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公募投稿作品の携帯小説に含まれる記事が496件見つかりました。

 
  • 白い天使のうた (7)

    週の3日から4日は塚本はその施設へ通うようにしたが、彼女は雨の日もお構いなく、裸足で傘を差さずにいつもの木々の所でうたっていた。彼女にとってはうたうこと、それ自体が息をするかのようだった。時々、施設の中で彼女を見かけることもあったが、廊下を歩く彼女は、口をつぐみ、うつむきかげんで、瞬きしていることも自分では気付いていないのかと思うくらい、その表情はまるで動かなかった。一瞬見間違えたかと思い、すぐ
    宮平マリノ さん作 [403]
  • 道しるべ

    何もない駅に降ろされ、薄暗い山の中を、途方にくれつつ、線路伝いに歩き始めた。少しずつ…少しずつピンク色の空がコバルトブルーへと染まり始める。辺りでは、虫の鳴き声と、微かに聞こえる木立の擦れ合う音しか聞こえて来ない。不安と寂しさが、歩けば歩く程、増していく。「どうしよう…。。せめて、民家があれば…。。」不安を押し殺す様に、ひたすら歩き続けた。 気がつけば、辺りは真っ暗で月灯りがぼんやりと自分と線路
    トンテン さん作 [406]
  • 道しるべ

    「ふぅ…。」ため息をつきながら、車窓に目をやった。見えるのは山間のみ。木々が自らよけて行く様にも見えた。辺りも暗くなり始めている。(そうだ…。時間…。)時間を聞こうと 老人の方を見た。(え…?)老人の姿が見えない。(なんで…??)まだ、次の駅に到着していない。隠れる場所もない。いや、それよりも、老人がいた気配すら、もうすでに そこにはなかった。(なん…だったの…?)呆気に取られている内に、段々
    トンテン さん作 [452]
  • 道しるべ

    どの位、時間がたったのだろう…。乗り換え案内の車内放送で目を覚ました。寝ぼけ眼で辺りを見回す。聞いた事の無い駅名、見た事の無いローカルな駅。人は一人もいない。どうやら、ここがこの電車の終点みたいだ。(ここ…どこだろう?)少しの不安を心に押し込め、ゆっくりと立ち上がり、ホームへ降りた。隣には、古ぼけた短線列車が、お客を待っている。なぜか、この列車にも人は一人も乗っていない。(回送列車…じゃ…ないよ
    トンテン さん作 [426]
  • 道しるべ

    「……」目覚ましが鳴る前に目が覚めた。いつもなら目覚ましの音にイラつきながら、重だるい体を無理矢理起こして、時計を見て慌てて朝食の用意と身支度を始める。「私…どうしたんだっけ…?」部屋を見渡し、壁に掛けてあるカレンダーに目をやると、昨日の日付に丸印。その下には[夫・誕生日]のメモ。(そうだった…。昨日は夫の誕生日だったんだっけ…。)結婚し、子供もなく、兼業主婦になって、気がつけば五年の月日が流れ
    トンテン さん作 [420]
  • 白い天使のうた(6)

    久しぶりに聞く声だった。なんだか、懐かしく、こころすり抜けるような、柔らかく、透き通るような。なんて優しい人なんだろう。声だけ聞いていて、その人の人柄がわかる。そして、声を上げる時の抑揚の仕方、和らげる時のブレス使いが、「そう、昨日の彼女に似ているんだよな。」それが、塚本のこのCDを持ってきた一番の理由だった。ふと横を見ると、扉から顔を出した彼女の、いつもの木に向かおうとしている姿だった。はっ、
    宮平マリノ さん作 [505]
  • 白い天使のうた(5)

    昨日、彼女がいた場所からはまだ遠い、扉からも少し離れた芝生の上で、塚本は座り込み、デッキから、曲を流し始めた。持ってきたCDは、ゴスペルシンガーのレーナ・マリアという女性ボーカルだった。生まれながら、両腕はなく、左足は右足の半分の長さしかない、という重度の障害を持って生まれる。それでも、彼女の両親は、普通の子たちと同じように育てようと、普通校の小、中学校と学ばせた。自分で食事、通学、水泳もする。
    宮平マリノ さん作 [476]
  • 白い天使のうた(4)

    翌朝、塚本は昨日より早く家を出た。手には、CDを聞ける音楽機器を持って。「これをあの子に聞かせよう。きっと、歌をあまり知らないんだな。でも、透き通るそれでいて芯の通ったとてもいい声をしていた。温かくて優しいようで、深く悲哀のこもったようなー。きっと、彼女自身の心なんだな。」「それと、彼には、ま、これをあげよう。」そう言って、一枚のポストカードをノートに挟み直した。みことば付きのポストカードである
    宮平マリノ さん作 [445]
  • 白い天使のうた(3)

    「僕も何度か彼女に話しかけてみました。彼女以外の子供たちにもです。でも、僕には何もすることができない。僕、ずっとボランティア活動やっていたんです。ここでもきっと、僕を必要としてくれると。でも、ここに来て、僕の存在価値が余計に見えなくなってきました。僕はここに必要なのか。僕を必要としてる人がここにいるのか。いや、僕自身必要な人間なのか。自分からここに志願して入ってきたのに、僕自身、人から捨てられた
    宮平マリノ さん作 [572]
  • 白い天使のうた(2)

    まるで野性の動物が相手を警戒するかのような目つきで、少女はこちらを見た。そしてすぐに、何歩か後ずさりをしたと思ったら、後ろを何度も何度も振り返りながら最後まで警戒した顔付きで、施設の扉へと姿を消して行った。あまりにも一瞬で、塚本は誤解を解く暇もなかった。いや、誤解とはなんだろう。普通に歩いていて、普通はあそこまで警戒されるだろうか。そこまで牧師面している訳ではなかったが、それでも、愛嬌のある、親
    宮平マリノ さん作 [529]
 
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