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エッセイの携帯小説に含まれる記事が2019件見つかりました。
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15歳のデイトリッパー?
「えっ…あっ、はい。そうですか…」電話口からもちろん向こうの声は聞こえない。ただただ私は、不吉な予感を抱いていた。まもなく友三がこちらに近付いてくる。「さて、残念なお知らせがあります」さほど残念そうな顔はしていない。「塩田さん、来れへんってよ」私は少なからず落胆した。しかし不思議と心は折れなかった。何より、私はこの小旅行が少し気に入っていたのだ。仮に帰ろうとしても、友三はそのまま私一人を帰らすこ
けん さん作 [374] -
15歳のデイトリッパー?
「けっこうチャリこいできたけど…まだ着かへんの?むっちゃ田舎やん」街はとっくに通り過ぎ、見知らぬ風景があたりに広がっている。夏の日差しが肌をじりじりと焦がした。「こういうとこの空気もたまには吸わなあかんねん」道路がすっと伸びていて、その脇には川が気持ちよく流れていた。「あっ」我々は少し先にコンビニを見つける。「そういえばまだ何も食べてへんかったな。寄ってこか」店内のクーラーが異様に心地良かったの
けん さん作 [398] -
15歳のデイトリッパー
友三、お前は今どこで何をしている。親父さんの跡を継いでしっかり働いているのか。こう風が冷たくなってくるとお前のことを時々思い出すんだ―――\r「なぁ、今から面白いところ行こうや」ふいに友三が話しかけてくる。私は少し渋い顔をつくってみせる。こういう時の友三は決まって何らかの悪事を企んでいるのだ。こいつと知り合ってから、何度私は自分のフレームを壊してきたことか。外泊、ラーメン屋通い、路上ギター、田ん
けん さん作 [435] -
病気と幸せ9
K君が点滴から戻ってきた。右も左も注射の跡が痛々しい。S氏と楽しそうに話している。患者同士気がねなく話せて嬉しそう。S氏の病気は遺伝的なものだそうだ。それも風土病。十万人に一人の割合で発症する病気だそうだ。この病院に来る患者は難病が多い。僕の病気は一万人に一人だから、僕の方が仲間が多いなあ。とK君は笑った。今日の診察は主治医が学会でいないので、若い先生が担当することになっている。前回悪くなった症
みみ さん作 [575] -
病気と幸せ8
また、見えへんように、なったんよ。K君が。今ステロイドの点滴中。大変やね。まあ焦らんと、気長に。今いい薬があるから!なんだか同じ患者の人と話していると、暖かい気持ちになる。同情とか慰めでなく、戦友のような一体感がある。神様は無駄足を踏ませない。って言うけど、病気を抱える人はなぜだか暖かい。家族が仲がよい人たちが多い気がする。親子関係や夫婦関係も互いを思いやっていて、清々しい。喧嘩したり離婚を考え
みみ さん作 [463] -
病気と幸せ7
待合い室でS氏をみかけた。あちらは患者友達。従って綺麗な瞳をこちらに向けているが、私には気づかない。さっと立って目の前に立つと、やあ、と微笑んでくれた。彼はやさしい社交的な好人物だが、綺麗な瞳が殆ど見えないことを知らない世間の人に、時々挨拶もしないと誤解されるそうだ。歩いたり時には走ったりできても、顔の判別ができないくらいの視力の人は多いのだ。眼鏡をかけてもコンタクトをしても0.1が見えない人の
みみ さん作 [469] -
病気と幸せ
K君が点滴で呼ばれたので、私は飲み物を買いに待合い室を離れた。頭に包帯を巻いている人、車いすの人、点滴の途中たち歩く人で売店付近の廊下は町の歩行者天国のように人が多い。このメインストリートには病院内というのに郵便局はあるし散髪やパーマ屋喫茶店うどん屋鰻屋まである、売店はコンビニのようで薬屋もある、本屋もある。暇に任せていろいろのぞき、キャッシュサービスでお金をおろし、戻ってきた。K君はまだ点滴が
みみ さん作 [501] -
病気と幸せ5
今日は子供の患者がいやに多い。赤ちゃんから高校生くらいまで。小さいときから、目にトラブルがあるのはいたたまれない感じ。隣の赤ちゃんもK君と同じく一時間ごとにステロイドを点眼しなくてはいくないらしい。目薬をさす度に大声でなく。お父さんが身体を押さえ汗だくで一滴をさしている。ごめんね。ごめんね。と言いながら。赤ちゃん泣かないで、と私は心の中で祈った。虐待する親が多いこの頃あんたはやさしいパパに恵まれ
みみ さん作 [546] -
病気と幸せ4
目が見えにくい人が集まる待合い室。見えにくいということは、見える範囲が限られる、見える距離が限られるなど様々。K君は見える時間が限られる。それも今は片目だけしか見えない。それでも仕事をしている。健常者に混じって。物を見てると言う意識が強いので、普通の人より、細かいところに気がつき、私もビックリするときがある。あの駅の前には循環器の内科があるとか、犬猫病院があのバス通りにあるとか。私など電車に乗っ
みみ さん作 [342] -
太陽と君
「ここでちょっと待っててね。」かあさんが言った。「うん。」ずっとまった。あの思い出の公園で・・・。「まだかな〜。」ずっとずっと待ってもかあさんの姿は見えない。そう・・・僕は捨てられたんだ。なぜですか? 僕がなにかしましたか?僕は一人ぼっちになりました。かあさんのいった「ちょっと」はいつになったら終わるんだろう。なんでまだ来てくれないんだろう。まだ年長さんの達也にはまだ分からなかった。
鷹橋 美喜 さん作 [504]