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さんの投稿された作品が26件見つかりました。

 
  • 安楽の黒〜7(LAST)−3〜

    次に男が意識を持った時には、真っ逆さまに落下していた。 目の前には見慣れたタイル張りの床が迫ってきている。 男は瞬時に死ぬことを覚悟した。 しかし男には全く後悔や恐怖はなかった。 むしろ晴々としていた。 なぜなら男は一瞬の内に最愛の人との一生を経験したからである。       そして男は激しく着床した。   あたりには不快な音が響きわたり、周りにいる物は皆驚きの表
    さん作 [335]
  • 安楽の黒〜7(LAST)−2〜

    そして、その時は来た。  気付けば男の周りには医師や看護師が取り囲み慌ただしく動いていた。どうやら病状が急変したらしい。意識は薄い。  そんな中、何も言わずただ男を見ている女がいた。男は朦朧とする意識の中その女と長い間視線を合わしていた。実際はほんの数秒、いや1秒もなかったのかもしれない。だが少なくとも男にはとても長く感じた。 するとその女はふと口を開いた。 「あなた…。私と一緒で幸せだ
    さん作 [312]
  • 安楽の黒〜7(LAST)−1〜

    男はベッドに横たわっていた。 今度は男にもすぐにここがどこであるかわかった。 白いシーツに白い掛け布団、そして周りには白いカーテンが周りを囲んでいる。 男は病院にいた。隣には顔中シワだらけの女性が椅子に座りこちらを見ている。その女性は外見の割りに背筋がピンと伸びており、全体に白くなった髪を後ろで束ね綺麗にまとめている。服装にも気を使い、自分が女である事を忘れていない。 間違いなくあの女性
    さん作 [314]
  • 安楽の黒〜6−2〜

    そこには孝也の期待を裏切る様な何気ない朝の優しい光が屋上の床を照らしていた。孝也は一先ず胸を撫で下ろし、あの奇妙な死体が飛び降りたであろう場所へ向かった。孝也はそこへ着くと淵に足をかけ下を覗き込んだ。 しかし、やはりそこに見たのは孝也の期待を裏切る何ともない光景であった。孝也は安堵とも落胆ともとれる表情で心配そうに後ろで待っている恵美を見た。 「何もないよ」 「だったら早く戻って来てよ。危
    さん作 [318]
  • 安楽の黒〜6−1〜

    「ね〜、孝也ぁ、本当に行くのぉ??」 孝也には恵美の言葉は届いてなかった。あの奇妙な死体が最期に何を見たのか、それを知りたいという思いだけが孝也の体を動かしていた。 エレベーターの中はやけに静かだった。機会音すら今は耳に入らない。目を閉じれば、まるで真っ暗な闇の中を一人でさ迷っているのではないかと錯覚してしまう程であった。 「ね〜、孝也ぁ、これが終わったら、あそこに行こうよぉ!」 恵美があ
    さん作 [307]
  • 安楽の黒〜5−3〜

    3人が公園に着く頃には既に朝の優しい日差しはなく、代わりに活発な光がさんさんと木々達を照らしていた。夏でもなく冬でもないこの気候は風が吹く度気持ちがよく、今すぐにでも目の前の原っぱに寝転がり寝てしまいたいぐらいだった。しかし、今日は家族サービスの日。その様な事はまかり間違ってもする訳にはいかなかった。男は妻と共に雅人を間に挟んだ並びで木漏れ日が降り注ぐ散歩道を歩いていた。 その時、男の目の端に見
    さん作 [302]
  • 安楽の黒〜5−2〜

    部屋は割と綺麗に片付いており、あるのはデスクとベッド、本棚、クローゼットのみであった。デスクの上のノート型パソコンは、あまり使っていないのだろう、だいぶほこりを被っており、その横の灰皿には、吸い殻が溢れていた。とりあえず寝巻を着替え、ボサボサの髪を整え、一通りの準備ができた男は一服しようとベッドの枕元にあったタバコを手に取り火を付けた。 あぁ、幸せだ…。 男は普通の人なら気が狂ってしまいそう
    さん作 [323]
  • 安楽の黒〜5−1〜

    男は朝食を食べていた。 あの後、また、完全な闇の中を落ち続けている時に例の猫に会って連れて来られていた。また「もったいない」とか言っていた事を覚えている。 目の前には目玉焼きと焼きベーコン、そしてトースト。典型的な朝食である。窓からサンサンと差し込む朝の光がそれらを美味しそうに照らしていた。男の膝の上には読みかけの新聞がおかれており、さっきまで読んでいた事をうかがわせる。その食卓を3人が囲むよう
    さん作 [302]
  • 安楽の黒〜4−2〜

    「自殺…でしょ?さっきマンションの前に居た野次馬の人に聞いたの」 「あ…そうなんだ」 「私の勤めてる病院でもね、おとつい患者さんが屋上から自殺したの。だからあまり触れたくなくて。」 「そっか…。」 孝也は恵美の嫌がる事はしたくないと思う反面、警察と第一発見者の孝也しか知らないあの奇妙な死体の事を話したくて仕方がなかった。 「恵美…、実は俺、第一発見者…、なんだよね。ていうか…、目の前に
    さん作 [315]
  • 安楽の黒〜4−1〜

    孝也は昨夜の惨事のせいで眠らずに4/10を迎えていた。あの奇妙な死体の第一発見者として今朝まで警察に取り調べを受けていたのだ。もうすぐ恵美が来るというのにまだ孝也のマンションの前には警察関係者や、更にはマスコミ関係者までもがうろついている。できれば昨夜の事なんか忘れて今日という日を迎えたい。しかしこんな状況を恵美が見たら間違いなく根掘り葉掘り聞いてくるだろう。そうしたら孝也にはシラを切り通す事は
    さん作 [299]
 
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