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暗闇の女

[812]  あぶら翔  2006-12-03投稿
その日は夕焼けがとても赤い日だったんだ。僕は学校の居残りですっかり帰りが遅くなってしまった。もう六時半にもなろうとしているのに太陽はまだ沈みかけで空を真紅に染めている。それはまるで血をぶちまけた様だった。 (やばいなぁ、このままだったらベストヒットに間に合わないなぁ今日たしか井上あかねちゃんが出る日なんだよなぁ、こんな事なら録画予約しとけば よかったぁ) 今になって授業をサボりまくっていた事を後悔していた。 滅多にTV出演などしない『あかねちゃん』は髪は黒いロングヘアーで、僕が初めて好きになったアイドルなんだアイドルって言っても自分で作詞作曲を手掛けているし、れっきとしたアーティストだと思う。 僕は出来るだけ急いだこのまま自転車ダッシュで帰る事ができればギリギリ間に合うと思ったからだ。今思えばそれが『あの女』との出会いだったんだ。 (七時十六分、よっしゃあ!何とか間に合いそうだっ)僕は全速力で自転車を漕ぎながら時計を気にしていた。もうすっかり日は暮れていたのに空だけは赤く染まったままだった。 僕の家は住宅街と言うよりは少し奥ばった所に立っているので、街灯の明かりと自転車の明かりでも足りない位辺りの様子が分かりにくい。僕は相変わらず暗い家までの道を全速力で漕いでいた。 (ハァ、ハァ、これで間に合うぞ)家に着いた僕は自転車を車庫の脇の方へと雑に置いて玄関へ急いだんだ。 (あれ?家の外灯が付いてないや、母さん出掛けるって言ってたっけ?) 真っ暗な中、僕は玄関の戸を開けようとしたヒック、ヒック…「わぁっ!」僕は思わず大きな声を出してしまった。暗い玄関の横の方にボンヤリだけど人がいるのが分かった。

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