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ノンジャンルの携帯小説に含まれる記事が5567件見つかりました。
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A型の男
「会社、首になりました。今月末で終わりです。」 お風呂から、上がった夫が、突然、言った。 とりあえず、リビングに向かいあって座り、話を聞いた。 真正面から、こうして座り、話し合うのは、何年ぶりだろう。「会社の中部地区本部や近隣店舗に匿名の手紙が何通も届いた。内容は私と部下の女性の不倫問題です。」 「明日から、さっそく、就職活動して下さい。三人の子供の教育費が、これから、かかるときなの
山下裕子 さん作 [345] -
夜明け前
月がもう、大分傾いていた。朝が近い。ガルガは眠るのを諦めて身を起こし、水差しを手に取って、青白いグラスに水を注いだ。独りの夜は、長い。静寂は、睡眠を助けるどころか、余計な事ばかり考えさせた。過去も、未来も、今の彼にとっては暗闇の中なのに、何を考える必要があるだろう。思考の迷路をさ迷っても、光明など見つからず、却って闇が増すばかりだというのに。家を出た時、計画も何も無かった。しかしこれ以上、あの森
ケィ。 さん作 [404] -
十字路とブルースと僕と俺 3
8月13日朝、目覚めたとき、昨日聞こえていた音はすっかり聞こえなくなっていた。歯を磨き、顔を洗い、朝食を食っているそのあいだ中、全神経は両の耳に注がれていた。前の晩、家に帰ってきてから母や姉たちにも音が聞こえるか訊いてみたが、そんな音は聞こえないと言われた。おれはガキながらに、昨夜の奇妙な音や声らしきモノは、幻聴もしくは空耳なんだと自分なりの答えを出し、忘れようとしていた。太陽が高く昇っても音は
ティシュー さん作 [295] -
「希望という名の道標」
こんなにも溢れる想いはどこから出てくるんだろう。 欲望にも似た不確実で形のないものだけど、確かにここに存在している。 二度と失いたくない。目の前に広がっている一筋の光の先には、どんな世界が待っているのかなんて分からないけど。あの時抱いた想いを、希望という名の宝物にして埋めることなく、閉ざすことなく、死ぬまで、この身が朽ち果てるまでずっと握りしめていよう。強く希めば望むほど見
☆アツキ☆ さん作 [247] -
僕へ送る手紙 4
翌日の日曜にミカと、生まれて初めてのデートをした。20歳の年上だと聞いた時は、同い年ぐらいだと思っていたユウスケはびっくりした。ミカは集会に来たのは友達の、半ば強引な誘いだったらしい。ユウスケはなぜだかわからないが、ホッとした。手も繋げず、あまり弾んだ会話はなかったが、お互いに惹かれていくのがわかる。夜10時に、送った先のミカの実家はユウスケの知らない、幸せを絵に書いたような立派な家だった。帰り
もうぎゅう さん作 [195] -
腐りかけ?
さすがに一晩中口にした甘ったるい紅茶に胃が焼け付くようだ。後輩が云うほどの夜帶のきつさはなく、むしろ…ここのところの公私ともの燃え尽き無気力感を一時は忘れさせ、没頭できる何かがまだあった事に驚いた。脱走犯の竹田くんは始終ニヤニヤヘラヘラと機嫌よいから兎も角呼び止められても事務的こみゅでスルーしたけど、田中の婆さんには泣かされた。婆さんは前回の入院ではリハビリを毎日欠かさず頑張り、驚異的な回復力で
Seoul さん作 [240] -
夜に咲く華〜その13〜
遠くに「紅華楼」の明かりが見える。「綺麗よね。あの明かりは消してはいけない」紅は小走りになって紅華楼に戻った。妙は紅の姿を見て涙ぐんだ。紅からいきさつを聞きまた涙を流した。「よかったぁ。本当によかったぁ」その日の夜、最後の客を送り出し紅と妙、あやめはささやかに宴会を開いた。次の日、約束通り連二郎がやってきた。「今日から世話になる。昨日は失礼したな」部屋をどうしようか考えて離れを思い浮かべた。四年
岬 登夜 さん作 [310] -
夜に咲く華〜その12〜
あまりに率直に用件を切り出したので山柴組の親分は笑った。「嬢ちゃん。あんた駆け引きとか根回しとか使わんのか。わしは外道と呼ばれる者、騙す、裏切るが商売だ。油断してると皆もらっていくぞ」「だからですよ。私みたいな小娘一人騙すのは簡単でしょう。だったら駆け引きしたり根回しする必要無いんですよ。ただし、小娘を騙してあの店取り上げちゃ吉原中の噂になって恥をかくのは親分さんですよ。ですからここは騙しっこ無
岬 登夜 さん作 [305] -
小さな物語
ひらひらと、降り始めた雪を見上げながら。 その先の灰色の雲を睨みながら。 バグは白い息を吐いた。 寒さのせいで、彼の耳が真っ赤に染まっても、手袋の下で指先が凍えるように冷たくても、彼はそうしていた。 頭の奥までキィン、と痺れてきた時、後ろから声がした。「バグ、いつまでそうしているつもり?」 アンナだった。 バグにとって母親のような人。「もう中に入りなさい」 バグは答えない。頑に口を結
ケィ。 さん作 [502] -
十字路とブルースと僕と俺 2
林の中は真っ暗だった。ふたりが持ってきた懐中電灯がなければ、右も左もわかったものではないだろう。だが、その暗闇が逆にお互いの視線や表情を隠してくれたお陰で、おれと父は、いつも以上に会話を弾ませていた。その前にやっていた花火の興奮を引きずっていたせいもあっただろう。ふたりは近くにいながらも大きな声でお互いに声をかけ合い、どちらかが虫を見つければ、そこへ駆けつけ、ふたりで必死になって虫と格闘した。結
ティシュー さん作 [271]