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内田俊章 さんの投稿された作品が142件見つかりました。
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タイムカプセル 11
再会 ? 「カン、カン、カン、カン」 駅の近くにある、踏み切りの警報器が鳴り、謙介は我に帰った。 謙介の心臓の鼓動が、いきなり早くなって来た。 列車が滑るようにホームに入って来ると、その鼓動は、一層早くなった。 3人の乗客が降りて、その後に、キャリーバックを持った女性が降りて来た。 サングラスをかけたその女性は、この町には不釣り合いな“女優か”と見間違える様な美人だった。 その他に降りる人は無く
内田俊章 さん作 [297] -
タイムカプセル 10
再会 ? 謙介は、直ぐに愛富駅へ向かった。 駅前は、スッカリ寂しくなり、商店が1軒有るだけだった。 駅舎は変わってないが、今は無人駅になっている。 謙介は時計を見て、列車の到着まで、後5分と確認すると、ホームへ出た。 23年前の3月、謙介と亜紀は、このホームで別れたっきりである。 中学校の卒業を目前にした2月。炭鉱の鉱夫だった亜紀の父親が、崩落事故に遭い、亡くなってしまった。 亜紀は、謙介と同じ
内田俊章 さん作 [293] -
タイムカプセル 9
再会 ? 同期会の当日、謙介は、車を3時間ほど走らせて、愛富町の市街地に着いた。 富岡地区は更に10?位、離れている。 謙介は、中野智樹に電話を入れた。 「もしもし智樹か?西尾だけど」 「おぉ、謙介か。今何処にいる?」 「やっと今、役場に着いたよ!久し振りに来たけど、やっぱり遠いな!後15分位でつくと思う」 「役場か?丁度良かった!」 「えっ?」 「高島亜紀が列車で来る予定で、俺が迎えに行く約束
内田俊章 さん作 [304] -
タイムカプセル 8
思い出 ? 同期会が近付いたある日、栞は謙介に聞いた。 「カプセルを埋めたのは、あなた達の同期生だけなの?」 「いや、全部で10個位有るそうだ!」 「へえ、そんなに有るの?」 「でも、2・3個は、当時のクラス委員や、担任が誰か分からなくて、今調べてるらしい」 「へえ、その人達は、可愛そうね」 「そうだな。その点俺達の学年は、智樹が居るから安心だ!アイツは今、娘が6年生で、PTA会長をやってるんだ
内田俊章 さん作 [303] -
タイムカプセル 7
思い出 ? 「ケンちゃん、有り難う!」 亜紀は、謙介の優しさを感じて泣き止むと、礼を言った。 「もう痛いところは無いか?」 謙介が聞くと、亜紀は胸を押さえて言った。 「ここも痛い!」 謙介は、何も考えずに、亜紀の服をめくり、下着もめくった。 亜紀は、恥ずかしがる事もなく、謙介の為すがままになっていた。 「あっ!ここも赤くなっている」 良く見ると、溝うちの上辺りが、赤くなっていた。 謙介は、ハンカ
内田俊章 さん作 [316] -
タイムカプセル 6
思い出 ? そんな栞の思いも知らずに、謙介は又、昔の事を思い起こしていた。 謙介の家と小学校のほぼ中間に『金光寺』と言う寺が有った。 4年生になったばかりの5月のある日。謙介と亜紀は、金光寺で道草を喰っていた。 金光寺の裏には、大小様々な墓が並んでいた。 その一番奥に、5M四方位に、石垣と塀が張り巡らされた、立派な墓が有った。 2人は、その墓の周りを走りながら、追い駆けっこをしていて、亜紀が敷き
内田俊章 さん作 [407] -
タイムカプセル 5
思い出 ? 「あなた!亜紀さんに会えるの、楽しみネ!」 妻の栞の、皮肉った声に、謙介は我に帰った。 「えっ?あぁ…」 謙介は38才で、栞は2才下。結婚して13年になる。 謙介は、栞との結婚前から、子供の頃の思い出として、亜紀との事を話していた。 謙介は、過去の恋愛歴を、面白い可笑しくオープンにし、栞もそれを、過去の事と受け入れていると思っていた。 実際に栞も、焼きもちを焼くこともなく、それらの話
内田俊章 さん作 [325] -
タイムカプセル 4
思い出 ? 謙介は、電話を切った後、小学生の頃に、思いを馳せた。 謙介の家から小学校迄は、約1?。 子供の足では、20分はかかり、近所に住む“高島亜紀”が迎いに来るのが日課だった。 「ケンちゃん、行こう!」 毎朝、高島亜紀が、玄関の外で叫ぶ。 「今行くから待ってて!」 そう言うと、謙介はランドセルを背負って外へ出る。そして、お互いに笑顔で挨拶をするのである。 そして帰りは、と言うと、富岡神社の、
内田俊章 さん作 [409] -
タイムカプセル 3
思い出 ? 「謙介、6年生の時の、タイムカプセルを覚えているか?」 「もちろん覚えているさ!何を入れたかも覚えているぞ!」 「そうか、随分記憶が良いな!俺は『将来の夢』と言う、作文を書いたのは覚えているけど、タイムカプセルを埋めたのは、ほとんど記憶が無いんだよな」 「智樹は『3階建のビルを建てて、デパートの社長になる』って書いたはずだぞ!」 「へえ〜、俺の書いた内容まで覚えているなんて、すごいな
内田俊章 さん作 [319] -
タイムカプセル 2
思い出 ? 西尾謙介と中野智樹は、愛富町の富岡小学校の同期生。 愛富町は、2つ有った炭鉱が、10年程前に相次いで閉山となって人口が激減し、謙介が小学生だった頃の、1/3位にまで減ってしまった。 特に謙介が住んでいた富岡地区は、ほとんどが炭鉱関係の住人で、そう言った人達は、閉山から10年経った現在、全てが転出してしまった。 残ったのは、8軒の農家と、代々この地区で商店を営む中野家、寺、小学校の教員
内田俊章 さん作 [303]