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ひなたぼっこ

[491]  サチ  2006-12-06投稿
ばぁちゃんは何でも知っている。内緒でチョコレートを食べちゃった。食べる前に辺りを見回し誰にも見られてないか確かめ、音をたてずに急いで口に入れたのに、ばぁちゃんが「チョコレートおいしかった?」と聞く。なんで分かっちゃったんだろう…ばぁちゃんと散歩に行くと、たんぼや道ばたに咲く花を手に取り「おいしいよ。」と蜜を吸って見せてくれる。歯が痛くて泣いた時「痛い痛いの飛んでけ〜」と言いながら、親指の付け根を優しく揉みほぐしてくれる。ばぁちゃんは魔法使いだ…二人で定期的に、お墓参りに出かける。ばぁちゃんは、いつも「じいちゃんが喜んでるよ。」と言う。何で聞こえるの?と聞くと「ほ〜ら見てごらん。線香の煙りが、こんなに上がって、ありがとうって言ってるんだよ。」とニッコリ笑う。帰りは決まって、お昼ご飯を食べに行く。ばぁちゃんは贅沢をしない、無駄使いをしない!でも、この日だけは、二人で、うどんを食べたり、コロッケを買って河原で食べたり二人だけの秘密の贅沢をする。サチは、いつも、ばぁちゃんと一緒。寝るのも、お風呂に入るのも散歩へ行くのも。しわしわのばぁちゃんの手が大好き。ばぁちゃんが旅行へ行く時、駅まで見送り泣きながら手を振る。ほんの二、三日の別れでも、この世の終わりかのように、心を引き裂かれたものだ。寝ても覚めても「ばぁちゃ〜ん。」なのだ。時々ばぁちゃんは背中を丸め座ったまま空を見上げる。「ばぁちゃん、どうしたの?」と聞くと「今日は雨が降るね…」と言う。頭が重く肩がこると雨が降ると言うのだ。そして数時間経つと雨は降り始める。あの日も同じだった。ばぁちゃんが突然倒れた。サチが駆け寄り「ばぁちゃ〜ん」と呼ぶ。ばぁちゃんは、しわしわの手でサチの手を包み込み「大丈夫。大丈夫だよ…」と言いながら長い眠りに着いた。ばぁちゃんの手は、いつまでも優しくて温かかった。ばぁちゃんが煙りになって空に上がった日、大切に育てていた大好きな、サボテンの花が開いた。大きくて綺麗な花を見ていると哀しくなった。お父さんが「ばぁちゃんに見せたかったね。」と写真を撮り仏壇に供えた。でもね、ばぁちゃんは見てるよね。ばぁちゃんが微笑んだような気がしたから…ばぁちゃん、ありがとう。たくさんの愛をありがとう。

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