だと何回説明すればわかるんだ!」天賀博士は“715”と表記された2m程のカプセルを撫でながら、幾重にも絡み合う色とりどりのプラグの中から一本を掴んだ。「これはここだ!こんな初歩的なミスを…」博士がプラグを正しい場
ラミレス さん作 [340] -
鬼牛の鳴く島 2
沖縄は快晴。という予報だったが、空港に着いてみると土砂降りの雨。どのみち初日は旅館でゆっくり過ごす予定だったので計画に変更はないが…旅館は格安で、ボロボロ。料理はそこそこうまかったが、部屋のジメジメした空気と、ボロボロの内装のせいで料理のランクも三段階は下がっていた。値段が値段なめ文句は言えない。どうせ明日からはほとんど旅館にはいないんだ。今日だけ我慢すれば…唯一まともだった大浴場で汗を流し、と
那須 さん作 [444]