トップページ >> シナドさんの一覧
シナドさんの投稿された作品が24件見つかりました。
-
アドルフの希求
アドルフ、アドルフ絶えて久しき君よアドルフ、君は無垢にふりそそぐ慈雨であり孤独に燃える怒りの炎だぼくは君を恐れながらも誇りに思ったしかし、怒りは変容し無垢は永遠に失われたアドルフ今や君はぼくから最も遠いところにある君の言葉は、もうぼくには届かない君の姿を、もうぼくはどうやっても見ることはできないアドルフ絶えて久しき君よ今度こそ、もっとしっかり君の言葉を受けとめよう姿を目に焼きつけようだからアドル
シナド さん作 [679] -
夢十夜 〜第八夜〜
こんな夢を見た。浅い眠りから醒めると、私はバスに乗っていた。乗客は私だけだ。バスは桜並木の中のバス停に止まったまま動かないでいる。私はぼんやりと外を眺めた。桜の花弁がひらひらと舞い散る中、桜並木に沿って流れる疎水の水面に日の光が反射してきらきらと輝いている。夢のようだと私は思った。気がつくと私の座っている席の窓の外に、誰かが立っていた。私の初恋の人だった。当時と変わらぬ姿でそこにいる。その人は私
シナド さん作 [574] -
夢十夜 〜第七夜〜
こんな夢を見た。私は絵描きであった。何年も何年も一つの絵を描いている。この世界のあらゆる不幸と災厄が描かれた絵だ。私は白いキャンパスに油絵の具を塗っていく。描いても描いても絵はできあがらない。キャンパスはどんどん大きなものになってゆく。不思議なことに私が絵に描いた不幸は全て現実となった。戦場を描けば戦争が起こった。水に流される家々をかけば洪水が起こった。だが私は描くことをやめられない。なんでか皆
シナド さん作 [588] -
夢十夜 〜第六夜〜
こんな夢を見た。古い時代である。どの位昔なのかはわからないが、蝋燭を灯した薄暗い板張りの部屋で、一段高い上座に胡座をかいている男は着物を着ている。揺らめく淡い光に照らされるその男は、髭を厳つく生やし、髪をざんばらにした逞しい男だった。山賊の頭のような風体だと思った。実際にそうなのかもしれぬ。男の前にかしづいた自分は女である。男は獅子のような目で私を見る。私は一体何か?売られてきた女か?奪われてき
シナド さん作 [760] -
アドルフの神さま
アドルフねえアドルフわたしの声が聞こえる?アドルフ、アドルフかわいい、かわいいわたしの息子おまえを、愛してる春の若葉とおなじくらいに美しい駿馬とおなじくらいにきっとおまえは満足しないがそうしておまえは残酷さをむき出しにして惨たらしく私の愛する若葉や駿馬を殺してしまうだがアドルフかわいい、かわいいわたしの息子愛しているよ
シナド さん作 [667] -
夢十夜 〜第五夜〜
こんな夢を見た。私は子供の時分であった。夜空に沢山の電飾できらきらと輝き、鮮やかな色彩で彩られた大きな船が浮かんでいる。私は一人それを見上げ、乗りたくてしょうがなくやきもきしていた。すると船が私の方にすいと向かってきた。輝かしい船がどんどん近づいてくるのん見て私はひどく興奮し感激した。船が私のすぐそばに停まり、私は喜び勇んでその中に乗り込んだ。船の中には私と同じくらいの子供が沢山おり、みな色とり
シナド さん作 [597] -
夢十夜 〜第四夜〜
こんな夢を見た。夜、私は布団に横になって、わずかに開いた押入のふすまの奥の暗がりを見つめている。子供の頃から私は暗がりが怖かった。何かがじっと息を潜めていそうで怖かった。おかげで十代の半ばまで私は一人で寝ることすら恐ろしかった。やがて、ふすまの奥の暗がりから何かがもぞもぞと這い出てきた。赤ん坊だった。真っ赤な、裸の赤ん坊だ。それが私に向かって話しかけてきた。嗄れた男の声だった。お前は間違って生ま
シナド さん作 [536] -
夢十夜 〜第三夜〜
こんな夢を見た。黒い髪の異国の男が、太陽の照りつける荒野をたった一人で歩いている。男はつい先ほど二度と戻らないと誓いをたて、故郷の街を出てきたのだ。小さいが、白壁の美しい家々が建ち並ぶ住み良い街だった。そこでは、私は赤い髪をした女であり、男の恋人であった。街を出ようとする男を連れ戻そうと追いかけて来たのだ。歩き続ける男に私は歌で呼びかけた。故郷の素晴らしさを、外の世界の残酷さを、どんなに男を愛し
シナド さん作 [610] -
夢十夜 〜第二夜〜
こんな夢を見た。父の実家の周りを狐が一匹うろついていた。鹿ぐらいでかい狐だ。腹が減っているようだった。私が家で何か食べさせてやろうと申し出ると狐は嬉しそうに従った。私と狐が田んぼの畦道を歩いていると、叔父がやってきて狐などを家に入れるのは許さんと言う。困った私は狐に何かに化けられんか訊いてみた。狐は鹿に化ける気らしい。鹿ならば縁起がいいから叔父も家に入れるだろうと思い、私もそれがいいと同意した。
シナド さん作 [612] -
夢十夜 〜第一夜〜
こんな夢を見た。私は兵隊である。どこか知らぬ異国の街の戦場にいる。仲間は皆死んだ。私は沢山の死体の中、うつぶせになり死んだふりをしている。敵の首領をしとめるためだ。私はそれとはわからぬよう銃を構えて、じっとその男が来るのを待っている。奴はもうすぐここに現れるはずなのだ。そいつを殺せば私の国が勝つ。戦争が終わる。だが私は間違いなく殺されて死ぬだろう。足音が近づく。奴がやってくる。近づくまで待って間
シナド さん作 [697]