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タイトルのない小説

[370]  はやと  2006-12-03投稿
ビュー!!

強い風が吹いている…寝ぐせもそのままの髪がなびいてとても気持ちが良い。俺の今いる下の方にはたくさんの人だかりができていて、皆が皆一心にはるか頭上を見上げてざわざわと騒いでいる。もちろんその観衆の注目は全部俺に注がれている。
大学の校舎の屋上で、ほんのちょっと前に俺はある大きな決断をしたところだった。

ここから飛び降りてやろう…

そんな死の決意を胸に屋上のフェンスを乗り越え今だ今だと自分でタイミングを見計らったのだが、足がすくみなかなか飛び降りるコトができずにいる内にいつの間にかたくさんの人だかりが出来てしまっていたのだ。



今まで俺が生きて来た人生にはいったい何の価値があったのだろうか…そんなことをふと最近感じるようになった。中学ん時から常にクラスでも成績トップだった俺は高校でもその地位を守り続け、地元の超難関と言われていた医大に見事現役合格という第三者の目から見ればかなり華々しい人生を送って来た訳だが、ゆくゆく振り返って見ると俺は親から指示された通りの道筋をただただ突っ走って来ただけだった様な気がする。そこに自分の理想とか願望とかはなく、もちろん自分の人生の価値なんか見出だせる訳がなかった。親友と呼べる友達も心許せる恋人もいない孤独な人生だった。

俺って生きている意味あんのかな…

そんなことを考えていたら、ムショーに死んでやろうという気持ちが湧き上がってきて…そして気がついたらこうして屋上のフェンスを乗り越えていた。

下の方ではまだみんながざわついていた。中には「バカなことはやめるんだ!!」なんて叫んでるやつもいたが、今の俺の耳にはどんな声も届かない。
だいぶ高さの恐さにもなれ、気持ちが落ち着いた俺はついに決行することにした。さっきまでざわついていたやじ馬たちもそんな俺の変化に気付いたのか急に静まり返って何も見逃すまいと俺の方を一点凝視した。

そして遂に…

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