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Jumpin' Five 25

[313]  曽根菜由美  2006-12-01投稿
そんな大混乱は、進一さんが前に立ったことで中断された。ハーモニーディレクターの音で、全員がチューニングをし、合奏開始となった。
 なぜ私は、目の前にいる指揮者に心を動かされてしまったのか。望月進一という本名のため、「進一さん」と名前で呼んでいたせいで親しみを感じてしまったのか。それとも私好みの〈色白〉〈華奢〉という容姿からくるものか。いや、ちがう、私はそんな容姿だけで惑わされる女ではない。そう、進一さんにはある種の温かさが感じられるのだ。前からいいな、とは思っていたが、あのとき東部公民館で昼食をともにしたとき、そばの残りつゆを進一さんがこぼして、進一さんの服についてしまったのを、私が見つけて、被害を最小限にくいとめたのだ。そのときに進一さんが、
「よく気がついたね。」
って言ってくれて、もうこの人は私のもんだ、と勝手に思ってしまったのだ。照れも隠れもせず、私の言ったことに素直に感謝の気持ちを持ってくれた。そのことに進一さんの温かさを感じたのだ。
 はぁ、悪い癖だね。女の方から惚れこんじゃうなんて。
 合奏は、こないだの本番の曲を適当にさらって終わりになった。8時半までしかここは使えないので、あっという間に終わってしまう。
 そのせいか、団員相互に語ることが少なく、その後楽器店の前でたむろっている光景が見られる。私は…というと、進一さんにこないだの薬のお礼を言った。
「あ。大丈夫でした?」
「はい。あのときは結局飲まなくて、次の日まで痛みが残っちゃって、昨日飲んだんですけど…。」
「効きました?」
「あんまり…。」
正直に答えるバカな女だね、私って。
「でも、少しは効いたんです。」
「そうだよね…。じゃあ良かった。痛みがきつかったってことかな?お大事にしてね。体が弱いみたいだから。」
「…あ、ありがとうございます。」
うーん、進一さんにまでズバリ言われた。そんなに人に言われるほど弱くないつもりだけどなぁ。(説得力ない)

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