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ケィ。 さんの投稿された作品が48件見つかりました。

 
  • 逃避

    助けて下さい。僕らは追われているのです。駆ける度、小さな針が幾つも僕らの踵に刺さって、今にも足が止まってしまいそうです。逃げ切れない。逃げ切れない。助けて下さい。地に足を着ける度、針は深く突き刺さります。針の先が肉を貫き、骨をうがつ感触が、怖気と共に神経を這い、僕の脳に伝わります。足を止めてはいけない。立ち止まれば二度と何処にも辿り着けない。嫌だ、嫌だ、もう走りたくない。助けて下さい。奴らは周到
    ケィ。 さん作 [450]
  • 悲しい時は、傘をさします。私の大好きな、赤い傘。悲しいことが多すぎて、赤い傘から雫が落ちます。真っ赤な、温かい雫が、次から次へと溢れます。何故こんなにも悲しいのでしょう。何故悲しいことはなくならないのでしょう。私は泣きたい。けれども私の瞳は渇いてしまって、透明な一滴の涙さえ流れてはくれないのです。だから私は傘をさします。傘をさす時、私は泣いているのです。抑えようのない悲しみに身を浸して、必死にあ
    ケィ。 さん作 [1,025]
  • ある対話

    『先生、教えて下さい。この世界は何なのか。人は何のために生まれて、何のために死ぬのですか?』『じゃあ君に、幾つかの答えをあげよう。何が真実か、その判断は君に委ねる』『世界は、神の創りたもうたまがい物、エデンの影だ。永遠なるものと対を為すよう滅びと再生を繰り返す。エデンが美しく調和を保つものであるように、醜いもの、混沌をもたらすものは全てこの世界にある。神が全知全能である事を証明するために。美しい
    ケィ。 さん作 [510]
  • ―Never Land― 12-0./物語ハ未ダ終焉ヲ知ラズ

     幸福というものがほんの些細な一時に過ぎないなら、時が残酷にそれを遠ざけるなら、何度でも思い出せばいい。 何度でも、繰り返せばいい。 何度でも、生まれ直せばいい。 何度でも、造りあげよう。 そこに、なんの咎がある? この命さえ、マガイモノなら。「また、一緒に暮らそう?その為なら、僕は何だってする。僕らの世界を守る為なら、何だって。…」 ディスプレイの表示が物凄いスピードで流れて行く。画面が、青か
    ケィ。 さん作 [621]
  • ―Never Land― 11.

    ナガセは、狭い自室のベッドの上で目覚めた。少し休むだけのつもりだったのに、いつの間にか眠ってしまったらしい。 ベッド脇のチェストに置かれた男物の腕時計を見ると、カプセルに入ってから5時間も経ってしまっていた。 ナガセは跳ね起きると、イェンの姿を探した。「イェン!イェン!」 悲痛なまでに叫ぶが、答えは無い。 カプセルのある部屋に駆け込み、ディスプレイを凝視する。 …time over。「イェ
    ケィ。 さん作 [671]
  • ―Never Land― 10.

     部屋中に鬱蒼と生い茂った植物に、思わず足が止まった。 ナガセはその中で、平然とノートパソコンのキーを叩いていた。「散らかってるけど大丈夫だよ。上がって」「…散らかってる、ねぇ。ますます散らかっていくみたいだけど、いいのかい?」 植物達は話している間にもその根や枝をどんどん伸ばし、増殖し続けていた。「大丈夫。明日には枯れるから」 ナガセは自分に絡みつく根をそっと払い、キーを打った。 イェンは、疑
    ケィ。 さん作 [596]
  • ―Never Land― 9.

     イェンが、部屋の隅で本のページを読むともなしに捲っていると、明滅する画面と睨み合っていたナガセが不意に語り出した。 その顔は上半分がアイシールドに覆われ、表情が読めなかった。「何もかも壊してしまいたくなるのは、何も信じたくないからなんだ、きっと」 イェンは、話を途切れさすまいと短く相槌を打った。「何も信じたくないのは、裏切られたくないから」「うん」「傷つけられまいと傷つけて、そのせいで傷ついて
    ケィ。 さん作 [645]
  • ―Never Land― 8.

     ナガセは、今日は背中に羽のような物を着けて、プカプカと宙に浮かんでいた。「ヨハンソンに会ったね?」「同僚だからね」 玄関で苦笑するイェンを、ナガセは逆さまの体勢で睨み上げるように見下ろした。「誤魔化そうとしても無駄だよ。香水の匂いがする」「そんなに色っぽい関係じゃないんだけど。本当に匂う?」 肩や背広の襟の匂いをかぎ、首を捻った。「嘘だよ。嘘に決まってるじゃない。何でわかんないの?」 ナガセが
    ケィ。 さん作 [503]
  • ―Never Land― 7.

    「貴方まだアカツキ=ナガセの担当やってたの?」 イェンがデスクで書類を見ていると横から、珈琲が差し入れられた。 ジェシカ=ヨハンソンがそういった事をする事は滅多に無く、イェンは眼鏡をかけなおして、彼女の顔をまじまじと視た。「何よ?」「いや」「気持ち悪いわね?それより、そろそろあの子の担当誰かに代わって貰った方がいいわ」「珍しいね、君が人の仕事に口を出すなんて」 イェンの呑気な受け答えにMs.ヨハ
    ケィ。 さん作 [510]
  • ―Never Land― 6.

     二人は共に言葉を無くした。その沈黙を終わらせたのは、意外にもナガセの方だった。「…僕は、何となくあなたの頭の中が透けて見える様な時がある」 イェンには、ナガセが何を言おうとしているのか掴めなかった。ナガセは独り言のように続けた。「あなただけじゃない。あなたの上司に、あなたの前任者…自分でも意識する前に、僕は他人の裏側を視ようとするんだ。前はそうじゃ無かったのに」 その幼い体の内に、既に限界を超
    ケィ。 さん作 [526]
 
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