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ミステリの携帯小説に含まれる記事が2060件見つかりました。
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蝋燭の火
日が暮れかけた頃、佐藤五郎は大阪駅前の喧騒の中にいた。突き刺すような夏の日差しがとうに失せたとはいえ、焼けたアスファルトの匂いがまだ辺りに漂う。男は何をするでもなく、ただ人々の行き交う通りに目をやっている。禁煙したはずの煙草の本数を、特に気にする様子もない。駅のほうでは、電車が次々に疲れを吐き出していく。大阪の街は、なおも日中の活気を継続し、次第に艶やかな夜の雰囲気を帯び始める。そうして街は
けん さん作 [496] -
死神を追う天使
俺はさんざん人を殺してきた。いわば殺し屋だ。そんな俺についてくる女がいる。何故ついてくるのか? それは俺がこの女の両親をある人物に頼まれて殺した。最初は復讐の為についてくるのかと思った。 しかし、どうやら違うようだ。彼女は両親を恨んでいた。事情はこうだ。母親は毎日、色んな男と遊び歩き、父親は家で飲んだくれて毎日仕事もせずに賭事ばかりしてた。彼女が何か言うと拳しか返ってこなかった。何度も自殺を
深川四郎 さん作 [720] -
はじまり?
どんなに思っても、言葉が出てこない。声が、出ない。意識が遠退いていった。全てが暗くなりピンクの壁は見えなくなった。暗闇の中に引きずり込まれて行った。助けて、助けて、声が、声が出ない、苦しい! 次の瞬間、目の前が一気に明るくなった。何?何?ここはどこ?! 声が…出た!
葉桜 さん作 [716] -
はじまり?
ここはどこだろう?飛んでいる?真っ白くて大きな柔らかい何かに包まれて、ゆっくりとどこかを漂っている。辺りには同じように何かに包まれて漂う丸い無数の影があった。 するとその直後、その無数の丸い影が何かにぶつかって割れ出した。同時に影は一瞬にして消え去った。その光景を見ていると、何かにぶつかったような衝撃を感じた。痛くはない。むしろ温かくて柔らくとても心地のいいものだ。白くて大きな何かから飛び出ると
葉桜 さん作 [611] -
かくれんぼ?
「きれいだな…何で…」 僕は夜空を見ていた。 板の隙間から差し込む細い月明かりを頼りに夜空を真っ直ぐ見上げていた。 「なんで…誰も見つけてくれないんだろう…」 僕は動かなかった。 「なんで…」 僕は寒かった。 「なんで…」
葉桜 さん作 [547] -
かくれんぼ?
絶好の隠れ場所を思い出したのだ。納屋の後ろにある井戸だ。もう長い間使われず、板を何枚か並べてしっかり杭で打ち込まれた蓋がしてある。その井戸の横に、ぴったりと桶置きの木造の台が取り付けられていた。その中が僕が隠れるのにちょうどいい位の大きさをしていた事を思い出したのだ。小さい時にお婆ちゃんに見せてもらって、何故か僕はそこがとても気に入ったんだ。「気をつけてね」と言う母の言葉にも耳を貸さず、よくその
葉桜 さん作 [519] -
かくれんぼ?
「きれいだなぁ…」 日没が早くなった夏の終わり。空には無数の星が散りばめられている。夏休み最後の思い出に、僕は友達を連れてお婆ちゃんの家に遊びに来た。山に囲まれたお婆ちゃんの家は、僕らにとってまさに絶好の遊び場だった。都会では見られない虫や、野性の鹿やキツネが現れたり、木登りや川遊びなど滅多に出来ない遊びを僕らは思いきり楽しんだ。 その日は、かくれんぼをする事になった。ル
葉桜 さん作 [556] -
ゆりかご荘の住人
ゆりかご壮の管理人室は、毎晩相談室と化していた。管理人の水野さんはいい人だった。いや、お人好しすぎた。 昨日は203号室の田中さんから一晩中、身の上話を聞かされた。水野さんは悩んでいた。 今夜は101号室の楓さんが相談をしに管理人を訪れていた。 「そんなわけで、その後の記憶がまた不安定なんです。苦しいとか悲しいとかは特にないんです。でも、そこから抜け出そうと必死
葉桜 さん作 [544] -
幸福の時
バイトが終わり急いでメールを打つ修二。予定より10分も過ぎてしまった。息を切らせて待ち合わせ場所に向かう。いつものベンチの前で互いに手を上げ歩み寄る二人。ごめんと軽く頭を下げる修二。二人は毎月最後の水曜に、映画鑑賞をすると約束をしていた。いつもの時間に、いつもの場所で会い、いつもの店に入り映画上映会の前の一時をゆっくりと過ごす。 本日は恋愛映画を二人寄り添いながら観る。暗闇の中で時に
葉桜 さん作 [712] -
何も知らない
仕事だろか?深夜男はクタクタになりながら家に帰って来た。男は「ただいま」と一言。だが返事はない。当然だ。男は独身なのだ。返事の代わりにプルルルル…と受話器が鳴る。(斉藤さん!!斉藤刑事〜!!実はさきほど事件がありまして…応援お願い出来ないでしょうか?)仕事の電話だ。どうやらこの俺は刑事のようだ。「何だ?」(殺人事件ですよ。ご存知ないですか?ニュースはもう流れてると思うんですが) 斎藤は急いでテレ
友樹 さん作 [616]