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稲村コウ さんの投稿された作品が138件見つかりました。

 
  • ほんの小さな私事(117)

    弓を構え、私は、矢の代わりにつがえている箒を持つ手に神経を集中させた。身体中の気が手に集まってきて、それが箒へと移動して行く。多少、意識が朦朧としたが、何とか堪えて、今度は、箒を持つ指先と、弓を支えている腕の全てに神経を集中させた。骨董品のものとは言え、弓自体はちゃんと使える作りになっているが、矢の代わりにしている箒は、言うまでもなく、普段射っている矢の様に放てるとは到底思えない。しかし今は、何
    稲村コウ さん作 [323]
  • ほんの小さな私事(116)

    櫻井君の機械が発した音で、どうやら、山下さんに取り憑いていた霊は、離れたようであった。しかし、機械から発される音が止んで暫く、赤色の靄がまた、山下さんに憑依しようとしているのか、気絶している彼女に向かって動いているのに気付いた。香取君が、気絶した山下さんを抱き抱えてこちらに戻ってきてはいるものの、追ってくる赤色の靄が、もうすぐそこという辺りまで迫っていた。『一体、どうしたら…?』そう思っていると
    稲村コウ さん作 [334]
  • ほんの小さな私事(115)

    飛んできた紫色の靄は、香取君に当たった筈であった。だが、香取君は、何事も無かったかのように、そこに立ち尽くしている。よく見ると、香取君の体の周囲に、散り散りになった紫色の靄が漂っているのが見えた。もしかしたら、今、香取君が身に纏っている光が、弾いたのだろうか?続けて山下さんの方向に目を向けてみると、赤色の靄が、少し山下さんの体から離れてきているように見えた。「風が弱くなった…。霊の力が弱まったの
    稲村コウ さん作 [327]
  • ほんの小さな私事(114)

    吹き付ける風に押されつつも、香取君は、山下さんの居る方向に歩みよっていく。「…クルナ…アッチヘイケ…………。」それに対して山下さんは、ジリジリと後退しながら、異様な声でそう言った。山下さんにまとわりついている赤と青の靄は、より一層、激しく蠢いていた。よく見てみると、山下さんの体に青い靄がまとわりついていて、その回りを、赤い靄が覆い被さる様に蠢いているのに気付いた。『青と赤の靄は、それぞれ別の存在
    稲村コウ さん作 [394]
  • ほんの小さな私事(113)

    奥の部屋は、何かの資料を保管しておく倉庫のようであった。窓は曇りガラスになっているうえに、外の天候が良くない事もあってか、日中だというのに、部屋の中は暗かった。香取君を先頭に、私たちは、部屋の中に入り込んだ…が、その時、再び、強い風が、私たちの居る方向に吹き付けてきた。「こいつは…風を操る事が出来るアヤカシなのか?」「アヤカシ?」「いわゆる妖怪とかいった類いの存在…て言えば解りやすいかも知れない
    稲村コウ さん作 [326]
  • ほんの小さな私事(112)

    「山下さんが助けを求めてる…。いかなくちゃ…。」香取君は、体の痛む場所を抑えながら、奥の部屋へと向かっていった。そんな香取君を櫻井君は、肩を捕まえて制止する。「ダメだよ、奥は危険なんだ。さっき君、吹き飛ばされただろ?また、同じ様に吹き飛ばされるかも知れない…。」そう説得しようとした櫻井君だったが、話の途中で香取君は、肩に掛けられた櫻井君の手を振り払った。「彼女が苦しんで助けを求めているんだ…!放
    稲村コウ さん作 [356]
  • ほんの小さな私事(111)

    なつきさんを呼びに行った高野さんが戻ってくるまでには、まだ時間が掛かるだろう。その間、私はこの状況で何をしたらいいのだろうか?そう迷っている私をよそに、櫻井君は、何らかの機械を組み立て上げ、それの動作の確認をしていた。その機械は、筒状になっているものの先端に、アンテナの様なものがついていて、櫻井君がその機械のスイッチを入れると、アンテナ部分にオレンジ色の淡い光が浮かび上がってきた。「取り敢えず、
    稲村コウ さん作 [330]
  • ほんの小さな私事(110)

    「多分、あれは、人に取り憑くタイプの霊だと思う。何とかそれを切り離して、浄化しないといけないんだけど、今、僕の手持ちの機械だと、霊を怯ませる事しか出来ないんだ。だから、加藤先生が来るまで、何とか霊が逃げない様にしないといけない。」櫻井君は、ポケットから取り出した機械を組み立てながら、そう言った。どうやら彼も、なつきさんが能力を持っている事を知っている様だ。「やっぱり山下さんは、何かに取り憑かれて
    稲村コウ さん作 [362]
  • ほんの小さな私事(109)

    高野さんが走り去っていったのを見届けたのち、私たちは、意識が朦朧としている香取君を、二人で両脇から支えて立ち上がらせると、そのまま、扉の外へと運び出した。ガラスの壁に叩きつけられた際に、腕に小さな傷を負っているものの、他に外傷もないが、しばらくは床に寝かせて安静にしておくのがいいだろう。香取君への対処を終え、私たちは改めて、扉の奥を見た。吹き付けていた風は止んだが、奥の部屋からは、異様な気配が漂
    稲村コウ さん作 [321]
  • ほんの小さな私事(108)

    「ホント…何がなんだか…わかんない…。ねえ、あれ、何?今、何が起こってるの?」高野さんは、取り乱した様子で、櫻井君の肩を揺さぶりながら言った。まあ、この状況で混乱しない方が、正直、おかしいのかも知れない。私は、自分の事が徐々に明らかになってきている事もあり、現状が少しずつ解ってきている手前、多少の事では驚かなくなった。しかし、取り乱している高野さんをなだめている櫻井君は、まるで、こういう事に遭遇
    稲村コウ さん作 [318]
 
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