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α さんの投稿された作品が60件見つかりました。
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猫物語その6(改)
子猫の鋭い一喝に身震いし羽をばたつかせた母雀は、これ以上この若い捕食者の機嫌を損ねてはならぬと急いでさえずり自分の伴侶を呼び立てたのでした。 短毛種の猫の毛の長さほどの間を措かず現れたのは母雀と変わらぬ大きさの中年雀です。 父上... 子猫からすると大した違いは見当たりませんが、雀族の間では互いに見分けがつくのでしょう。 子雀は意気消沈して涙ぐみ、自分の父を恐る恐るうかがうように見上げます。
α さん作 [480] -
猫物語その5(改)
は、母上! あのふかふかの指の間からにゅっと出る木登りなどして丹念に研がれた細い三日月のような爪にがっちりと縫い留められた尾を、なんとか逃れようと捩りながら子雀は飛来した中年雀に叫びました。 どうやらこの子雀の母親が我が子の窮地に文字通り飛んできたようです。 はたして猫を相手に雀に過ぎない彼女はいったいどれほどのことができるでしょうか。 どうか、その子の 命を存えさせてやって下さいまし。もしお
α さん作 [507] -
猫物語その4(改)
さて、竹内さんと暮らすことになった子猫は、昼は竹内さんと竹林へ出かけて 竹内さんが竹を採るのをじっと見つめ、夜は煎餅布団に横たわる竹内さんの懐に潜り込んで すやすやと眠る 今までの猫生のうちでかつてこれほどまでも安らいだことはないと思うほど穏やかな日々を送っていたのですが、なかなか上手く鼠を捕れるように なれません。 子猫は竹内さんに申し訳なく思ってひそかに鍛練を積むのですが 思うようには上達
α さん作 [488] -
猫物語その3(改)
わたくしが竹の節にはまり込んでいた訳は、こうした次第にございます。 どこのどなたかは存じませんが危ういところを救っていただき ありがとうございました。 と、子猫はニクキユもまだ柔らかい小さな可愛らしい丸い滑らかな毛並みの前足をあずまやの床に着いて、竹内さんに深々と頭を下げるのでした。 いいえ礼には及びませんよ。と、竹内さんは答えます。 委細は承知しました。あなたもさぞお辛かったでしょう。うちは
α さん作 [514] -
猫物語その2(改)
それにはやむにやまれぬ事情がありまして、と子猫は申します。 実はわたくしは親のない子猫にございます。 それで麓の町のモトドリに行商の仕事をもらって養われておりました。 夕べは いつものように商業地区へまたたび入りマッチを売りに出たのですが、これがなかなか売れません。 全て売り切らないことには帰れもせず、売れないマッチをただひたすらに売り続けていたのですが、あまりの寒さに耐え兼ねて売り物のマッチ
α さん作 [502] -
猫物語その1(改)
その昔、竹をとるならこの人ありと謳われたお爺さんがいました。仮に竹内さんと致しましょう。 竹内さんは今日も竹を取りに山へ入ります。 するとどうしたことでしょう。 竹だらけの中に一本光り輝く竹があるではありませんか。 あやしがりて竹内さんが、やぶをかき分けそばへ近づき良く見てみると、何と以前切り取った竹の節の中に 一匹の子猫がグッタリとしてはまり込んでいます。 この子猫の見開かれた瞳孔が 早朝の
α さん作 [559] -
富鱒秋茄子
一の亀さん二の亀さん三四の亀さん 五の亀さん六の亀さん 七亀さん甲羅の上に重なって一番小さな亀さんの背中苔むし木が生えて木陰で人がわらわら昼寝する
α さん作 [541] -
Jukebox
歌おう 君が眠るまでだからおやすみ静かな眠りに閉ざされて心ゆくまで黙すといい朝が来るまで まだ少しだからおやすみいつものようにぼくは歌おう君が静かに 眠るまで
α さん作 [441] -
Nutcracker
小さく丸い魂が胡桃割り人形に 据えられてキリキリキリリ圧力を加えて あっさり 割れ砕け小さく丸い魂は食べられちゃった消えちゃった
α さん作 [438] -
漂うカワウソ
海に流されたカワウソは、サメでもいいから会いに来てはくれないかと思います。こうして唯々諾々と漂っているよりも、サメの血肉になって他の生命を生かす要因になることの方が、まだしも有意義な存在ではなかろうかと考えます。海に流されたカワウソは、そうして夢を見るのです。自分が何かにとって不可欠な存在となることを。けれどもサメは、カワウソをカワウソだとは思いません。波のまにまに唯々として、無為に漂う食べ物だ
α さん作 [604]