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ミステリの携帯小説に含まれる記事が2060件見つかりました。

 
  • 餓鬼 9

    谷岡病院の調理場。由梨絵の職場である。慌ただしい配膳を終わらせ休憩していた由梨絵に同僚が話し掛けた。「松木さん、お孫さんはまだなの?」由梨絵はちょっと困った様な顔をして答えた。「喜美がまだまだ子供だから、今、子供が出来たら私が大変だわ!」そう言うと、ポケットから携帯を取り出した。「あら!娘さんの写真?可愛いわね!」横から覗いて同僚が言った。「私に似てないでしょう?主人の方に似てるのよ。」ニコニコし
    紗依枯(さいこ)さん作 [865]
  • 迷子の部屋

    僕の部屋には扉が無い。あるのは、真っ白な部屋に真っ白な机とベッドと小さな窓がひとつ。産まれてから10年、一度も外に出たことがない。学校にも行けないから、字なんて読めない。でも、知ってる言葉が1つだけある。『ココカラダシテ』どういう意味をしているかは知らないが、僕が唯一発せられる言葉。だから、いつか窓の外にいる人が僕という存在に気づいてくれるよう。僕は今日も『ココカラダシテ』と窓に向かって言う。「コ
    大家ヒロトさん作 [791]
  • 因果…らりるれろ

    【ライン】目を開けると、暗闇の中をラインだけが見えた。そのラインに沿って歩いた。私は生きているのだろうか?それとも、死んだのだろうか?最後の記憶が定かではない。只、背中を押された気がする。押したのは、男なのか女なのか、それともそんな気がするだけなのか…。思い出そうとしているのに、足は立ち止まる事なくラインに沿って歩いている。このラインは一体、何処まで続いているんだろう?明かりも音も無く、記憶はどん
    紗依枯(さいこ)さん作 [794]
  • 餓鬼 8

    喜美はカレンダーを見ていた。由梨絵と出会ってまだ10日程しか経っていない。喜美は自分を人見知りの激しい方だと思っていた。事実、此所に越して来てもう何ヵ月も経つのに、近所とは未だに挨拶位の付き合いである。親しくなろうと努力はしたが、会話の中に入っていけなかった。しかし、由梨絵とはアッと云う間に親しくなった。「こんな事も有るんだわ。」由梨絵は優しくて、落ち着いてて、控え目で、何よりも母の様な暖かさを感
    紗依枯(さいこ)さん作 [842]
  • 餓鬼 7

    「本当に遅くなってしまった…」私の腕時計は23:00になっていた。タクシーに乗り込み、喜美の事を考えた。もう寝ているだろうか。家に着くと、まだ居間の明かりが点いていた。「ただいま〜!」玄関を開けると笑い声が聞こえて来た。「尚輝さん、お帰りなさい!由梨絵さんとお食事終わってワイン頂いてたの。」喜美が少し頬を赤くして出迎えた。私のコートと鞄を両手に持って居間へと戻って行った。「いらっしゃい。いつも喜美
    紗依枯(さいこ)さん作 [783]
  • 餓鬼 6

    喜美の疑問を察知した様に「主人、笑ってないでしょう?これは余命を宣告された後の写真なの。それまで、仕事一筋で生きてきたから、旅行なんてあまりした事なかった。だから、生きてる間に二人の想い出を作ろうって…私が笑顔になれば成る程、あの人は私が不憫で仕方ないって、寂しい思いをさせてすまないって…。」由梨絵はアルバムを引き寄せて閉じた。そうだったんだ…喜美は楽しくなさそう、なんて思った自分を恥じた。お互い
    紗依枯(さいこ)さん作 [800]
  • 餓鬼 5

    時計が4時を過ぎた頃、由梨絵は帰り支度を始めた。玄関の外まで見送ると、由梨絵は振り向いて、「良かったら明日、私のアパートに来ない?喜美さんの家みたいに綺麗じゃないけど。」由梨絵は遠慮がちに言った。「行かせて頂きます!」喜美は本当に嬉しそうな顔をした。「午前中は出掛けるから、2時位でどうかしら?葉月荘はわかる?」そう言うと、由梨絵はバックからメモとペンを取り出して、簡単な地図と部屋番号を書いて喜美に
    紗依枯(さいこ)さん作 [703]
  • 餓鬼 4

    由梨絵を居間に通すと喜美は急いで着替えた。「慌てないで、ゆっくりで良いから。」由梨絵は焦っている喜美に向かって声をかけた。「ごめんなさい!主人を送り出して、二度寝しちゃったの。少しだけと思ってたのに…。」喜美は珈琲を運びながら謝った。「ご主人、今日はかなり早いのね。」珈琲を口にしながら由梨絵は言った。「今日から九州へ出張なの。帰って来るのは、日曜日の夜遅くになりそうだって。」「じゃあ、日曜日のお食
    紗依枯(さいこ)さん作 [734]
  • 餓鬼 3

    久しぶりに楽しそうな喜美を見て、私は由梨絵に感謝した。「今度の日曜日か…あっ!…喜美、俺は明後日の金曜から出張で帰って来るのは、日曜日遅くなるんだ…すまない。」喜美はちょっと落胆した様だったが、直ぐに笑顔になって「いいわよ。私は由梨絵さんとお食事するから。女同士で盛り上がっとくわ。」たった2日程で、ここまで仲良くなれるものか?と、由梨絵に軽く嫉妬もしたが、喜美の嬉しそうな顔を見ると何も言えなかった
    紗依枯(さいこ)さん作 [733]
  • 餓鬼 2

    会社から帰ると待ってましたとばかりに喜美が話し始めた。「ねぇ、あの方ね、あ…由梨絵さんって依うんだけど、とっても可哀想なの。ご主人を去年亡くされて、その家に住んでるのが辛くて最近こちらに引っ越して来たんだって。子供さんにも恵まれたんだけど、死産だったそうよ。女の子だったんだって。生きてたら私位らしいわ。だから私を見た時に娘の様な気がしたそうよ。私も早くに母を亡くしたでしょ。私も由梨絵さんが母みたい
    紗依枯(さいこ)さん作 [672]
 
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