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ミステリの携帯小説に含まれる記事が2060件見つかりました。
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龍と狼40
聞き慣れない言葉だった。『広東語だ!』ソンスンが相手の叫ぶ言語に意識を取られた時、ソルミが叫んだ。「ソン!手榴弾や!」ハッとした時、広東語を話す、アジア系の男が倒れながらも、手榴弾を持ち上げてピンを抜く直前だった。ソンスンは慌てて、来た方向へ駆け出して、ソルミに向かって叫んだ。「伏せろーっ!」叫んだソンスンもソルミが伏せたパトカーの陰に飛び込んだ。ドンッ!!独特の重低音と振動、そして爆風が、周囲
武藤 岳 さん作 [397] -
龍と狼39
ソンスンは、相手が射撃してきた方向を見た。道路の先に、路上駐車の車両が三台停まっている・・・『射角からすれば、あの車の辺りだ。何台目にいるのか・・・』ソンスンは、向かい側のパトカーの陰に隠れているソルミに、指を指して指示した。「一番前に停まっている車・・。あの車のエンブレムの少し左側を狙え・・」ソルミは無言で頷くと、拳銃を取り出して、パトカーの陰から狙いを定めて構えた。パンッ!パンッ!パンッ!三
武藤 岳 さん作 [356] -
龍と狼38
「まだ、他に仲間がいたんだな」ソンスンは周囲を見回しながら、ソルミを抱き寄せた。「まだ、おるん?」ソルミもソンスンと一緒になって、薄暗くなりかけている夕闇の、人気のない住宅街を睨みつけた。「死体の処理をしたんだ。ちゃんと、実行犯の他に、サポートのメンバーがいたんだ。用意周到だな。」ソンスンは見えざる敵に不信感を与えない為に、ソルミと共に、ゆっくり歩き出した。「尾行られてんの?」ソルミも警戒心のレ
武藤 岳 さん作 [339] -
龍と狼37
「見てみい、パスポートや」ウンジュが嬉しそうに言った。「どうせ、偽造だろ?」ソンスンはウンジュを相手にしていない素振りだった。ソンスンは死体をよく見てみると、ちょっとした事に気がついた。「なあ、ソン、こいつらの顔、ちょっと違うなあ?」ソルミも気付いた。「トルコ系アメリカ人や」ウンジュが言った。「白人っぽいんやけど、少し違うな」ソンスンがワンボックスのダッシュボードに置いてあった、一冊の本を見つけ
武藤 岳 さん作 [386] -
龍と狼36
刈られた相手が宙に浮き、落ちた瞬間、鳩尾に体重を乗せて膝を入れた。そして、背後に気配を感じた瞬間、意外な声が想定外の方向から耳に飛び込んだ「ソン!」ソルミの声だった。ソルミが背後の男に急接近した瞬間、「ハッ!」一瞬の掛け声と共に、ソルミの華麗なハイキックが相手のアゴを割った。さっき見せた、子供のようなソルミとは違う、闘う勇者を見た感覚になった。ウンジュが、ワンボックスから引きずり出した男を、後ろ
武藤 岳 さん作 [360] -
龍と狼35
「おい、ちょっと待て!」振り向き様にソンスンは呼び止めた。しかし、白人の男達は全く止まる素振りも見せないまま、小走りに去って行く。「おい!待て!」ソンスンは後を追いかけた。ウンジュもその様子に気付き、ソンスンの後を追った。男達は小さな公園がある道路脇に止めてある白いワンボックスに乗り込もうとしていた。「おいっ!」ソンスンが叫んだ瞬間、男達のうちの一人が尻のポケットに手をやった。その動作を見た瞬間
武藤 岳 さん作 [339] -
龍と狼34
「ソルミっ!大丈夫かっ?」ソンスンが聞くと、ソルミは真っ青な顔をしていた。「大丈夫」 ソンスンとウンジュはソルミの無事を確認するや否や、シャッターの外へ飛び出した。市場に繋がっている商店街の方から、相当な勢いで黒煙が上がっている。「今のは爆弾の音や!めし屋のガス爆発の音やなかったでえ!」「爆弾テロか!?」ソンスンは急いで倉庫に戻ると、拳銃二挺持ってきた。「あほっ!これがホンマにテロやったら、もし
武藤 岳 さん作 [354] -
龍と狼33
「ニホンオオカミって何者なんだ?」ソンスンが知りたいのは、そこだ。「わからん。ただ、本店(NIS)の話によると、公安の連中がアメリカへ行くらしいで。日本はホンマに、このグループを知らんのかもな。せやから、うちも大勢、本店の連中をアメリカに行かせるらしいわ」ソンスンが溜め息を吐いた。「大勢の同胞が殺された。“ニホンオオカミ”なんてふざけた名前をつけやがって!絶対に日本人の仕業だ。棟方が裏から糸を引
武藤 岳 さん作 [350] -
龍と狼32
「ソン!おるか?」下からウンジュの声が聞こえた。ソンスンもソルミも慌てTシャツを被り、ロフト状の二階から下を覗いた。「おう、ソン!」明るい表情のウンジュだったが、ソルミの顔も見えたので、ウンジュは少し慌てた。「うわっ!昼間から何をやっとんねん!何を!」ソルミがすかさず反撃した。「何を想像しとんねん!変態っ!」ウンジュは可愛い妹の突っ込みに笑い返しながら、手招きをした。ソンスンとソルミの二人は下へ
武藤 岳 さん作 [333] -
龍と狼32
ソンスンは言い返そうと、口を開こうとしたが、ソルミの涙目と、自分の事を思っての意見だと理解すると、口論する気にはなれなかった。「所詮は人殺しだよな。」ソンスンは、テーブル越しに腕を伸ばし、ソルミの目頭を軽く拭いた。ソルミは、子供のような顔をして、軽く頷いた。「人殺しなんかしてへんかったら、こんな暗い倉庫で、ご飯食べんでも、家に来てみんなで一緒にご飯食べられるし、コソコソせんでいいやんか!」ソルミ
武藤 岳 さん作 [337]