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MICORO さんの投稿された作品が35件見つかりました。
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最期の恋(5)
コウの退院が数日後に迫った、夜勤の日。私はいつものようにコーヒーを二つ買って、待合室のコウに逢いにいった。しかしコーヒーを受け取るコウの笑顔には、翳りが感じられた。普段のコウらしくなく、沈黙したまま一口コーヒーを飲んでから、私を思い詰めたような目で見つめながら訊ねた。「吉村さん。どうしても聞きたいことがあるんです。すごく失礼かも知れないんだけど…」どんな質問かは察しがついた。私はわざと明るく答え
MICORO さん作 [539] -
最期の恋(4)
時間にすれば、ほんの数秒の事だったと思う。我に返って看護師の顔に戻ろうとする私に、コウが言いにくそうに訊ねた。「吉村さん…、おっぱいが…」しまったと思ったが、後の祭だった。私は仕方なく、できる限りの明るい声で正直に話した。「あらっ?バレちゃった?私ね、左のおっぱいが無いんだ。乳癌でね、十年前に全部取っちゃったの。いつもは偽物のおっぱいを入れてるんだけど、今日は手術の介助だから外したのを、忘れてた
MICORO さん作 [494] -
最期の恋(3)
恋のパジャマのズボンの前が見事に隆起していたのだ。恋は、悪戯を見つかった子供のようにシュンとして、耳まで真っ赤に染めている。なんて純情なんだろう。私はコウに微笑みかけ、隣の患者に聞こえないように、耳元で囁いた。「ごめんなさいね。知らなかったの。でも、恥ずかしがることなんてないのよ。孝一君は若いんだから、それで当たり前なのよ」するとコウは、大きな瞳を潤ませて言った。「ごめんなさい、看護婦さん。いつ
MICORO さん作 [475] -
最期の恋(2)
「まあまあ、そう膨れないの。だいたいあなたが、私と張り合おうなんて十年早いんだから。じゃあ、お先にね」私は手を振って更衣室を出た。ちょっと悔しそうに「お疲れ様でした」と言う声が、背中に聞こえた。?今年の二月。高校のスキー合宿で脚を骨折したコウが、長野県の外科病院から、私の勤める佐倉総合病院に転院してきた。膝の形成手術を受けたあと、私の受け持つ外科・整形の病棟に入院してきたのがコウとの出会いだった
MICORO さん作 [469] -
最期の恋(1)
かぎりとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり―源氏物語「桐壺」より―\r?更衣室で鼻歌混じりで着替えていると、主任の夏川涼子が出勤してきた。「あらっ?吉村婦長。今日は随分ご機嫌ですね」「そうでもないわよ。整形のドクターって本当にヤブなんだから。患者さんより、こっちの血圧が上がりそうよ」私は鼻歌を聞かれてしまった照れ隠しで、わざと難しい顔を作って見せるが、心が弾んでいるのをごま
MICORO さん作 [594]