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ミステリの携帯小説に含まれる記事が2060件見つかりました。
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嘆きの華
「もうやめないか」その声は二ヶ所からほぼ同じに発せられ、二重の音響二重の威圧を放っていた。店の端で下を俯きながら爪楊枝をくわえている男。そしてグラスを研いているバーテン。それぞれが少女にとっては英雄だった。予測不能。まさかの意志の合致にある男は目を丸くし、ある男は動きを止め、ある男は、「バーテンは黙ってろ。それと、そこの若造。爪楊枝くわえて調子こくなら今のうちだぞ。見ず知らずの女を助けるたぁ大し
最上 さん作 [576] -
あじさい山は午前8時に噴火する
あじさい山には大昔から伝説がある。そうタイトルどおり午前8時に噴火するのである。私がこの伝説を耳にしたのはとある考古学者の友人からである。「なぁ、マコト。あじさい山の伝説って知ってるか?」いきなり飲み会の席でタカシが妙なことを言う「なんだよそれ?」タカシはほかの誰にも気づかれないようにひそひそと話した。「俺の田舎にあじさい山っ名前の火山があるんだけどな、その山がさぁ。毎朝午前8時に噴火するらしい
ぽんぽこ さん作 [463] -
夢魔 ?
部屋に戻った私は彼に開口一番、「随分遅かったな」といわれたが、道に迷ったとウソをついておいた。 数十分後、今度は彼が用を足しにいった。そのすきに、彼のベッドの下に探りを入れた。もしかしたら、例の彼女の写真が残っているかもしれない。 結果は大当たり。じっと見つめること七秒弱。元あった場所に返しておいた。 なんてことはない。彼の両親のいったことは的を射ている。 確かに顔はそんじょそこらの女子よりも
柚木麻里 さん作 [457] -
嘆きの華
沈黙。しかしその一瞬後沈黙は男共の下卑た笑い声にかき消された。「がはははは!私を守れだ?寝呆けたことをぬかすなら今夜一晩明かした後にいくらでも言わせてやるぞ」「なっ…この恥知らず!」少女は一瞬俯いたが、またすぐに男達を睨み付けた。「あなた達にはもう用はありません。この店に腕利きがいるって聞いていたけど、こんなゴロツキしかいない所だとはね…」「なんだと?」男はその侮辱を聞き逃さなかった。少女を舐め
最上 さん作 [529] -
嘆きの華
男達は一斉に立ち上がり少女を一瞥した。明らかな疑念を顔に浮かべ、今聞いたことは間違いだったのではないかと耳を疑っている。「なにとぼけた面してみてるのよ。嘆きの華の情報を掴んだの!」一触即発ともいえるこの場の雰囲気の中、この女は空気が読めないのだろうか。まさか挑発的な台詞をはきやがるとは。これに男達は頭に血が昇ってしまったらしい。椅子を蹴り上げ、少女に詰め寄る。「あんだって?お嬢ちゃん。大人をなめ
最上 さん作 [452] -
夢魔 ?
「ねぇ、あの人誰?」「高林君だよ。同じ高校の」 話によると、彼は常に学年で五本の指に入るほどの成績をキープしており、スポーツ万能でサッカー部のエース。おまけに見てくれもよく、話も面白く、女子に人気だそうだ。「彼女いるの?」 恐る恐る尋ねてみたが、Y美はたぶんと口をにごらせた。少なくとも学校と予備校にはいないらしい。 しかし、大層モテる彼に彼女がいないわけはないのだが、皆よく知らないそうだ。「ウワ
柚木麻里 さん作 [607] -
屍死1
一哉の事は何でも知っていると思っている。それが恵美子の女としての自負であり、一哉という、美しい男を丸裸で愛している証でもあった。その一哉は、読経が聞こえる僧侶の後ろの棺桶の中で息をするまもなく寝むっている。夜はどっぷりと暮れていたが、訪問客の列は途切れそうにない。恵美子は婚約者という事で親族の連なる場所に座っていた。悲しいどころでは無い、一哉が死んだのが2日前、それからすぐに通夜、告別式と恵美子
里咲愛理 さん作 [654] -
夢魔 ?
「本当に良いこねぇ、則子さんは」「あぁ、今時あんな子はいないよ。明は良い子に巡り合えてラッキーだな」「本当。いっそのこと明のお嫁さんになってくれないかしら」「はっはっはっ。それは少し早すぎるぞ。しかし、前のよりずっと良いな」「そうねぇ。半年前までに付き合っていたあの子、えーっと、何だったかしら。名前が出てこないわ。あなた、分かる?」「いいや、覚えてないな。顔は薄ぼんやり覚えているんだが……」「私
柚木麻里 さん作 [518] -
寝れない少年、殺人鬼?
「朝よ、起きなさ〜い!」いつものように母が一階から大きな声で少年を起こした。少年は目をこすりながらテーブルにつき朝食を食べ始めた。今日も、朝からテレビが騒がしい。「…今朝、K市の河川敷で発見された殺害された男性の死体の身柄は以前発見されてはおりません。」 「また、この一連の犯行は大獄魔鬼人となのる男の犯行かもわかっておりません。」まただ。どんなに頑張っても警察見つけられないんだよ。そう少年は思っ
た坊 さん作 [596] -
嘆きの華
寒いな…俺は呟いた。独り言は癖なのだ。そのまま目の前にある俺のいきつけの店『囁きと嘆き』に入る。「いらっしゃいませ」いつもとかわらぬ店長の優声。この微笑ましい笑顔をみた者の誰が、この悪趣味な店を作り上げたのがこの男だとわかろうか。壁に串刺しにされた頭蓋骨。五芒星の紋章が刺繍されたカーテン。そして明かりを拒絶するかのような窓。俺はいつもの席に座り店内で唯一の窓から外をみる。この店とは異世界とさえ思
最上 さん作 [501]