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ベンジー さんの投稿された作品が93件見つかりました。
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無形の地へ
雪で埋もれた国境を僕らは越えるのをためらった。その先に待ち受ける未来が抽象画のように無形で背中を押す風さえも止んでしまいその場で足踏みをして後ろを振り返り目に映る見慣れた故郷の風景に嫌気がさした。未来はすぐそこででも少し背伸びをしなければ届かなくて何度も何度も足踏みして今僕らは前に進む。この先、戻れずとももう残すものはなにもないのだから…
ブランキー さん作 [328] -
覚醒の時
心底に潜む悪魔の呻きが僕らの輝く未来を奪おうとするなら音速を超えて、時空を超えて誰より先に僕らはその未来を抱き締める胸の奥に隠した傷跡も煌めく未来の閃光がその温もりで癒してくれる鼓動の叫びを掌で感じさあ、いま全身を司る細胞の一つ一つに呼び掛けろ覚醒の時は来たのだ
ブランキー さん作 [397] -
何も語らない十字架
朝の匂い小鳥の合唱路地裏のゴミを漁る犬猫教会の扉の向こうで一晩中傷を舐め合った男女それをただ見つめていた十字架ステンドグラスから朝日が差し込んで生まれたばかりの日だまりに溶け込む二人愛撫し合って凍てついた皮膚感覚を取り戻すと光の粒子が視界に広がってどこからか聞こえる賛美歌が天国への扉を開く
ブランキー さん作 [384] -
小さなディーヴァ
音の外れたオルゴールを虚しく鳴らして遊ぶ少女庭に植えられたポプラは、葉の擦れた音でマラカスを鳴らす。壁に掛かった古時計は、時刻を知らせるメトロノームとなる。軋んだ木造の家は、その音でバイオリンを奏でる。少女がその四重奏に歌を乗せると、そこは小さなオペラハウスとなった。
ブランキー さん作 [373] -
朧げなる満月の夜
目には見えないボンヤリとした自分の心を映し出す小さな丸い手鏡は、きっと朧げな満月なのだろう。それはいつの間にか空に浮かんでいて、僕らはそれを見て感傷に浸る。それは常に頭上に存在する訳ではない。でもそれで丁度いいのだ。常に鏡を見ていては、当分、前には進めそうにないだろう。だから、たまにやって来る、霞んだ満月の夜に、ふと空を見上げてみよう…
ブランキー さん作 [351] -
夕焼けの二重奏
レンガ造りの町並みに、ハーモニカとアコーディオンの二重奏で奏でる憂鬱な音色が満ちていく。だいぶ西に傾いた太陽。母親に手を引かれながら歩く子ども、口を膨らませているのは玩具を買ってもらえなかったから?買い物籠をぶら下げた若い女性、葱が籠から半分はみ出しているよ。ほら落ちたじゃないか。帰宅途中のサラリーマン、右手にはケーキ屋の箱をもっている。きっと家族へのお土産だろう。ママを呼ぶ迷子の泣き声。すすり
ブランキー さん作 [343] -
マドリッドの憂鬱
広場、噴水、キスを交わす男女。教会、ステンドグラス、尖塔の十字架に止まったカラス。珈琲、湯気、吐息と混じる。夕暮れ、西日、迷子の蜻蛉。日没、暗やみ、別れ際の男女。パレード、国旗、打ち上げられた花火。孤独、哀しみ、マドリッドの憂鬱
ブランキー さん作 [441] -
置いてきぼり
鐘の音に消える煩悩追い掛けて彷徨う影はゆく年に残る。
ブランキー さん作 [410] -
在りし日の罪
哀しみが、在りし日の罪を伴って到来した。なぜ哀しみは、己が罪を諭すのだろう。至福ではきっと知ることができない。償い、そして贖う。神の有無など別にして、この罪をただ償いたい。来たる至上の幸福のために償うは、自己愛の極致。ただ償いたい。許すまじきこの罪を。過去に傷付けた者のために。
ブランキー さん作 [392] -
愛が憎しみを先行するまで…
体内の至る所にできた空洞の中で、風の音と、骨の軋む音が混ざり合って、虚しさを生み出す。この空洞の埋め合わせは、今の僕の心に既存する愛では到底、間に合いはしないだろう。それどころか、憎しみが、さらなる空洞化の一途を辿っていくのだ。だから憎しみと隣り合わせの愛に柔らかなキスをしよう。愛が憎しみを先行するまで…やがて愛で溢れ、憎しみが風化するまで…世界の終わりを望んでしまったこの愚かな心が、煌めく銀狐
ブランキー さん作 [407]