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子供のセカイ。111
必死で自分に言い聞かせてみても、胸の痛みは消えなかった。嫌われている、と悟ることは、とても悲しくて、むごい。「美香。」耕太は背を向けていたから顔は見えなかった。しかしその口調は一筋の笑いも含まず、どこまでも真摯だった。「今は、ごちゃごちゃ考えるのはやめようぜ。まずは本物の舞子に会わなきゃさ。そん時にまた色々細かいことを相談すればいいだろ。」いかにも耕太らしい意見だった。耕太はいつも前向きだ。悪く
アンヌ さん作 [424] -
子供のセカイ。110
舞子にはふわふわと夢見がちなところがあった。何か新しいものを想像することが大好きだったし、だからこそ美香が止めるのも聞かずに、しょっちゅう“子供のセカイ”を開いていた。ただ、舞子は特殊な力を持っている。舞子の“子供のセカイ”は現実になるのだ。大人は見ることも触ることもできない。子供は見ることができるが、触ることはできない。この原則をくつがえし、子供限定だが触れるようにしてしまったのが舞子の力だっ
アンヌ さん作 [446] -
ロストクロニクル9―6
「お前達!何者だ!」さらに別の兵士に見つかってしまった。「とにかく今は逃げるぞ!」パットが叫んだ時「逃がさないよ」目の前に大量の桜の花びらの壁が現れた。「なんだ!」桜の花びらは四人を囲むように円を描いて回る。「どうなってるんだ!」花びらが一瞬で消えたかと思えば、オーケスの民家が立ち並ぶ郊外に飛ばされていた。「・・・お前、何者だ」四人の前には、顔を隠すように下を向いている色鮮やかな桃色の着物を身に
五十嵐時 さん作 [441] -
きっと昔の物語 弐
案の定、そこにはとても美しいお姫様がただ一人…一人きりでお城にたたずんでいました。 しかし…長い間、ほんとに長い間住んでいただろうお城はまだ美しく、ごみや苔などはいったいはえておらず、家具なども見当たりませんでした。 隣町のお姫様は一人ぼっちの美しいお姫様に語りかけました。 「ごきげんよう。はじめましてね。…突然だけれど…私と友達になって」 ところが、何度も語りかけてはみたものの、いっこうに返事
ツト さん作 [320] -
ロストクロニクル9―5
シャープとドローは城内に入ろうとする人々の元へ駆けつけた。いくら中にはムシがいると言っても、一笑されて追い払われるだけだった。「仕方ないわね。ドロー、わたし眠っちゃうかもしれないから、その時はよろしくね」シャープは掌に杖を出現させると集中し始めた。「はぁ?どういう意味だよ?」「魔導師は魔力を使い過ぎると、魔力を回復させるために本能的に眠るようにできてるの」シャープの体は冷気に包まれていく。「おい
五十嵐時 さん作 [401] -
子供のセカイ。109
それにしても、舞子はなぜ急に泣き出したのだろう。なぜあんなにも怯えた顔をしているのだろう。美香が近づくほど、舞子の声はますます大きく、ますますヒステリックになっていった。美香は舞子の目の前に立った。小さな舞子を黙って見下ろす。舞子はTシャツのすそを、手が白くなるほどぎゅうっと強く握り締めていた。唇がぶるぶると震えている。大粒の涙が、ぼたぼたとあごの先を伝い落ちては石畳に染みを作った。「舞子。」美
アンヌ さん作 [354] -
神のパシリ 42
「…くっ!!」レミーシュはゼルから体を離し、唇から糸を引きながらも、呆然とゼルを見ている。右肩から、何者かの、鋭利な指が突き出ている。「…案外マヌケだな、お前」ベッドの下から声。…そうか。魂などないから、気が付かないワケだ。「お前の体もいただくぜ」魂の焔が、激しく魂喰いの起こす風に揺さぶられる。以前のように、躯を支配するつもりか。…レミエルのように。ゼルは体を起こそうとするも、貫いた指ががっちり
ディナー さん作 [419] -
大切なもの
ガチャリ………私はドアを開けて中に入った。誰もいない。いるのは私が小さい時拾ったネズミだけ。パチッチッチチチ電気をつけソファにもたれかかる。これと言った装飾品も何もない部屋。こんな生活はいつからだっただろう…いつでも私は一人だ。寂しくなんてない、これが普通なんだ。笑顔で友達だよと言っても、最後には裏切る。ならば友達はネズミだけでいい。ネズミは私を裏切らない。チッチチッチチチ!ごめんごめん!ご飯
淋しい兎 さん作 [243] -
もしも明日が2-5
コンコン…控え目なノックの音。「開いてるわよー」軽く言ってやるとカラカラとドアが開かれた。「あら、火葉くん。もう『お仕事』なの?」若菜には誰が訪ねて来たのかはわかっていた。「あ、ああ。」「そう、獲物は?」「こいつだよ。」資料を見せると若菜は顔をしかめた。「まるでカメレオンね。厄介だわ。」はぁ、と溜め息をついたあと若菜は今度は何やら思案顔になりぶつぶつ言い始めた。若菜が何か案を考える間、火葉はぐる
花神ミライ さん作 [224] -
きっと昔の物語 壱
あるところに一人のとてもとても美しいお姫様がいましたですがいつも一人でした性格もいいのに、見た目も比べようがないほど美しいのに…何故でしょうか?ある時、その噂をきいた隣町のお姫様が 「私もその方とお話がしとうございます」と、いいました そのお姫様はみの周りには金に飢えた美男美女、そしてありあまるほどの豪華なものに囲まれてすごしていましたですが、どれも空虚なもので、お金がなくなったらこんな奴らは自
ツト さん作 [365]