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かなりあ さんの投稿された作品が7件見つかりました。
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君
あたしの額に額を押し付けたまま、君は静かに歌い出した。流れるような歌だった。たゆたうような歌だった。その調べは子守唄とよく似ていて。あたしはいつしか泣き出していた。心が洗われていった。気持ちが澄んでいった。もう何も怖くないよ、と。君はやわらかな唇を微笑ませて教えてくれた。あたしは泣きじゃくったまま、何度も何度も頷く。温もりってこういうこと。命ってこういうこと。それを信じさせてくれた。何もなかった
かなりあ さん作 [335] -
20歳になる前に
なんで日付変更線は日本の右隣りにあるんだろう。日本を中心とした世界地図を眺めながら、青年は漠然とそんなことを考えていた。青年は19歳。あと3日で20歳になる。だから青年は逃げなければいけなかった。明日から。太陽から。それなのに、まさに20歳になるその日を、日本にいる若者達は世界の中でも最先端に迎えなければならない。そんなの理不尽だ。そうだ。青年は閃いた。世界を赤道に沿って左に向かって旅していけば
かなりあ さん作 [314] -
静かな眠り
疲れてるわけじゃなくてただ眠いだけ頭がぼんやりしてどうしようもなく死に焦がれるの疲れてるわけじゃなくてただ眠らせてほしいだけだって眠りは死の兄弟と言うでしょう?兄だか弟だか知らないけどどうか私を運んでほしい安らかな眠りへ安らかな死へもう見たいものはこの世界にはないから静かに眠らせてほしい……。
かなりあ さん作 [313] -
王子
王子なんて助けに来ない王子だって自分を助けるのに忙しいはずだからそういう時代だから待つことの無意味を知るクールな自分を装いじゃあ王女でもいいから助けに来てくれないかなあと、そんなことを呑気に考えている
かなりあ さん作 [296] -
階段
階段から転がり落ちればあっさり死ねるだろうそう考えると口元がにやついてしまったもちろん、馬鹿なことを考えて楽しんでいる自分に対して、皮肉な意味を込めて
かなりあ さん作 [332] -
いっそ背中から
背中から包丁で突き刺してほしいだらしなく甘え切ったあたしなんて殺してしまえばいい世のため人のために何もできない誰の役にも立てないあたしなんか生きてる価値ないだから突然背後から現れた変質者に包丁で刺されたいそうすれば親に言い訳ができるでしょう祖母に言い訳ができるでしょうねえ誰か突き刺してよそうすれば言い訳できるのにだらしなく涙も鼻水もよだれも垂れ流して泣けるのにそれでいて刺された背中が痛いからだと
かなりあ さん作 [323] -
春の日
緑の煌めきが細い枝にまとわりついて、風と戯れていた。新緑の季節。その緑はどこまでも澄んでいて、ああ、これが命の光なのだと、妙に深く納得した。モクレンは香らない。大きな花びらは広告のように無意味に庭に散らばってしまった。空を見上げると、子どもがクレヨンで描いたような、不器用な白い直線が西に向かって伸びていた。午後の光は透明で、しかし力強く私の顔に降り注いでいた。
かなりあ さん作 [343]
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