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内田俊章 さんの投稿された作品が142件見つかりました。
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空と海 ?
空が1年生になって、3ヶ月が過ぎ、夏休みに入ろうとしていた。 空は、海人の帰りを待っていた。 「ただいま〜」 「お帰りなさい、お父さん」 海人が、着替えをするために寝室へ入ると、空は、その後をついてきた。 「ねえ、お父さん。今年は何処へ行くの?」 海人の家では、毎年夏になると、妙子の家族とともに、旅行へ行くのが恒例だった。 海人は、もう『そろそろだなあ』と、気にはなっていたが、今年は菜緒が居な
内田俊章 さん作 [364] -
空と海 ?
「ところで矢口さんは、この町に住んで、長いんですか?」 富子は、純子が何を聞こうとしているか、分かった。そして、あえて嘘を言った。 「いいえ、空の父親の転勤で、3年前にここへ来ました。この町に住むのは初めてです」 「そうですか」 「それが何か?」 「実は私の父は、以前に中学校の先生をしていまして、私が小さい時に、桜町中学校に居たんです」 「そうですか?それでは先生は、桜町小学校に通っていたんで
内田俊章 さん作 [368] -
空と海 ?
同じ頃、純子も色々と考え事をしていた。 新年度が始まると、いつも同じ事を考える。 同じクラスの、持ち上がりで担任になる時は、そうでもないが、クラス替えが有った時や、新1年生の担任の時は、毎日が緊張である。一人一人の子供の顔を思い出しながら、どの様に接しようかと考えるのである。 今年は特に、転勤して直ぐに新1年生の担任である。 気がかりなのは、子供たちとの関わりばかりではない。最近は『モンスター
内田俊章 さん作 [367] -
空と海 ?
次の日、石原妙子が早織を連れてやって来た。 海人が空に「早織と遊んでおいで」と言うと、2人は外へ出て行った。 「さあ、上がって」 「入学式が終わって、やれやれって感じ?」 「そうだな、いくら手が掛からないとは言っても、この二月間位は、せわしなかったよ」海人は言った。 「あら妙子さん、いらっしゃい!」奥から富子が現れた。 「ああ、おばさん、お邪魔してます。疲れてるんじゃないですか?」 「少しね。
内田俊章 さん作 [368] -
空と海 ?
入学式の後、担任の大空純子は、職員室で子供たちの名簿に、目を通していた。 純子はこの春に、隣町の小学校から転勤して来たばかりである。そのため、子供たちの顔は勿論、父兄にも知っている人は、全くいなかった。 式の前に、一度出席を取っただけなので、子供たちの名前と顔は、全然一致しない。 しかし純子は、空の名前と顔はしっかりと覚えた。純子は、矢口空のカードを開いて見た。 「お父さんは、矢口海人?えっ、
内田俊章 さん作 [407] -
空と海 ?
入学式の日の朝、3人は居間に飾ってある、菜緒の写真に手を合わせた。 海人が言った。 「お母さん、空の入学式に行って来るよ。これからも、家族みんなを見守ってくれよ!」 空は「天国のお母さん、1年生になって、勉強を頑張るからね!行って来ます」 海人の名刺入れと、空のランドセルの小さなポケットには、菜緒の写真が入っている。 「空、お母さんは1日中、そばにいるんだから、寂しくないな?」 「うん。寂しく
内田俊章 さん作 [394] -
空と海 ?
涙涙の、感動的な卒園式の噂は、直ぐにひろまった。 石原妙子は、早織を連れて海人の家を訪ねた。 「妙子さん、早織ちゃんの洋服を貸してもらって、どうも有り難う御座いました」 「いいえ、おばさん。そんな他人行儀に、礼なんて言わないで下さい!親友だった菜緒が亡くなって、空ちゃんが本当に可哀想でね……。母親の代わりなんて、するわけいかないけど、出来るだけの事はさせて欲しいんです」 「実はね、武田の両親が
内田俊章 さん作 [375] -
空と海 ?
「ピッタリだな、空!すごく似合ってるよ」 「うん。本当にこれを着ても良いの?卒園式も良いの?」 「ああ、良いよ。そのために、おばちゃんが貸してくれたんだから!」 「おばあちゃん、空ね、新しいのじゃなくて良いよ!」 富子は妙子に対して、借りを作る様な気がしたが、余りにも喜んでいる空を見ていると、一緒に喜ぶしかなかったら。 「良かったね。とっても可愛いよ!卒園式も入学式楽しみだね!」 卒園式の日、
内田俊章 さん作 [436] -
空と海 ?
「へえ〜、ずいぶん可愛いらしい服じゃないか?それに、おニューと変わらないじゃん!」 「そりゃあそうよ!一応美容室の先生をしてますからね。着付けもするし、洋服の見立てだって、手入れだって、人には負けないわよ!」妙子は、自慢げに言った。 「体の大きさも、早織の1年生の時と、同じ位じゃない?今日持って行って、合わせて見たら。買うとなると、以外に高いのよ子供服って!」妙子は洋服をたたみ直して、紙袋に入
内田俊章 さん作 [370] -
空と海 ?
「いくら親友同士でも、菜緒ちゃんが亡くなった今は、そうは行かないの!」 「分かったよ。でも、俺にはその気がないから、心配しないでくれ!そんな事をしたら菜緒に恨まれるよ!」 数日後海人は、富子の忠告を無視して、妙子の店を訪ねた。 「あらぁ矢口君、久し振り〜。元気そうね!ああ、ちょっと待ってね…。どうも有り難う御座いました」 1人の客が、会計を済ませて、出て行くところだった。 「さあ座って。空ちゃ
内田俊章 さん作 [380]